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愛の園、底が見えない発生源
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合流した面々と挨拶を済ませたあと、本格的に会議が始まった。まず最初に話し出したのは理事長、現在の状況を教えてくれるそうだ。
「まず部分的記憶喪失とは、その名の通り記憶の1部が喪失し、重症になると寒気、吐き気、頭痛などの症状も見られる。そして未だに発生源が分かっていない、かかった全員記憶を失ってるからな」
「もっと簡単に考えてもいいと思うけどな~」
そう言い出したのは愛園《あいぞの》寧《ねい》だった。皆の視線が集まった彼女は右頬に手を当て、ゆったりとした雰囲気をまといながら会話を広げる。
「とりあえず原因を見つけて対処したいんだよね? だったら早速聞こうよ。はい、美琴《みこと》さんは部分的記憶喪失になる前何してたの?」
主導権を理事長から奪い取った寧は、微笑みながら美琴に話を振った。美琴は少し悩んだあと、顔をしかめながら口を開いた。
「学校で普通に授業を受けたあと、研究室で用事を済ませて寄り道せず家に帰ったと思うのですけど⋯⋯そこから記憶が曖昧で⋯⋯」
「特に変わったことはしてないと⋯⋯じゃあ平元《ひらもと》さんもお願い」
「はっはい!」
最近私の立場がどんどん無くなってきている気がする⋯⋯一応理事長なんだけどなぁ。
「まず、光心《こうしん》病院へ見学に行った時のことは何も覚えてないです。その前なので、その日は朝の支度して学校へ行き、校舎に入ったところから全部無くなってます」
共通点はこの大学だけか。でもそれなら集団感染しててもおかしくないよな、なんで神薙《かんなぎ》さんと平元と椿さんの3人だけなんだ。そのうち2人は軽症で椿さんだけ重症、かかった日もそれぞれ違うし。
「変わったことはしてなさそうだねー。それじゃあ⋯⋯この中で愛宮《あみ》さんが部分的記憶喪失になる前の事知ってる人いるー?」
そう言って左手を頭の上まで上げて、挙手を要求しながらみんなをじっくり観察する。
「私は知らんでー」
「晴香と同じや」
「私もお見舞いにはまだ行けておらず、何も聞けてない状況です。スマホにも一応連絡してるんですけど反応がなくて」
「私も知らないです。連絡してるんだけど返信が無くて」
「私らはもちろん知らないぞ」
「知ってたら逆に怖ーよ」
それを聞いた寧は何故か安心した顔をして、理事長の方へ顔を向けた。
「大丈夫だったよ理事長、確証は無いけどね」
「良かったよ、安心した」
「なんやなんや?」
「うちらのこと試してたん?」
顎に手をやり、真剣な眼差しで寧を見つめる美琴。少し考えた末何かを思い出したようで──。
「私たちが嘘をついてないか確認するため⋯⋯じゃないですか? そのために左手を上げて質問を」
「美琴さん正解。この場にいる全員右利きだし、質問と同時に不快感を少しでも当てれば表情とか仕草に変化あるかなと思ってね。ま、全部理事長が支持したことだけど」
理事長と心理学専攻のタッグはやることが読めないな。
「それじゃ裏切り者はおらへんってことやなー」
「一安心ではありますね」
「愛宮くんの情報は無しか、他に何か情報はないか? 央光《おうこう》内のことならなんでもいいぞ」
理事長がそう口にしたら十二光《じゅうにこう》たちは一斉に頭を悩ませていた。一応私も考えてはみたけど、もちろん何も思いつかない。
「あっ!」
「どうした夏凛」
「全然関係ないかもだけど理事長室に着いた時、奥の研究棟側から変な臭いがしたぞ」
犬かよ⋯⋯私なんにも感じなかったんだけど。
「研究棟だからなぁ⋯⋯少し臭いはキツいが、まあ後で調べておこう。3年生や大学院生も通っていることだ、何かあってもおかしくない」
それ以降情報になるものは特になく、現段階では何も特定できなかった。短期の記憶喪失や脳障害を起こすドウモイ酸という神経毒の話もあがったが、そもそもドウモイ酸は貝毒の1種なので関係がない。
話に詰まったその時、大学中に予鈴が鳴り響いた。
「講義始まるじゃん」
「晴香もやったん?」
「あ、私も」
「それじゃあ行ってきなさい、今日の会議は終わりにしよう」
応接室のドアを開け廊下へ出ようとしていた晴香《はるか》は足を止め、中にいる十二光の2人に話しかけた。
「神薙さんと愛園さんは講義ないんですか?」
「美琴くんと寧くんはもう単位取り終えてるぞ」
3人は呆れ果てた表情で軽く引き、晴香が応接室のドアノブを握った。
「我々とは格が違うのじゃよ。2人とも、去るぞ」
「わしらにゃ届かん領域だはんで」
「それ津軽弁」
そそくさと応接室を出ていった3人の背中は少し悲しそうにも見えた。
「この後4人は何か用事とかあるのか?」
「私ら2人はショッピングモールに行く予定、せっかくの有給だし」
「私は何もありません」
「私も何もないよー? 何か頼み事?」
理事長は首を縦に振り、4人に話し始めた。
「愛宮くんのお見舞いに行ってくれないか? 私自身心配というのもあるが、何か覚えてないか聞きに行って欲しい」
「私はいいよー」
「もちろんです、個人的に行こうと思ってましたし」
「それじゃあ私の車でだな」
「理事長は仕事頑張れー」
呑気なもんだ、落ち着いているという点ではいいことだが。
「それじゃ、よろしく頼む」
「まず部分的記憶喪失とは、その名の通り記憶の1部が喪失し、重症になると寒気、吐き気、頭痛などの症状も見られる。そして未だに発生源が分かっていない、かかった全員記憶を失ってるからな」
「もっと簡単に考えてもいいと思うけどな~」
そう言い出したのは愛園《あいぞの》寧《ねい》だった。皆の視線が集まった彼女は右頬に手を当て、ゆったりとした雰囲気をまといながら会話を広げる。
「とりあえず原因を見つけて対処したいんだよね? だったら早速聞こうよ。はい、美琴《みこと》さんは部分的記憶喪失になる前何してたの?」
主導権を理事長から奪い取った寧は、微笑みながら美琴に話を振った。美琴は少し悩んだあと、顔をしかめながら口を開いた。
「学校で普通に授業を受けたあと、研究室で用事を済ませて寄り道せず家に帰ったと思うのですけど⋯⋯そこから記憶が曖昧で⋯⋯」
「特に変わったことはしてないと⋯⋯じゃあ平元《ひらもと》さんもお願い」
「はっはい!」
最近私の立場がどんどん無くなってきている気がする⋯⋯一応理事長なんだけどなぁ。
「まず、光心《こうしん》病院へ見学に行った時のことは何も覚えてないです。その前なので、その日は朝の支度して学校へ行き、校舎に入ったところから全部無くなってます」
共通点はこの大学だけか。でもそれなら集団感染しててもおかしくないよな、なんで神薙《かんなぎ》さんと平元と椿さんの3人だけなんだ。そのうち2人は軽症で椿さんだけ重症、かかった日もそれぞれ違うし。
「変わったことはしてなさそうだねー。それじゃあ⋯⋯この中で愛宮《あみ》さんが部分的記憶喪失になる前の事知ってる人いるー?」
そう言って左手を頭の上まで上げて、挙手を要求しながらみんなをじっくり観察する。
「私は知らんでー」
「晴香と同じや」
「私もお見舞いにはまだ行けておらず、何も聞けてない状況です。スマホにも一応連絡してるんですけど反応がなくて」
「私も知らないです。連絡してるんだけど返信が無くて」
「私らはもちろん知らないぞ」
「知ってたら逆に怖ーよ」
それを聞いた寧は何故か安心した顔をして、理事長の方へ顔を向けた。
「大丈夫だったよ理事長、確証は無いけどね」
「良かったよ、安心した」
「なんやなんや?」
「うちらのこと試してたん?」
顎に手をやり、真剣な眼差しで寧を見つめる美琴。少し考えた末何かを思い出したようで──。
「私たちが嘘をついてないか確認するため⋯⋯じゃないですか? そのために左手を上げて質問を」
「美琴さん正解。この場にいる全員右利きだし、質問と同時に不快感を少しでも当てれば表情とか仕草に変化あるかなと思ってね。ま、全部理事長が支持したことだけど」
理事長と心理学専攻のタッグはやることが読めないな。
「それじゃ裏切り者はおらへんってことやなー」
「一安心ではありますね」
「愛宮くんの情報は無しか、他に何か情報はないか? 央光《おうこう》内のことならなんでもいいぞ」
理事長がそう口にしたら十二光《じゅうにこう》たちは一斉に頭を悩ませていた。一応私も考えてはみたけど、もちろん何も思いつかない。
「あっ!」
「どうした夏凛」
「全然関係ないかもだけど理事長室に着いた時、奥の研究棟側から変な臭いがしたぞ」
犬かよ⋯⋯私なんにも感じなかったんだけど。
「研究棟だからなぁ⋯⋯少し臭いはキツいが、まあ後で調べておこう。3年生や大学院生も通っていることだ、何かあってもおかしくない」
それ以降情報になるものは特になく、現段階では何も特定できなかった。短期の記憶喪失や脳障害を起こすドウモイ酸という神経毒の話もあがったが、そもそもドウモイ酸は貝毒の1種なので関係がない。
話に詰まったその時、大学中に予鈴が鳴り響いた。
「講義始まるじゃん」
「晴香もやったん?」
「あ、私も」
「それじゃあ行ってきなさい、今日の会議は終わりにしよう」
応接室のドアを開け廊下へ出ようとしていた晴香《はるか》は足を止め、中にいる十二光の2人に話しかけた。
「神薙さんと愛園さんは講義ないんですか?」
「美琴くんと寧くんはもう単位取り終えてるぞ」
3人は呆れ果てた表情で軽く引き、晴香が応接室のドアノブを握った。
「我々とは格が違うのじゃよ。2人とも、去るぞ」
「わしらにゃ届かん領域だはんで」
「それ津軽弁」
そそくさと応接室を出ていった3人の背中は少し悲しそうにも見えた。
「この後4人は何か用事とかあるのか?」
「私ら2人はショッピングモールに行く予定、せっかくの有給だし」
「私は何もありません」
「私も何もないよー? 何か頼み事?」
理事長は首を縦に振り、4人に話し始めた。
「愛宮くんのお見舞いに行ってくれないか? 私自身心配というのもあるが、何か覚えてないか聞きに行って欲しい」
「私はいいよー」
「もちろんです、個人的に行こうと思ってましたし」
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「それじゃ、よろしく頼む」
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