僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

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黄金世代

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もしかしたら今、物凄いことに直面してるかもしれねぇ。

光彩優交心こうさいゆうこうしん病院で看護師をしている。神崎かんざき雪希子ゆきこだ」

2年前......神崎雪希子.........っあ!  まさか...!

「2年前の神崎雪希子って...黄金世代の生徒会長!?」

「そう呼ばれているみたいだな」

俺の感が当たってしまった、やばいぞこれは......黄金世代と言えば、ストレート卒業率1%の日本最高峰で最難関の医療大学、央光おうこう医療大学の天才達。
天才達は央光の伝統で各学年ごとに4人に絞られ、十二光生じゅうにこうせいの一員として生徒会に入るエリートだ。

央光は三年制の医療大学。生徒会の事を総称して十二光じゅうにこうと呼ぶ人も少なくは無い。

しかも2年前って俺が1年の時の3年の先輩か。
......ってことは療光戦りょうこうせん3連覇の学年!?

──療光戦とは、年に一度開催される十二光を決めるお祭り。医療の基礎から最先端技術までの問題をテストとして出し、学年で上位4人が十二光として選ばれる。上位4人と言っても最低88点以上でなければ十二光にはなれない。
この制度によって空きがあることもしばしば──

「もしかして何ですけどー...3年連続同じメンバーで十二光に入った、最強の4人の内の1人とか......ですか...?」

「ああ、そうだ」

本物だった、マジか......いやマジか!!

「そんなことよりさっさと歩け!  遅刻してるんだぞ」

「はい、すいません!」

急に聞き分けが良くなったな。十二光だと知ればこうなるとは思ってはいたが...これじゃあな......

「そこ右だ」
「はい」

2人は右に曲がり少し歩くと、大勢の人たちをまとめる声がした。

「はい!  静かに。今日実技試験を採点、及び指導してくれる──」


一方神崎さん達は...

「早く入りなさい」
「入るタイミング完全にないっすよ」
「自業自得でしょ」

コソコソとしていた。

「早くしないと皆出てくるぞ」
「タイミングが...」
「お前案外臆病か?」
「なんだよ」
「っふ。臆病なのになんで勝手に人の病室なんか入るんだよ」

神崎さんは鼻で笑いつつ、正論をぶつける。

「しょうがなかったんすよ」
「しょうがない?」


疑問に思った神崎さんは聞き返すが、部屋の方で大きな声がした。

「加藤!  私語は慎め!  自己紹介してくれてるんだ」
「はいすみません」

先生が生徒に注意している。

「もっと入りずらくなってしまった......」
「もう分かった分かった!  じゃあついてきな」
「え?  どういう...?」
「タイミングを作ってあげるって言ってんの」

そう言った瞬間、神崎さんは央光生徒の居るドアを開け颯爽と登場する。

「遅れてすいません、今回実技試験の採点及び、指導をさせていただく神崎雪希子です。よろしくお願いします」

教室を一瞬で静まり返らせ、央光生徒の視界を奪った。あまりにも凄い場慣れ感と注目しろと言わんばかりの風格。


これが...生徒会長......

「神崎くんか...懐かしいな」

「ねえ雪希子さーん!  どこ行ってたのー?」

静まり返った教室をたった一言で明るくしてしまう静華さん。

「いやーちょっとねー」

そう言って後ろを見る。

「平元《ひらもと》じゃないか!  いないから探したぞ」

「はいすいません」

「その事についてちょっと話があるので後で時間をくれますか、理事長?」
「ああ、構わない。それと、もう一度自己紹介をしてくれないかな?  あまりに生徒たちが気圧されていて覚えてないみたいだ」

「了解した」

「私の名前は神崎雪希子、見ての通り看護師だ。今回実技試験の採点及び、実技指導の方をさせていただくこととなりました。よろしくお願いします」

「じゃあ改めて私も。光彩優交心《こうさいゆうこうしん》病院で看護師をしている北条静華《ほうじょうしずか》です!  今回指導と採点の方させていただくことになりました。  よろしくお願いします!」

自己紹介が終わると部屋中に拍手が響く。

拍手が静まったと同時に、ある1人の生徒から理事長にとある質問が投げかけられる。

「理事長先生!  採点とか指導とか言ってますけどただの看護師がそんなのしていいんですか?」

「その点に関しては心配ない」
理事長は即答した。

「なんでですか、ただの看護師ですよ?」
「大丈夫、お前らより実力は上だ」

「だからそれがなんでって言ってるんですよ」
問い詰めるように理事長に向かって言う生徒。

「あぁー......うーん...」
騒ぎになって病院側に迷惑をかけたくないからなのか、神崎さんの正体を言い渋る理事長。

「言っちゃえばいいんじゃないですか?」
そんなことを小声で言う静華さん。

「バカ、騒ぎになるだろ」
「事前に言っとけば良かったな」
「雪希子くんはいいと思うかい?」
「いいと思いますよ、騒ぎになるぐらい。全部理事長の責任なので」

「最悪だ。神崎くんの事をバラしたら、当然静華くんの事もバレるよ?」

「それはしょうがないよね」

割り切りやがった。

「分かった。じゃあしれっと」

「何コソコソ話してるんですかー?  早く答えてください」

よし!  なるべく刺激しないようしれーっと。

「えーっと...早く行かないと見学の時間が少なくなってしまうので──」

生徒は理事長の話を遮《さえぎ》り話す。

「本当に大丈夫なんですか?  これで採点に間違いがあって単位落としたら嫌なんですけど」

「何度も言うが大丈夫だ。何故ならこの2人は三年連続十二光に入った天才だからだ」

よし!  これはしれっと──

『ええぇー!!』


やっぱこうなったか。
こうなるか。
こうなっちゃうよね。

3人は同じ事を思っていた。
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