僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

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祈りの花

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 着替えついでの清拭《せいしき》が終わり静華《しずか》さんが後片付けをしていた時、奏汰《かなた》はそれを思い出して静華さんに聞いてみることにした。

「そうですねー......あっそういえば、冷蔵庫に入ってるビニール袋って心当たりあります?」

「あー! あれね......私が入れたの」
「そうなんですか、オレンジ色の何かと......お水も直接入ってたと思うんですけど......何かやらかしました?」

 そう僕がふざけて言ったとたん静華さんが深刻そうな顔をして口を開いた。

「......央光《おうこう》から見学に来た時にね、生徒さんから採った危険な実験のための血液をここに置いてるのよ、奏汰くんが見たオレンジ色の何かっていうのは中に血液や汚染物が付着した固形物の事を意味するマークなの、そうすれば病院に置いてても誤魔化せるでしょ?」

「えっ......?」

 ちょっ......と......待って──今、いやいやいやいや何? ......えっ、危険な実験......?

「あー! もう無理嘘に決まってるでしょ!」

 奏汰が困惑していたら静華さんが急に声を発し混沌と化《か》した場を笑いながら和ませた。

「いや嘘かい! びっくりしましたよもう......」
「ごめんごめん! ちょっと引っ掛けてみたくなっちゃって」

 反応を見たくなっちゃったんだよね~!

「演技が上手《じょうず》すぎてまんまと引っかかっちゃいましたよ」
「嘘っていうのは真実と混ぜることで信憑性が増すのだよ奏汰くん」

「そう言われてもどれが本当でどれが嘘かなんで分かんないですよ......もしかして生徒さんから採った血液が本当なんじゃ──」

「そんなわけないでしょー! 本当なのはオレンジ色のマークのことよ。赤色黄色オレンジ色の丸が3個ついたようなマークがビニール袋とかにあったら触らないでね、私たち看護師が回収するから」

「分かりました、見つけたら教えますね。......じゃああのビニール袋の中にあるオレンジ色の何かって? 静華さんが置いたんですよね?」

 困惑して静華さんから背けた顔を再度静華に向け、奏汰は不思議そうに質問した。

「それはね、毎年ハロウィンに行う光心《こうしん》病院の風習みたいなものよ」

 清拭《せいしき》の後片付けを終えた静華さんはそう答え冷蔵庫に向かった。

「風習ですか」
「そう、見てこれ」

 そう言って静華さんは冷蔵庫から取り出したビニール袋の結び目を解いて奏汰に見せる。

「バラ......ですか?」
「そう、オレンジ色のバラ。綺麗でしょ」

 静華さんの髪が少し揺れ、奏汰は引き寄せられるように声を発した。

「それに何の意味があるんですか?」

「ベタだけど花言葉ね、オレンジ色のバラには絆、信頼、そして健やかっていう花言葉があるらしいの。多分あと2つぐらい花言葉があったと思うんだけど......なんだっけ」

「僕に聞かれても......」

「まあ主に健やか、健康を祈る風習だから分からなくても問題ないよね! 1年に1回のハロウィンだけだし!」

「......あっ!」

 奏汰は何かに気づいて急に声を出した。

「えっどうしたの奏汰くん?」
「もうすぐハロウィンなんですか?」

「そう! 楽しい楽しいハロウィンパーティーの始まりだよ! 手の空いてる看護師さんたちはもう準備してるんじゃないかな」

「ははっ......忙しくなりそうですね」

 そう言って奏汰は目を瞑った。

「準備って言っても料理班と飾り付け班で分かれるからそんなには忙しくないよ、私と奏汰くんは飾り付け班だね!」

「......」
「おーい、奏汰くん?」

 返事がない、寝ちゃったのかな......ちょっと......ちょっとだけなら頬っぺツンツンしてみても良いかな? 良いよね?

「......やわらか」

 起きない......ってことはプニプニって優しくつまんでも起きないよね!? ......よし!

「わぁ......」

 静華さんは夢中で奏汰の頬を触った、指で優しくつまんでみたり、人差し指でなぞってみたりとそれはもう目一杯《めいっぱい》堪能していた......奏汰が既に起きているということを知らずに......

「あのー......僕はお餅じゃないですよ?」
「えっ、あっあぁ起きていたのね」

「寝てるからって僕の頬っぺたで遊ばないでくださいよ」

「ごめんごめん、つい触ってみたくなっちゃって」

 その言い方絶対悪いと思ってないじゃん、むしろ喜んでそうでなんか怖い。

「まあそれは置いといて、夜ご飯まであと30分もありますね、どうします?」

「どうするも何も奏汰くんは疲れてそうだから休憩、体は疲れてなくてもちゃんと頭や心に蓄積されてるんだから」

「それもそうですね、何か話しますか」
「それじゃあ奏汰くん初参加のハロウィンパーティーについて話すね!」

 静華さんは改めて3日後にあるハロウィンパーティーについて話してくれた。料理班と飾り付け班に分かれている事、静華さんと僕は飾り付け班である事、主な会場は食堂であるという事、コスプレは自由でしなくてもいいという事、特に決まったルールは無く楽しめれば何でもいいらしい──



 一方その頃同じ話を神崎さんに聞かされていたるなちゃんは不安になっていた。

「るな......が......料理......班......?」
「大丈夫だって、私も手伝うし」

「るな......お手......伝い......ぐらい......しか......やった......こと......ない......るな......がんば......れない......」

 そう言ってるなちゃんは俯き暗い顔をした。それを見た神崎さんは少し考え、るなちゃんに明るく声を掛けた。

「じゃあ一緒に作ろ? それで灰羽《はいば》さんに食べてもらおうよ、それなら頑張れるかな?」

「奏汰......うん......がんば......れる......」
「よし! それじゃあ私も張り切っちゃおうかな」
「......準備......する前......に......夜ご飯......」

「そうだね、今の時間はっと」

 そう言って神崎さんは壁掛け時計を見た。

「まだ30分ぐらい夜ご飯まで時間あるけど──」
「っ! ......行こ」

 小声で言葉を発すとるなちゃんは急に歩き出し、部屋から出ようとドアを開けた。

「えっ、るなちゃんどこ行くの?」

「きゅう......けい......しつ......料理......の......本......読み......たい......!」
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