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25 もしかして王様死んでる?
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二回目の移住組を見送った後、王都探索に行っていた狩人達がみんなに話があると言ってきた。
「王都で聞いた政変の話でな。あまり女子供には聞かせられないもんだ。」
そう前置きして、隣村の最年長の狩人が険しい顔のまま歩き始める。
村にいる女は、鍛冶屋のおかみさんと、隣村の狩人世帯の嫁や娘達の六人だけになっている。
いや、村に残る決心をした婆ちゃん三人も数に入れとこう。
井戸前のちょっとした広場で、続きの話を始めた。
「政変活動に参加したがってる若いのが、二人いる。儂は、無駄死にさせたくない。いい知恵があれば、貸してくれんか。」
「なっ! 無茶なっ!」
「はぁ?」
「馬鹿だろっ!」
いきなり罵倒大会が始まった。驚いて声も出なかった連中も次々と声をあげる。
もちろん俺も参加した。
「……。王都の話を、まずは聞かせて下さい。」
アルバートだけは、冷静に続きを催促した。さすがだ!
その言葉を受けて、最年長狩人の息子が話し出した。
「前にも言ったが、男はほとんど傭兵って事で雇われてる。今は貴族同士の対立が激しくて、どこも兵隊が足りないらしくてな。王子の一人が王族から外されから、余計に酷くなったそうだ。」
「いくさにしてはウチの領主からの徴兵が無い、徴税のみなのは?」
「貴族達は王都が安全だと考えてる。下手に動けば、対立派閥の暗殺者に殺されるって怯えてるらしい。領地よりは王都の方が、味方の王族に守って貰えて安全だとさ。」
「味方の王族?」
なんだそれ?
聞きなれない言葉に、みんな首をかしげる。
派閥って考え方が、いまだに理解しがたい。
昔親父に説明して貰ったときは、胸派か尻派かで例えてたが。
それで殺し合いはしないぞ。もちろん殴り合いもだ。
そして暗殺者も全く馴染みが無い。意味はわかる、が。
でも、意味がわからないのが『味方の王族』って、何なんだ。
王様は貴族の味方だろう?
あ、もしかして王様死んでる?
死んでても、俺達にとってあまり変わりはないけどな。
「次の王に誰が選ばれるかで、揉めてるらしい。」
「王様、死んでるのか?」
「いいや、元気らしいな。ただ、誰を後継者にするか迷ってるって話だ。」
なーんだとばかりに、みんなの眉間からしわが取れる。
ううん。予想が外れて残念なのは、俺だけか。
あ、ギルも残念そうな顔だ。さすがだ、親友め。
「王子があと二人いるそうだが、他国の血が入った王子と平民との間に生まれた王子、その王子達に不満な王族とがそれぞれだとさ。」
「ん? 王族同士がケンカしてるって事か?」
「そんなもんだ。」
「王様が止めりゃいいのに。」
「その王様は隠し子まで見つかって、立場が無いとさ。」
なんだそれ。
俺が親近感を持っている狩人のバートが、眉間にしわを寄せて続けた。
「その隠し子が政変を手伝えと、俺達にも話を持ちかけてきた。」
「はぁ?」
「隠し子の仲間は貴族の庶子達で、平民交じりと蔑まれていたそうだ。この混乱時に、平民の国を作ろうと決心したらしい。周辺国の支援や大手の商人の援助があって、成功を確信してると。」
「自分の王族の血は残すが、統治せずの国を作るのが一番の目的。絶対に無茶な税金を取ることがない国にすると、話していた。正直、俺達に話す意味がわからん。」
「お、おう。」
一気に話しきりやがった。
なんだか、物凄く怒ってる?
「正確に言うと、お前にだったな。」
「何故だ。」
眉間のしわが深くなり、さらに人相が悪くなる。
おお、気の弱い奴なら、顔を見ただけで倒れそうだな。
最年長狩人息子の、物凄く楽し気な突っ込みがイラっとくる。お前はギルか。
「その政変計画の実行は、秋の徴税時期予定だそうだ。」
「まだ先だな。しかも嫌な時期に。」
「徴税時期なら王都の人間と役人がバラけるから、だとさ。」
それまで黙っていたアルバートが、口を開いた。
「参加は、させない方がいいですね。使い捨てにされる可能性が高すぎます。」
「そうだろうな。そう思う。」
うむっと頷き、アルバートを見る最年長狩人の爺さん。
うん、俺でもそう思うよ。
胸派と尻派のケンカに、どっちかにうなじ派が味方に入っても結局後からハブられるだろ。
「その参加したい二人は、誰ですか?」
「今は、あの商人を護衛させている。対人なんて経験がないからな。」
「治安が悪いのは、王都だけかと思ってました。」
「町の周りには、前から追剥がちょいちょい出るぞ。今は更に増えた気がするがの」
ちょっとまて。知らないぞ、そんな話。
まさか、そんな危険に娘をさらしていたのか?
「待ってくれ、俺が行った時はそれらしいのは見なかった、ぜ?」
「お前は……勘違いされなくて良かったな。」
爺さん、それは……。
なんだろう、目の奥が熱くなってきた。
あ、またみんなこっちを見てる。
「強くなれ、親友。大丈夫だ、俺達がついてる。」
「いや、意味がわからんぞ。……わからんぞ。」
「では、二人が戻ったら話しをしてみましょう。」
「儂らの話なんて、聞く耳を持たん坊主達でな。すまんが、頼む。」
「王都で聞いた政変の話でな。あまり女子供には聞かせられないもんだ。」
そう前置きして、隣村の最年長の狩人が険しい顔のまま歩き始める。
村にいる女は、鍛冶屋のおかみさんと、隣村の狩人世帯の嫁や娘達の六人だけになっている。
いや、村に残る決心をした婆ちゃん三人も数に入れとこう。
井戸前のちょっとした広場で、続きの話を始めた。
「政変活動に参加したがってる若いのが、二人いる。儂は、無駄死にさせたくない。いい知恵があれば、貸してくれんか。」
「なっ! 無茶なっ!」
「はぁ?」
「馬鹿だろっ!」
いきなり罵倒大会が始まった。驚いて声も出なかった連中も次々と声をあげる。
もちろん俺も参加した。
「……。王都の話を、まずは聞かせて下さい。」
アルバートだけは、冷静に続きを催促した。さすがだ!
その言葉を受けて、最年長狩人の息子が話し出した。
「前にも言ったが、男はほとんど傭兵って事で雇われてる。今は貴族同士の対立が激しくて、どこも兵隊が足りないらしくてな。王子の一人が王族から外されから、余計に酷くなったそうだ。」
「いくさにしてはウチの領主からの徴兵が無い、徴税のみなのは?」
「貴族達は王都が安全だと考えてる。下手に動けば、対立派閥の暗殺者に殺されるって怯えてるらしい。領地よりは王都の方が、味方の王族に守って貰えて安全だとさ。」
「味方の王族?」
なんだそれ?
聞きなれない言葉に、みんな首をかしげる。
派閥って考え方が、いまだに理解しがたい。
昔親父に説明して貰ったときは、胸派か尻派かで例えてたが。
それで殺し合いはしないぞ。もちろん殴り合いもだ。
そして暗殺者も全く馴染みが無い。意味はわかる、が。
でも、意味がわからないのが『味方の王族』って、何なんだ。
王様は貴族の味方だろう?
あ、もしかして王様死んでる?
死んでても、俺達にとってあまり変わりはないけどな。
「次の王に誰が選ばれるかで、揉めてるらしい。」
「王様、死んでるのか?」
「いいや、元気らしいな。ただ、誰を後継者にするか迷ってるって話だ。」
なーんだとばかりに、みんなの眉間からしわが取れる。
ううん。予想が外れて残念なのは、俺だけか。
あ、ギルも残念そうな顔だ。さすがだ、親友め。
「王子があと二人いるそうだが、他国の血が入った王子と平民との間に生まれた王子、その王子達に不満な王族とがそれぞれだとさ。」
「ん? 王族同士がケンカしてるって事か?」
「そんなもんだ。」
「王様が止めりゃいいのに。」
「その王様は隠し子まで見つかって、立場が無いとさ。」
なんだそれ。
俺が親近感を持っている狩人のバートが、眉間にしわを寄せて続けた。
「その隠し子が政変を手伝えと、俺達にも話を持ちかけてきた。」
「はぁ?」
「隠し子の仲間は貴族の庶子達で、平民交じりと蔑まれていたそうだ。この混乱時に、平民の国を作ろうと決心したらしい。周辺国の支援や大手の商人の援助があって、成功を確信してると。」
「自分の王族の血は残すが、統治せずの国を作るのが一番の目的。絶対に無茶な税金を取ることがない国にすると、話していた。正直、俺達に話す意味がわからん。」
「お、おう。」
一気に話しきりやがった。
なんだか、物凄く怒ってる?
「正確に言うと、お前にだったな。」
「何故だ。」
眉間のしわが深くなり、さらに人相が悪くなる。
おお、気の弱い奴なら、顔を見ただけで倒れそうだな。
最年長狩人息子の、物凄く楽し気な突っ込みがイラっとくる。お前はギルか。
「その政変計画の実行は、秋の徴税時期予定だそうだ。」
「まだ先だな。しかも嫌な時期に。」
「徴税時期なら王都の人間と役人がバラけるから、だとさ。」
それまで黙っていたアルバートが、口を開いた。
「参加は、させない方がいいですね。使い捨てにされる可能性が高すぎます。」
「そうだろうな。そう思う。」
うむっと頷き、アルバートを見る最年長狩人の爺さん。
うん、俺でもそう思うよ。
胸派と尻派のケンカに、どっちかにうなじ派が味方に入っても結局後からハブられるだろ。
「その参加したい二人は、誰ですか?」
「今は、あの商人を護衛させている。対人なんて経験がないからな。」
「治安が悪いのは、王都だけかと思ってました。」
「町の周りには、前から追剥がちょいちょい出るぞ。今は更に増えた気がするがの」
ちょっとまて。知らないぞ、そんな話。
まさか、そんな危険に娘をさらしていたのか?
「待ってくれ、俺が行った時はそれらしいのは見なかった、ぜ?」
「お前は……勘違いされなくて良かったな。」
爺さん、それは……。
なんだろう、目の奥が熱くなってきた。
あ、またみんなこっちを見てる。
「強くなれ、親友。大丈夫だ、俺達がついてる。」
「いや、意味がわからんぞ。……わからんぞ。」
「では、二人が戻ったら話しをしてみましょう。」
「儂らの話なんて、聞く耳を持たん坊主達でな。すまんが、頼む。」
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