僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

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かなりの大物揃い

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 ハロウィンパーティーから2日後、11月2日。

 雪希子《ゆきこ》と夏凛が央光《おうこう》へ行く日の朝、雪希子のスマホに一通のメールが届いた。

「神薙《かんなぎ》美琴《みこと》が今朝、部分的記憶喪失になっただと⋯⋯!?」

 軽く目を通した程度だったので、しっかりと読み上げることにした雪希子は、このメールのせいで朝から目が冴えた。

「理事長からだな。ついさっき美琴くん自身からところどころ記憶が曖昧になっていると連絡があり、本人に電話で確認したところ、雪希子《ゆきこ》くんとうちの大学へ見学に来てくれた面々、そして現在部分的記憶喪失で自宅療養中の愛宮《あみ》くんのことを覚えていなかった。愛宮くんほど重症ではなかったので今日の会議には出てもらうことにした、よろしく頼む」

 生徒会長まで部分的記憶喪失とは⋯⋯って待って、愛宮くんって椿《つばき》愛宮《あみ》か?  そうだった、静華さんには言ってないけど椿《つばき》愛宮《あみ》は重症の部分的記憶喪失。軽症重症問わずこれで3人目か⋯⋯面倒なことになりすぎている。

「このメール夏凛《かりん》にもいってるだろうし、話は合流してからね」

 ベッドから立ち上がり朝食を済ませた雪希子は身支度をし、時間通りに玄関を出た。そのまま車に乗り込んだ雪希子は奏汰が好きなアイドルグループの曲をかけ、車を走らせた。


「あっ、いたいた」
「おはよー」

 コンビニで待ち合わせをしていた夏凛を車に乗せ、央光大学を目指して車を走らせる。

「朝ご飯食べた?」
「雪希子を待ってる間に食べたわ」

 助手席に乗っている夏凛は背もたれを後ろに倒しながらそう言った。

「コンビニなんだ、たまにはお味噌汁ぐらい飲んだら?」
「作るの面倒くさくない?」
「それが料理なんだよ」

 会議をしに行くとはいえ久しぶりの休み、世間話を夏凛としながらゆったりとした時間を楽しんでいたら、いつの間にか央光大学の近くまで車を走らせていた。

「近くに駐車場あったっけ」
「央光の駐車場でよくない?」
「許可なしでそれはさすがに⋯⋯」
「顔パスだろ顔パス」

 顔パスは無理だろと思った私は、夏凛に近くの駐車場を探してもらった。

「えーっと⋯⋯近くに駐車場ないです」
「まじか⋯⋯ワンチャンで央光内の駐車場使えないかな?」
「まあ、それしか方法ないし」
「⋯⋯行ってみるか」

 僅かな希望を持ちながら2人は門まで向かった。すると警備員の1人が車に寄ってきて、運転席側の窓をコンコンとノックして開けるよう促してきた。

「すみません、神崎雪希子さんと黒沢夏凛さんですか?」

「はい、そうですけど⋯⋯」
「でしたらお通りください、入ってすぐ左側にある看板が目印ですので」
「わっかりました⋯⋯」

 なんで私たちの名前を知ってて、通るのを許してくれたのか分からないまま私はアクセルを踏み、央光内に入ることが出来た。

「あの警備員の人なんで私たちの名前知ってたんだろ」

「だって許可取ってたから、そもそも理事長が私たちを呼んでるのに話が通ってないわけないだろ」

 ⋯⋯はあ、してやられた。私の気も知らないで笑いやがって⋯⋯。

「⋯⋯腹黒」

「別にいいだろ焦ってるの面白いんだし!」
「じゃあこれから呼ぶ時 腹黒凛《はらぐろりん》でいきまーす!  ⋯⋯語呂いいな」
「ごめん」
「即答かよ、いいよ」

 そう答えながら私は車を駐《と》める。エンジンと音楽を止めて車から降りた私たちは、央光大学まで歩いて向かった。


「懐かしー」
「相変わらず人が多いな」
「私たちこんなに人気あったか?」

 理事長室に向かう途中、授業が始まる前の廊下で私たちは教室へ移動する学生に囲まれていた。

「すみません握手──」
「あ、いいよ」
「私にも!」
「はいはい」

 何やってんのよ夏凛は⋯⋯まるで芸能人ね。

「ほら夏凛、早く行くよ」
「分かったよ」

 人混みを避けつつ理事長室に着いた私たちは、学生たちに手を振ったあと目の前のドアをノックし部屋の中へ入った。

「よく来てくれた、もうみんな集まってるよ」
「隣の応接室?」
「そうだ。それと久しぶりだな夏凛くん」
「お久しぶりです」

「さあ、まずは顔合わせだな」

 理事長と挨拶を済ませたあと、会議に参加する愛宮を抜いた十二光《じゅうにこう》の5人と、部分的記憶喪失になってしまった平元《ひらもと》が待っている応接室へと3人で向かった。

 ちなみに私や夏凛のことはみんなよく知っているみたいで、央光大学の公式サイトに歴代の十二光が載っていたり、憧れてネットで調べたりと、割と有名らしい。

「これで全員集まったな」

 ドアを開けたその先には、ソファーに座っている6人の姿が一瞬にして目に入った。


「こんにちは、あなた方が理事長の言っていた神崎さんと黒沢さんですね」

 神薙《かんなぎ》美琴《みこと》、央光医療大学の3年生で生徒会長。今朝メールであった通り、部分的記憶喪失により私のことは覚えていないらしい。

「お久しぶりです神崎さん」

 咲苺《わらめ》佳子《かこ》、同じく央光医療大学3年生で部分的記憶喪失により自宅療養中の椿《つばき》愛宮《あみ》の親友。

「待ってたよー」

 愛園《あいぞの》寧《ねい》、るなちゃんを介《かい》して話したことはあるものの、深くまでは知らないおっとりした人。彼女は心の専門家を目指しているらしい、この会議において違う視点から見れる人は重要だ。

「見学の際はご迷惑おかけしてすみませんでした」
「残念ながら私は根に持つタイプなんだ」
「⋯⋯勘弁願います」

 この男は平元《ひらもと》源《げん》。光心《こうしん》病院に見学へ来た際、るなちゃんに怖い思いをさせ、私にも迷惑をかけた男。だが自分の意思なく行動していたようで、その後に軽度の部分的記憶喪失が発症、見学の時の記憶は全て無くなっているらしい。


「それで、そちらの2人は初めましてかな」

 夏凛がそう言うと、その2人は私たちに目を合わせながら立ち上がり、名乗ってきてくれた。

「私の名前は湯野《ゆの》陽葵《ひまり》、央光の2年生やでー。この喋り方で気づいとるかもしれんけど京都出身や、よろしくなぁ」

「よろしく、湯野さん」
「よろしくな」

 おっとりした喋り方にフワフワのロブヘア、そして繰り返し聞いてみたくなるほどの美しい声は、彼女のはんなりさをより強調する。

「私は千歳《ちとせ》晴香《はるか》!  陽葵と同じ2年生やからよろしく、元十二光のお二方!」

 透き通った声に今喋っただけで陽気な雰囲気が漂う元気っ子。湯野さんとはタイプが真逆で喋り方的に大阪出身かな?

「よろしく!」
「元気だな2人とも、千歳さんよろしく」

「よし、挨拶も終わったところで早速だが、部分的記憶喪失がどこまで猛威を振るっているのか、今分かっている情報をまとめよう」
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