40 / 69
祈りの花
しおりを挟む
着替えついでの清拭《せいしき》が終わり静華《しずか》さんが後片付けをしていた時、奏汰《かなた》はそれを思い出して静華さんに聞いてみることにした。
「そうですねー......あっそういえば、冷蔵庫に入ってるビニール袋って心当たりあります?」
「あー! あれね......私が入れたの」
「そうなんですか、オレンジ色の何かと......お水も直接入ってたと思うんですけど......何かやらかしました?」
そう僕がふざけて言ったとたん静華さんが深刻そうな顔をして口を開いた。
「......央光《おうこう》から見学に来た時にね、生徒さんから採った危険な実験のための血液をここに置いてるのよ、奏汰くんが見たオレンジ色の何かっていうのは中に血液や汚染物が付着した固形物の事を意味するマークなの、そうすれば病院に置いてても誤魔化せるでしょ?」
「えっ......?」
ちょっ......と......待って──今、いやいやいやいや何? ......えっ、危険な実験......?
「あー! もう無理嘘に決まってるでしょ!」
奏汰が困惑していたら静華さんが急に声を発し混沌と化《か》した場を笑いながら和ませた。
「いや嘘かい! びっくりしましたよもう......」
「ごめんごめん! ちょっと引っ掛けてみたくなっちゃって」
反応を見たくなっちゃったんだよね~!
「演技が上手《じょうず》すぎてまんまと引っかかっちゃいましたよ」
「嘘っていうのは真実と混ぜることで信憑性が増すのだよ奏汰くん」
「そう言われてもどれが本当でどれが嘘かなんで分かんないですよ......もしかして生徒さんから採った血液が本当なんじゃ──」
「そんなわけないでしょー! 本当なのはオレンジ色のマークのことよ。赤色黄色オレンジ色の丸が3個ついたようなマークがビニール袋とかにあったら触らないでね、私たち看護師が回収するから」
「分かりました、見つけたら教えますね。......じゃああのビニール袋の中にあるオレンジ色の何かって? 静華さんが置いたんですよね?」
困惑して静華さんから背けた顔を再度静華に向け、奏汰は不思議そうに質問した。
「それはね、毎年ハロウィンに行う光心《こうしん》病院の風習みたいなものよ」
清拭《せいしき》の後片付けを終えた静華さんはそう答え冷蔵庫に向かった。
「風習ですか」
「そう、見てこれ」
そう言って静華さんは冷蔵庫から取り出したビニール袋の結び目を解いて奏汰に見せる。
「バラ......ですか?」
「そう、オレンジ色のバラ。綺麗でしょ」
静華さんの髪が少し揺れ、奏汰は引き寄せられるように声を発した。
「それに何の意味があるんですか?」
「ベタだけど花言葉ね、オレンジ色のバラには絆、信頼、そして健やかっていう花言葉があるらしいの。多分あと2つぐらい花言葉があったと思うんだけど......なんだっけ」
「僕に聞かれても......」
「まあ主に健やか、健康を祈る風習だから分からなくても問題ないよね! 1年に1回のハロウィンだけだし!」
「......あっ!」
奏汰は何かに気づいて急に声を出した。
「えっどうしたの奏汰くん?」
「もうすぐハロウィンなんですか?」
「そう! 楽しい楽しいハロウィンパーティーの始まりだよ! 手の空いてる看護師さんたちはもう準備してるんじゃないかな」
「ははっ......忙しくなりそうですね」
そう言って奏汰は目を瞑った。
「準備って言っても料理班と飾り付け班で分かれるからそんなには忙しくないよ、私と奏汰くんは飾り付け班だね!」
「......」
「おーい、奏汰くん?」
返事がない、寝ちゃったのかな......ちょっと......ちょっとだけなら頬っぺツンツンしてみても良いかな? 良いよね?
「......やわらか」
起きない......ってことはプニプニって優しくつまんでも起きないよね!? ......よし!
「わぁ......」
静華さんは夢中で奏汰の頬を触った、指で優しくつまんでみたり、人差し指でなぞってみたりとそれはもう目一杯《めいっぱい》堪能していた......奏汰が既に起きているということを知らずに......
「あのー......僕はお餅じゃないですよ?」
「えっ、あっあぁ起きていたのね」
「寝てるからって僕の頬っぺたで遊ばないでくださいよ」
「ごめんごめん、つい触ってみたくなっちゃって」
その言い方絶対悪いと思ってないじゃん、むしろ喜んでそうでなんか怖い。
「まあそれは置いといて、夜ご飯まであと30分もありますね、どうします?」
「どうするも何も奏汰くんは疲れてそうだから休憩、体は疲れてなくてもちゃんと頭や心に蓄積されてるんだから」
「それもそうですね、何か話しますか」
「それじゃあ奏汰くん初参加のハロウィンパーティーについて話すね!」
静華さんは改めて3日後にあるハロウィンパーティーについて話してくれた。料理班と飾り付け班に分かれている事、静華さんと僕は飾り付け班である事、主な会場は食堂であるという事、コスプレは自由でしなくてもいいという事、特に決まったルールは無く楽しめれば何でもいいらしい──
一方その頃同じ話を神崎さんに聞かされていたるなちゃんは不安になっていた。
「るな......が......料理......班......?」
「大丈夫だって、私も手伝うし」
「るな......お手......伝い......ぐらい......しか......やった......こと......ない......るな......がんば......れない......」
そう言ってるなちゃんは俯き暗い顔をした。それを見た神崎さんは少し考え、るなちゃんに明るく声を掛けた。
「じゃあ一緒に作ろ? それで灰羽《はいば》さんに食べてもらおうよ、それなら頑張れるかな?」
「奏汰......うん......がんば......れる......」
「よし! それじゃあ私も張り切っちゃおうかな」
「......準備......する前......に......夜ご飯......」
「そうだね、今の時間はっと」
そう言って神崎さんは壁掛け時計を見た。
「まだ30分ぐらい夜ご飯まで時間あるけど──」
「っ! ......行こ」
小声で言葉を発すとるなちゃんは急に歩き出し、部屋から出ようとドアを開けた。
「えっ、るなちゃんどこ行くの?」
「きゅう......けい......しつ......料理......の......本......読み......たい......!」
「そうですねー......あっそういえば、冷蔵庫に入ってるビニール袋って心当たりあります?」
「あー! あれね......私が入れたの」
「そうなんですか、オレンジ色の何かと......お水も直接入ってたと思うんですけど......何かやらかしました?」
そう僕がふざけて言ったとたん静華さんが深刻そうな顔をして口を開いた。
「......央光《おうこう》から見学に来た時にね、生徒さんから採った危険な実験のための血液をここに置いてるのよ、奏汰くんが見たオレンジ色の何かっていうのは中に血液や汚染物が付着した固形物の事を意味するマークなの、そうすれば病院に置いてても誤魔化せるでしょ?」
「えっ......?」
ちょっ......と......待って──今、いやいやいやいや何? ......えっ、危険な実験......?
「あー! もう無理嘘に決まってるでしょ!」
奏汰が困惑していたら静華さんが急に声を発し混沌と化《か》した場を笑いながら和ませた。
「いや嘘かい! びっくりしましたよもう......」
「ごめんごめん! ちょっと引っ掛けてみたくなっちゃって」
反応を見たくなっちゃったんだよね~!
「演技が上手《じょうず》すぎてまんまと引っかかっちゃいましたよ」
「嘘っていうのは真実と混ぜることで信憑性が増すのだよ奏汰くん」
「そう言われてもどれが本当でどれが嘘かなんで分かんないですよ......もしかして生徒さんから採った血液が本当なんじゃ──」
「そんなわけないでしょー! 本当なのはオレンジ色のマークのことよ。赤色黄色オレンジ色の丸が3個ついたようなマークがビニール袋とかにあったら触らないでね、私たち看護師が回収するから」
「分かりました、見つけたら教えますね。......じゃああのビニール袋の中にあるオレンジ色の何かって? 静華さんが置いたんですよね?」
困惑して静華さんから背けた顔を再度静華に向け、奏汰は不思議そうに質問した。
「それはね、毎年ハロウィンに行う光心《こうしん》病院の風習みたいなものよ」
清拭《せいしき》の後片付けを終えた静華さんはそう答え冷蔵庫に向かった。
「風習ですか」
「そう、見てこれ」
そう言って静華さんは冷蔵庫から取り出したビニール袋の結び目を解いて奏汰に見せる。
「バラ......ですか?」
「そう、オレンジ色のバラ。綺麗でしょ」
静華さんの髪が少し揺れ、奏汰は引き寄せられるように声を発した。
「それに何の意味があるんですか?」
「ベタだけど花言葉ね、オレンジ色のバラには絆、信頼、そして健やかっていう花言葉があるらしいの。多分あと2つぐらい花言葉があったと思うんだけど......なんだっけ」
「僕に聞かれても......」
「まあ主に健やか、健康を祈る風習だから分からなくても問題ないよね! 1年に1回のハロウィンだけだし!」
「......あっ!」
奏汰は何かに気づいて急に声を出した。
「えっどうしたの奏汰くん?」
「もうすぐハロウィンなんですか?」
「そう! 楽しい楽しいハロウィンパーティーの始まりだよ! 手の空いてる看護師さんたちはもう準備してるんじゃないかな」
「ははっ......忙しくなりそうですね」
そう言って奏汰は目を瞑った。
「準備って言っても料理班と飾り付け班で分かれるからそんなには忙しくないよ、私と奏汰くんは飾り付け班だね!」
「......」
「おーい、奏汰くん?」
返事がない、寝ちゃったのかな......ちょっと......ちょっとだけなら頬っぺツンツンしてみても良いかな? 良いよね?
「......やわらか」
起きない......ってことはプニプニって優しくつまんでも起きないよね!? ......よし!
「わぁ......」
静華さんは夢中で奏汰の頬を触った、指で優しくつまんでみたり、人差し指でなぞってみたりとそれはもう目一杯《めいっぱい》堪能していた......奏汰が既に起きているということを知らずに......
「あのー......僕はお餅じゃないですよ?」
「えっ、あっあぁ起きていたのね」
「寝てるからって僕の頬っぺたで遊ばないでくださいよ」
「ごめんごめん、つい触ってみたくなっちゃって」
その言い方絶対悪いと思ってないじゃん、むしろ喜んでそうでなんか怖い。
「まあそれは置いといて、夜ご飯まであと30分もありますね、どうします?」
「どうするも何も奏汰くんは疲れてそうだから休憩、体は疲れてなくてもちゃんと頭や心に蓄積されてるんだから」
「それもそうですね、何か話しますか」
「それじゃあ奏汰くん初参加のハロウィンパーティーについて話すね!」
静華さんは改めて3日後にあるハロウィンパーティーについて話してくれた。料理班と飾り付け班に分かれている事、静華さんと僕は飾り付け班である事、主な会場は食堂であるという事、コスプレは自由でしなくてもいいという事、特に決まったルールは無く楽しめれば何でもいいらしい──
一方その頃同じ話を神崎さんに聞かされていたるなちゃんは不安になっていた。
「るな......が......料理......班......?」
「大丈夫だって、私も手伝うし」
「るな......お手......伝い......ぐらい......しか......やった......こと......ない......るな......がんば......れない......」
そう言ってるなちゃんは俯き暗い顔をした。それを見た神崎さんは少し考え、るなちゃんに明るく声を掛けた。
「じゃあ一緒に作ろ? それで灰羽《はいば》さんに食べてもらおうよ、それなら頑張れるかな?」
「奏汰......うん......がんば......れる......」
「よし! それじゃあ私も張り切っちゃおうかな」
「......準備......する前......に......夜ご飯......」
「そうだね、今の時間はっと」
そう言って神崎さんは壁掛け時計を見た。
「まだ30分ぐらい夜ご飯まで時間あるけど──」
「っ! ......行こ」
小声で言葉を発すとるなちゃんは急に歩き出し、部屋から出ようとドアを開けた。
「えっ、るなちゃんどこ行くの?」
「きゅう......けい......しつ......料理......の......本......読み......たい......!」
0
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる