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最終章 契約終了ってことで

第56話

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♪キーンコーンカーンコーン

(なんだ……このふざけた音……)

薄く目を開けてベッドサイドを見れば、学校の校舎の形をした目覚ましから音がなっている。

そして、ふざけた音のせいなのか朝から頭痛と悪寒がする。

「うるせぇな……」

俺は目覚まし時計を持ち上げると裏側のスイッチを切った。隣の梅子は毛布にくるまったまますやすやと可愛い寝息を立てている。

「ったく……学校の形とか変な目覚まし……ん?」

そこまで言葉に吐いてから、ふと俺はある考えが頭をよぎった。

(梅子さんの趣味なら……暴れすぎ将軍じゃねぇのかよ?なんで学校?学校って言えば……)

俺はじっと目覚まし時計を睨むと同時に随分前に出会った梅子の元カレの顔が思い浮かんだ。

「ん……世界くん……おはよ」

見れば梅子が目を擦りながら俺を見るとにっこり微笑んでいる。

(やっば……寝起きもいい匂いだし、めちゃくちゃ可愛い)

「あ、世界くん、ごめんね、アラームうるさかったよね。切るの忘れてた」

「いや……大丈夫ですけど。学校の目覚ましって梅子さんの趣味じゃないよね?」

推理の答え合わせのための質問を投げ掛ければ、すぐに梅子が気まずそうな顔をして、俺は俺の推理が正しいことを一瞬で理解する。

(元カレって教師だったよな……ちっ)

俺は梅子の手前、盛大に心の中で舌打ちをした。

「あの……えと、それ……」

「あ、大丈夫っす。これあとで叩き割って捨てときますんで」

「えっ!」

「えっ!、じゃあねぇよ。目覚まし位いくらでも買ってあげるんで!とりあえず梅子さんと俺用で二個買っときますね」

「ちょっとなんで二個……一個でいいわよっ」

「それぞれあっても良くない?」

「え?それどうゆう?」

梅子の怪訝な顔に俺はくすっと笑った。

「一緒に住んじゃおうかなって」

「は?……ちょっと……なんでそんな話になるのよっ」

「え?結婚すんだから同棲しちゃえばいいじゃん。いつでもセックスできるし」

「ばかっ!朝からとんでもない事言わないで」

(とんでもないこと?)

俺は梅子を前から抱きしめ直した。そして昨日を思い出しながら、ゆるゆると胸元に触れていく。

「ば……か。離れて……ちょ……触らないで」

「いいじゃん。もっかいしたい」

「だ、ダメ……た、誕生日だし」

「は?意味わかんねぇこと言うんすね。誕生日ならますますセックス日和だろうが……痛って!」

梅子が俺の頭をはたくと、大きな瞳をこれでもかと細めた。

「もうっ……朝から卑猥なのよっ!バカわんこ!」

「は?おい、誰がワンコだよ」

「だって……世界くん、すぐ噛みついてくるじゃないっ」

(何回言えばわかんだよっ、それは梅子さんだから)

「あのさー、俺だって見境なく噛みませんよ。ま、いいや。ゴムあと一個しか持ってないし夜に置いとこっと」

「なっ……」

そして俺が目覚まし時計を持って起き上がると、すぐに梅子が顔を逸らした。

「……な、何で何も着てないのよ」

「は?どこ見てんの?パンツ履いてんでしょ?大体スーツびしょ濡れだし、梅子さんあったかかったし……てことで、これポイするね」

俺は手にもっていた目覚まし時計をとりあえず燃えないゴミに突っ込んだ。

「え、もう捨てたの?!」

俺はきゅっと目を細めた。

「ねぇ」

「えっ……何……きゃっ」

俺はベッドに戻るとすぐに梅子を組み伏せた。梅子の大きな瞳が俺を映すと困ったような顔をしながら頬を染めている。

「気づいてると思いますけど、俺、めちゃくちゃつまんないことでヤキモチ妬くんで言動に気をつけてくださいね。ついでに今後一生俺しか見んなよ。よそ見したら食い殺す」

「なっ……殺……ばか!恐ろしいこと言わないでっ」

「返事」

「なによ、ついでにその上から目線っ……」

「俺、ベッドの上では梅子さんの上司なんで。わかんないなら分かるまで、抱きつぶしましょうか?」

案の定ぶんぶんと顔を横に振る梅子に俺は口角を上げた。

「嫌がられると、逆にそそられる」

「や……ちょっと……」

俺は梅子首筋に顔を埋めながらキスを繰り返す。

「俺……梅子さんの声も匂いも好き……」

めちゃくちゃ身体が熱い。脳まで沸騰しそうな勢いだ。やけに興奮しているのか、梅子を見下ろしながら眩暈までしてくる。

その時、急に梅子がはっとした表情を浮かべた。

「世界くん、待てっ!」

「は?待て?なんだよっ」

梅子が眉間に皺を寄せながら慌てて起き上がると俺の額に手を当てた。

「やっぱり!」

「へ……何?……へっくしゅんっ……」

梅子が俺に毛布を巻き付けると今度は俺に跨りながらベッドに押しつけてくる。

「やけに……積極的すね」

「ばかっ、違うわよっ!熱あるじゃないっ」

「え?まじすか?」

そういえば、昨日心奈のマンションからタクシーに乗ったが、突然の雷雨で道が渋滞した為、途中で降りて雨の中走ってここまで帰ってきたことをふと思い出す。

「俺滅多に風邪引かないんで、分かんなかったけど、たしかにちょい眩暈?熱い?感じかな。でも大丈夫」

「わっ」

俺は梅子をぎゅっと抱きしめた。

「しよ。したら治る」

俺は昨日梅子が意識を飛ばした後、梅子に風邪をひかせないように着せたブラウスのボタンに手を伸ばしたが、すぐに物凄い勢いで払い落とされる。

「ばか!おすわりしときなさいっ!いい?これは上司命令よ」

「こんな美味しそうなおかず目の前にして、もっかい食べないとかありえねぇんだけど?」

「誰がおかずよ!もう……ほら、私のスウェットとりあえず着て!」

梅子が印籠マークのスウェットをチェストから引き摺り出した。

「は?……やだよ!絶対着ねぇからな!」

「もうっ子供みたいなこと言わないで!はいっ」

「わっ……ちょ」

梅子が無理やり俺の頭にスウェットをかぶせるとズボンまではくよう強要してくる。

「上だけでいいじゃん」

「ここまで来たら一緒でしょ!」

渋々、梅子お気に入りの暴れすぎ将軍のスウェットを着れば当然だが、裾が手も足も短い。

「あ、よく……似合……ふっ」

梅子が口元を覆うと震えながら笑っている。

「笑わないでよ!」

俺は思い切り唇を尖らせながらも久しぶりにみた梅子の笑顔に朝から目を細めた。

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