55 / 69
選ぶか直すか
しおりを挟む
「あっ! 奏汰くん、大丈夫だった?」
びっくりしたぁ......
「もちろんですよ、トイレぐらい1人でも大丈夫です」
自信ありげに奏汰が静華さんへ言った。それを見た静華さんはやれやれとした顔をし、奏汰の頭を撫でようと手を伸ばしたその時──
「バカ」
清水さんが奏汰の頭を軽く叩いたのだった。
「いてっ──」
「バカなの? さっきだって私がいなかったら痛いのに無理して車椅子動かして部屋まで戻ったわけ? それで治るのが遅くなったらどうするの!」
「......」
あ......またやっちゃった......言わなくていいことを次々に......ほら、灰羽さんも黙り込んじゃったし......何やってんだ、中2にもなって......
「そうだそうだー! 私を頼れー!」
「......すみません、いけると思ったんですよ」
「もう骨折とかもろもろ治るまで離さないから」
「それは勘弁してくれると嬉しいです......」
あれ......変な空気にならない......? いつもだったら周りからの目線がすごいのに。
「ぼーっとしてどうしたの、清水千鶴さん?」
「あっはい!」
「とりあえず奏汰くんを部屋に入れるね」
「あ、お願いします静華さん」
僕がそう言ったら静華さんはゆっくり車椅子を押してくれ、1番奥のテーブルがある所まで移動してくれた。
「はいどうぞ、お水でも飲んでてね」
「ありがとうございます」
お水を渡してくれたあと、静華さんは清水さんがいるドアの方へ歩いていった。
「まずは奏汰くんをここまでありがとね」
「いや、私は偶然そこで会っただけで」
「それでもありがと」
「......はい」
その言葉を後に、2人の会話は途切れた。それから5分ほどが経ち、清水さんがその空気感に耐えられず言葉を発した。
「それじゃあ私はこれ──」
「あっそうだ!」
「えっ?」
「何か言おうと思ってたんだけど忘れちゃって、でも安心して、今思い出した」
「......なんですか?」
清水さんがそう言った瞬間、静華さんは清水さんに近寄って、奏汰に聞こえないよう耳打ちをする。
「誰でも弱点はあるよ、だからそれに対応出来るぐらい強くならなきゃ、臨機応変にね」
「......ずるい」
「それでももしダメなら──自分を理解してくれる人を探そう、奏汰くんみたいな人をね」
さっき助けられた人に言われたら......聞くしかないじゃん......
「千鶴ちゃんも人を頼ってみたらどう?」
「そう......ですね......」
人を頼れって灰羽さんに言ってたのに、頼るべきは私だったってわけか......
「あっ......あと......」
「あと?」
静華さんが清水さんの方を向いて聞き返した時、静華さんの目には少し頬を赤くして俯いている清水が見えた。
「ちゃん呼び......やめてください......」
「え......なんで?」
「......恥ずかしいから」
......ふふっ......不覚だわ......こんなにも可愛いだなんて、前会った時はこんな一面見せてくれなかったのに。
「なんでよー可愛いよ? 千鶴ちゃん」
いやっ、今まで千鶴ちゃんとか呼ばれたことないし、ちょっと恥ずかしいなと思ったらどんどん恥ずかしく思えてきてなんか......
「なんか......ダメなんです」
「でも可愛いよ、千鶴って名前」
「千鶴はいいんです、自分でも気に入ってます」
「......千鶴ちゃん」
「あぁぁー! なんかムズムズして恥ずかしいからやめてー!」
はぁ可愛い可愛い......身近にこんな可愛い子が居たとは......清水《しみず》千鶴《ちづる》ちゃんね......
「奏汰くんも千鶴ちゃんって呼び方可愛いと思うよねー?」
少しだけ離れている奏汰にそう呼びかけ、静華さんはしれっと清水さんの後ろに回り込んでいた。
「さっ、入って入って」
「えっえっ?」
そう言って清水さんの背中を押し、無理やり奏汰の部屋へ入らせる。
「千鶴ちゃんは友達とかにどんな呼ばれ方してたの? あだ名とか」
「どんなのあったっけ......千鶴に千鶴さん、清水さんとか......なんか、堅い」
「それじゃあもうちょっと親しげのあるあだ名を考えようよ」
「だから恥ずかしいんですって」
「うーん......がんば!」
「そこはアドバイスしてくれないのね」
......たしか昔、幼馴染が呼んでたあだ名があったと思うんだけど......忘れちゃったなぁ、しばらく会ってないし。
「じゃあ......シンプルだけど ちーちゃん......っていうのはどうですか?」
自力で僕は2人の所へ車椅子を動かして、清水さんにあだ名を提案した。誰でも思いつきそうなあだ名だけど。
「ちーちゃん......いいんじゃない!?」
「ちょっと恥ずかしいけど、千鶴ちゃんよりかはマシかも」
「じゃあこれからはちーちゃんで!」
「はい」
まあ、会う機会も少ないだろうし、呼ばれ方ぐらい何でもいいんだけど......千鶴ちゃん以外は......
「改めてよろしくね、千鶴ちゃん」
そう言って静華さんは清水さんに手を伸ばした。
「はい、北条さ──ってあだ名は!?」
「私は千鶴ちゃんのままでいくよ?」
「それじゃあさっき決めたあだ名の意味が......」
「奏汰くんは千鶴ちゃんのことなんて呼ぶ?」
静華さんからそう言われて初めて僕は考えた、清水さんをなんて呼ぶか。というか静華さんは千鶴ちゃん呼び続行なんだ......まぁそれはそうとどうしよう、呼び方なんて特に考えてなかったな。
「じゃあちーちゃん......やっぱ清水さんで」
「奏汰くんったらー照れちゃてー!」
「私としてはそっちの方が聞き慣れてるからありがたいけど、あだ名は放置ですか」
「作っておいて損は無いでしょ、ね! 千鶴ちゃん!」
以前にも会ったことあるけど、北条さん看護師なのにフレンドリーすぎるし、私の名前好きすぎじゃない? なんか、化けの皮が剥がれたって感じがする......
びっくりしたぁ......
「もちろんですよ、トイレぐらい1人でも大丈夫です」
自信ありげに奏汰が静華さんへ言った。それを見た静華さんはやれやれとした顔をし、奏汰の頭を撫でようと手を伸ばしたその時──
「バカ」
清水さんが奏汰の頭を軽く叩いたのだった。
「いてっ──」
「バカなの? さっきだって私がいなかったら痛いのに無理して車椅子動かして部屋まで戻ったわけ? それで治るのが遅くなったらどうするの!」
「......」
あ......またやっちゃった......言わなくていいことを次々に......ほら、灰羽さんも黙り込んじゃったし......何やってんだ、中2にもなって......
「そうだそうだー! 私を頼れー!」
「......すみません、いけると思ったんですよ」
「もう骨折とかもろもろ治るまで離さないから」
「それは勘弁してくれると嬉しいです......」
あれ......変な空気にならない......? いつもだったら周りからの目線がすごいのに。
「ぼーっとしてどうしたの、清水千鶴さん?」
「あっはい!」
「とりあえず奏汰くんを部屋に入れるね」
「あ、お願いします静華さん」
僕がそう言ったら静華さんはゆっくり車椅子を押してくれ、1番奥のテーブルがある所まで移動してくれた。
「はいどうぞ、お水でも飲んでてね」
「ありがとうございます」
お水を渡してくれたあと、静華さんは清水さんがいるドアの方へ歩いていった。
「まずは奏汰くんをここまでありがとね」
「いや、私は偶然そこで会っただけで」
「それでもありがと」
「......はい」
その言葉を後に、2人の会話は途切れた。それから5分ほどが経ち、清水さんがその空気感に耐えられず言葉を発した。
「それじゃあ私はこれ──」
「あっそうだ!」
「えっ?」
「何か言おうと思ってたんだけど忘れちゃって、でも安心して、今思い出した」
「......なんですか?」
清水さんがそう言った瞬間、静華さんは清水さんに近寄って、奏汰に聞こえないよう耳打ちをする。
「誰でも弱点はあるよ、だからそれに対応出来るぐらい強くならなきゃ、臨機応変にね」
「......ずるい」
「それでももしダメなら──自分を理解してくれる人を探そう、奏汰くんみたいな人をね」
さっき助けられた人に言われたら......聞くしかないじゃん......
「千鶴ちゃんも人を頼ってみたらどう?」
「そう......ですね......」
人を頼れって灰羽さんに言ってたのに、頼るべきは私だったってわけか......
「あっ......あと......」
「あと?」
静華さんが清水さんの方を向いて聞き返した時、静華さんの目には少し頬を赤くして俯いている清水が見えた。
「ちゃん呼び......やめてください......」
「え......なんで?」
「......恥ずかしいから」
......ふふっ......不覚だわ......こんなにも可愛いだなんて、前会った時はこんな一面見せてくれなかったのに。
「なんでよー可愛いよ? 千鶴ちゃん」
いやっ、今まで千鶴ちゃんとか呼ばれたことないし、ちょっと恥ずかしいなと思ったらどんどん恥ずかしく思えてきてなんか......
「なんか......ダメなんです」
「でも可愛いよ、千鶴って名前」
「千鶴はいいんです、自分でも気に入ってます」
「......千鶴ちゃん」
「あぁぁー! なんかムズムズして恥ずかしいからやめてー!」
はぁ可愛い可愛い......身近にこんな可愛い子が居たとは......清水《しみず》千鶴《ちづる》ちゃんね......
「奏汰くんも千鶴ちゃんって呼び方可愛いと思うよねー?」
少しだけ離れている奏汰にそう呼びかけ、静華さんはしれっと清水さんの後ろに回り込んでいた。
「さっ、入って入って」
「えっえっ?」
そう言って清水さんの背中を押し、無理やり奏汰の部屋へ入らせる。
「千鶴ちゃんは友達とかにどんな呼ばれ方してたの? あだ名とか」
「どんなのあったっけ......千鶴に千鶴さん、清水さんとか......なんか、堅い」
「それじゃあもうちょっと親しげのあるあだ名を考えようよ」
「だから恥ずかしいんですって」
「うーん......がんば!」
「そこはアドバイスしてくれないのね」
......たしか昔、幼馴染が呼んでたあだ名があったと思うんだけど......忘れちゃったなぁ、しばらく会ってないし。
「じゃあ......シンプルだけど ちーちゃん......っていうのはどうですか?」
自力で僕は2人の所へ車椅子を動かして、清水さんにあだ名を提案した。誰でも思いつきそうなあだ名だけど。
「ちーちゃん......いいんじゃない!?」
「ちょっと恥ずかしいけど、千鶴ちゃんよりかはマシかも」
「じゃあこれからはちーちゃんで!」
「はい」
まあ、会う機会も少ないだろうし、呼ばれ方ぐらい何でもいいんだけど......千鶴ちゃん以外は......
「改めてよろしくね、千鶴ちゃん」
そう言って静華さんは清水さんに手を伸ばした。
「はい、北条さ──ってあだ名は!?」
「私は千鶴ちゃんのままでいくよ?」
「それじゃあさっき決めたあだ名の意味が......」
「奏汰くんは千鶴ちゃんのことなんて呼ぶ?」
静華さんからそう言われて初めて僕は考えた、清水さんをなんて呼ぶか。というか静華さんは千鶴ちゃん呼び続行なんだ......まぁそれはそうとどうしよう、呼び方なんて特に考えてなかったな。
「じゃあちーちゃん......やっぱ清水さんで」
「奏汰くんったらー照れちゃてー!」
「私としてはそっちの方が聞き慣れてるからありがたいけど、あだ名は放置ですか」
「作っておいて損は無いでしょ、ね! 千鶴ちゃん!」
以前にも会ったことあるけど、北条さん看護師なのにフレンドリーすぎるし、私の名前好きすぎじゃない? なんか、化けの皮が剥がれたって感じがする......
0
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる