婚約破棄された王女が全力で喜びましたが、何か問題でも?

yukiya

文字の大きさ
23 / 29

23,【やれば】仕事が【出来る】男

しおりを挟む


 オルゼアは自由奔放に生きる代わりと言ってはなんだが、その時になれば王子としての役割を担う男だ。
 おかげで逆賊は簡単に捕らえられ、その黒幕を割り出すにも時間はあまりかからなかった。どうも侯爵がここまで侵入させた根源だと分かった時、モランの怒りはマックスに達していた。売国奴め、と罵ったその目は血走っていたくらいだ。
 ともかくそんな状態で指揮を任せられるわけもなく、モランともう一人、怒りに落ちているフェロンにはエリシア達を追いかけてもらった訳なのだが。

「…もう一度言え」
「そ、それが」
 オルゼアも大概キレていた。王の住居に逆賊を許したどころか、大切な妹の一人は危篤になる程の傷を負い、もう一人は逆賊を殺してしまったという後悔と姉の傷を分のせいだと責める内に疲れて意識を失ったまま起きないという。
(最悪だ、本当に…)
 折角の結婚式、人生一番幸せとなる日だったはずなのに。どうしてエルステーネにはいつも苦労する道を歩かせてしまうのか、兄として申し訳ない限りである。

 最初に向かったのはエリシアの部屋だ。だが神に愛され生まれてきたようなエリシアのことだ、危篤といっても助かるだろうと踏んでいた。その予感は外れておらず、オルゼアが残党を処理して部屋に向かう頃には普通に起きて、それはそれは元気そうに菓子を食べていた。
 けれどエルステーネに手を汚させてしまったと泣きじゃくるものだから、仕方なく笑わせるために顔に落書きを許したのだが。ついでにエルステーネが目覚めた時に笑ってくれたら良いと、身体を張った結果が臣下達からの無言の失笑だ。最悪以外の何者でもない。

(…死んだように眠りやがって)
 顔も真っ白に、身体はピクリとも動かない。
「…申し訳ございません、王子。本来ならば私の仕事を…」
 申し訳なさそうに俯く宰相にため息をつく。まぁ、何もなければこの二人は結婚していたのだ。少しくらい許してやろうじゃないか。
「いい。エルステーネが目覚めたらさすがに仕事に戻ってもらうがな」
「もちろんです、ありがとうございます」
「とりあえず侯爵の家宅捜査は終わった。妻子諸共捕らえて地下牢にいる」
 もうですか、と驚いた顔をされるが、別に私は馬鹿なわけではない。
「仕事が出来る男ってなんか格好いいよな」
「そう思うならいつもふらふら遊び歩かず仕事してくださいよ…」
「エルステーネを職場に連れ込んでイチャイチャしてたお前に言われたくねぇよ」
「なんで知ってるんですか!」
 ーーあぁ、でも。
(顔の色が戻っているから大丈夫か…)
 つくづく、そんな役割だ。大切な妹を他の男に任せないといけないのだから。
「…俺は余罪を追及して警備の再配置をする。あとで仕事が山積みだぞ、覚悟しておけ」
「承知しました。…感謝申し上げます、王子」
 …うん、まぁ。なかなか悪くないかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...