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24,お姉ちゃん
しおりを挟むエルステーネはエリシアの部屋の前へ来たものの、面会を求めようかどうかずっと迷っていた。もし顔を見たくないと言われてしまえばそれまでだ。
(やっぱり出直して…って出直してこれで四度目よね。そろそろ行かないといけないのは分かっているんだけど、けど…)
医師に聞いたが、傷は深く、永遠に残るだろうと言われた。モランが遠国の傷痕によく効く薬を取り寄せると言ってくれたが、そこまで深い傷が薬一つで綺麗に消えるわけなどないことくらいエルステーネにも分かっていた。モランの気休めは本当に気休め程度にしかならなかった訳だが。
「姫様?」
エリシアの顔からひょっこり顔を出したのはフェロンだった。
「え、フェロン?貴方も中にいたの?」
「こんなところで何やってるんですか。あ、もしかしてエリシアと二人で話したいことでも?」
エリシア。今さらっとエリシアって名前で呼んだわね。さては何か進展でもあったのかしら。
「俺がいない方がいいなら、」
「いえ!いて!いてちょうだい!」
「え?あ、わかりました」
姫様が来ないからよっぽど体調悪いのか心配してましたよ、とフェロンが言う。怪我で伏せっている姉に心配までかけていたのかと、情けなさがこみ上げる。
部屋に入ると、数日聞いていなかった、誰もを魅了する綺麗な声が響く。
「フェロン?どうしたの、誰か来ていた?」
「エリシア、姫様が」
「エルステーネ?」
その名を聞くなり、ベッドから降りようとしたエリシアがそのまま布団の上に倒れる。
「お姉様!無理はいけません!」
「エルステーネ!よかった、会いに行こうにも身体があまり動かなくて…」
ネグリジェの隙間からは包帯が見える。赤いシミは、血が滲んでいたのだろう。
「お姉様…」
ごめんなさい。私のせいで傷を負わせてしまって。そう言おうと口を開いたその時だった。
「ありがとう」
「…え?」
「貴女が怪我をしていないって聞いて、本当に良かったと思ったの。ありがとう」
「な、どうして、そんな」
だってそれは貴女が庇ってくれたから。そう呟くと、エリシアは満足そうに頷いた。
「守らせてくれてありがとう。貴女を守れて、ようやく一つ姉らしいことが出来たわ」
嬉しそうに、美しいその顔で、声で、そんなことを言う。気が付けばエルステーネは大粒の涙が頬を伝っていた。
「私のせいだと、責めないのですか」
「どうしてそんなことを言うの。…貴女には苦労を沢山かけたもの。折角の結婚式、台無しになってしまったし」
それにフェロンがずっと付いていてくれたから、もうそれだけで満足だと、エリシアが幸せそうに笑った。
「あの国へ、私が行くべきだったの。それなのに貴女にお願いして、妹に頼って、苦労をかけて、本当に最低だと思っていた。こんな私のどこが姉だと思っていた。けれど、貴女が守らせてくれて、守られてくれたから、」
やっと貴女のちゃんとしたお姉ちゃんになれた気がしたのよ。だから、ありがとう。
その言葉はエルステーネを救った。ようやく、ただただ感謝していいのだと、許された瞬間なのだった。
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