僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

文字の大きさ
31 / 69

2人の時間から4人の時間

しおりを挟む
「入院生活はもう慣れた?」
「あっはいかなり慣れました」

「それはよかった。最近はるなちゃんと神崎さんと一緒に居ることが多かったから2人で話すのは久しぶりね」
「るなちゃんと仲良くなってからずっと4人で行動してましたしね」

 僕の部屋の隣にるなちゃんの部屋があるので静かに車椅子を押してもらい、僕の部屋に入った瞬間静華さんが話しかけてきた。

「かなり珍しいのよ、るなちゃんがあそこまで喋ってるの。私も奏汰くんが入院する前に1回話しかけてみたんだけど全然ダメだった」

「運が良かったんでしょうね、アレルギーの話の時に偶然るなちゃんが廊下にいて、部屋のドアも少し空いているという」
「それでるなちゃんが安心と信頼キャッチしてくれて、最初からあんなに話せたんだね」
「そうですねー」

 奏汰はしみじみとその言葉を発し、改めて運がいいなと思った。

「あっそういえば骨折したところの痛みとかって引いてる?」
「まだ痛いですね、特に肋骨が痛いです。右足はガッツリ固定されているのでまだマシですよ」

 たしか肋骨が完治するのに2~3ヶ月ぐらいはかかるって言ってたし、気長に待つしかないよね。
 右足は倍ぐらいかかっちゃうらしいけど。

「肋骨はいくらバストバンド付けてるからといって完全に痛みが無くなることはないからねー」
「そうですねー」

「じゃあ肋骨と右足の骨折合わせて6~7ヶ月ぐらいで完治なのね。これは相当リハビリ頑張らないといけないわね」
「まぁ頑張るしかないですね」

「それだけ? 奏汰くんは車に轢《ひ》かれたわけだけど、相手方に怒りとか憎しみとか無いの?」
「特には無いですね、でも未だに僕を轢いた人の顔は見てないですね」

「それは奏汰くんのお母さんが対応してたからだと思うわ」
「あっ、そうなんですね。初めて知りました」
「かなり怒って轢いた人たちにどこの病院かすら教えなかったらしいわ」

「お母さんらしい」

 ......あら、人前ではお母さんって呼んでるのね、恥ずかしがっちゃってー! 可愛いんだから!

「ちなみに慰謝料はガッツリ貰ってたらしいわ。軽く1000万超ぐらい」

「え? ......貰いすぎじゃない?」

「いやいやいや、妥当だから。いつ治るか分からない記憶喪失に、肋骨3本と右足骨折。さらに入通院にかかるお金で1000万超」

「それでも貰いすぎじゃ──」
「いや、記憶に関しては友達とか学校とかの思い出を無くしてるわけだからそれぐらいの額は避けられないよ」

 静華さんがそう言うなら......そうなのかな?


「よし、暗い話はもうやめて楽しい話をしよう!」
「そうですね、起こってしまったことは仕方ない。でも楽しい話って何話せばいいんでしょう」

「じゃあハロウィンの話をしよう!」
「ハロウィン? 入院中にハロウィンと言ったら病食にカボチャが出るとかですか?」

 僕がそう言ったら静華さんは自慢げに話し出した。

「ここ、光彩優交心《こうさいゆうこうしん》病院、略して光心《こうしん》病院の院長はイベント事が大好きだから甘くみてもらっちゃー困るよ!」

「ハロウィンと言えばやっぱり仮装ですか?」
「そうだね! 仮装する人は仮装して、食堂にみんなで集まって料理を食べたり作ったりかな!」
「作るんですか?」
「うん! 奏汰くんでも作れる簡単なやつをね」

 入院しててもハロウィンパーティーみたいなのってあるんだ......いや、多分院長さんが企画して楽しませようとしてくれてるんだ、どんな人なんだろう。

「どう? 楽しそうでしょ」
「はいとっても!」

 ハロウィンパーティーが入院中にもあることを知って奏汰は少し気分が上がっていた。すると突然部屋のドアがノックされた。

「はーい!」
「もう消灯時間過ぎてるぞ」

 部屋の電気が点いていたのを見て、呼びかけてくれたのは神崎さんだった。

「え、もうそんな時間?」
「なんか早いですね」
「灰羽さんは眠くないなら起きててもいいけど、私たちは戻るよ静華さん」

「分かった、じゃあサイドランプだけ点けておくから痛み止めの薬飲んでてね」
「分かりました」

「じゃあまた明日、おやすみー」
「おやすみー」
「おやすみなさい」

 そう言い合い、静華さんと神崎さんはドアを閉め、足音を鳴らしながら戻って行った。


 とりあえず薬飲むか。

 静華さんが毎回手伝ってくれるベッドの昇り降り時に、優しさからか必ずと言っていいほどオーバーテーブルをセットしてくれ、更にお水まで置いてくれているのだ。

「ふぅ」

 眠たくないけど、やることないし。
 でも明日は央光《おうこう》大学へ見学に行くから......よし、寝よう。

 奏汰はすぐさま目を瞑り、ゆっくりと睡魔が来るのを待った。





「おはよーございまーす」

 静華さんはゆっくりとドアを開けて声をかけ、静かにベッドまで歩いた。

 ......起きないわね、まだ時間あるしもうちょっと寝かせてあげようかな。そしたら私も奏汰くんの寝顔をじっくり見られるし!

 そんなことを考えてじっくりと見ていたら、時間は案外早く過ぎていってしまった。

「......あっおはようございます」
「おはよー」

 静華さんは柔らかな表情をして微笑んでくれた。

 そして僕は壁に掛けていた時計を見た。

「7時10分......7時10分!? 約束に思いっきり遅れてるじゃないですか」
「起こしたんだけどね~」
「とりあえず早く行きますよ!」
「りょうかーい!」

 急いでベッドから降り、車椅子に乗って僕たちは食堂に向かった。

 食堂に入って直ぐるなちゃんと神崎さんの姿が見えた。

「遅い......」
「ごめん」

 るなちゃんは少しムスッとした表情で奏汰に話しかけた。

「まあまあ、朝ご飯食べちゃいましょ」
「そうね、行こっか2人とも」
「うん......」
「はい」

 僕たちは神崎さんに連れられ席に着き、朝食を食べながら今日行く央光《おうこう》大学についての話をしていた。

「よし、これで大体分かった?」
「はい、大丈夫です」
「......うん......分かっ......た」

「まあ今日は休日だから人も少ないし大丈夫だと思うよ」
「良かっ......た......」

「第一は離れないこと、第二は迷惑をかけないこと、第三は楽しもう! 出身校だし向こうから誘ってきたんだから多少は許してもらえるよ!」

「よし! じゃあ着替えて正面玄関集合で!」

 そう言った神崎さんはるなちゃんの食べ終わった食器を持ち、るなちゃんを連れて去っていった。神崎さんと同じようにして奏汰と静華さんも食堂を去り、部屋へ着替えに向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...