賢者

コン太

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色覚

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 ~色~

 部長にミッチリ怒られた後、僕は取材のために某IT企業の青木社長と会うことになっていた。

「ではまず始めに、青木社長の出生についてお聞かせください。」
(変な感じだ。同い年の男に敬語を使うなんて。)
彼は僕と同じ26歳。
誕生日はたった半月差。
生まれ育ちも田舎で、大学卒業後、都会に移り住んできた。
まるで僕と同じだ。
しかし彼はこっちに来てすぐに会社を立ち上げ、その底知れぬ根性と独創性で業界を駆け上がってきた。
一体どこで僕との差が出てきたのだろう。
僕は義務教育から高校、大学まで勉強や部活、バイトも努力してきたつもりだ。
なぜこいつに劣る?なぜこいつに敬意を向けなければならない?イラつく。
気付けば彼の出生話は終わっていた。

また聞いていなかった。

最低限の情報は把握できたから良しとしよう。
「では次の質問です。なぜIT業界に足を踏み入れたのですか?成功する可能性は高くなかったと思うのですが。」

「僕は自分の能力に従い、そしてそれを利用しただけだよ」

「能力?」

「そう、能力。僕は中学の頃からパソコンに夢中でね、高校の時にパソコンの勉強をしたいと思ったんだ。
だからそれに沿った進路を選んで大学に入った。
そして大学生活の中で僕の能力に気づいたんだ。」

「それがあなたの独創性ってことですか。」

「そう!その独創性が僕に今の仕事をやれとうるさかったんだ。だから会社を立てて今に至るって感じかな。」

「その過程で、辛いと感じたことはありますか?」

「無いね。さっきも言ったように僕は自分の能力に従っただけ。全ての労力は、僕の能力が請け負っていたんだ。」

「よく意味が分からないのですが。」

「君にもいつか分かるよ。自分の能力に気づいて、それに順従した時にね。」
彼は子供に向けるような笑みを残し、仕事の話があるからと言ってその場を去った。

会社に戻るタクシーの中で、僕はまたあの光景を見た。

空から見下ろすこの街並みも2回目だ。
初めて見た時よりも何かが違う。
なんだ?
足元を動き回る小さな粒も、それらを綺麗に避けてく小さな箱も、何も変わらないはずなのに何かが違う。
より鮮明に見える。

「これは……色だ。」
目を凝らせば粒を拡大できる。
「やっぱり人だったんだ。箱も車だったのか。」
赤い靴、白い靴、黒い靴。
白いワンピース、緑のジャケット、柄付きのTシャツ。

人が歩く

ごちゃごちゃと騒がしい右足と左足達

人がぶつかる

何も気にせず歩き続ける人
立ち止まり振り向く人

人が走る

点滅する信号機

車の排気ガスに眉間を寄せる女性達

白いタバコの、灰色の煙

赤く光るブレーキランプ

黄色いウインカー

15:30を示す電光掲示板

太陽の光

反射させる窓

青い空に、白い雲、黒い烏

全ての色が分かる
全ての色が違う

何も聞こえない
何も触れることができない
何も感じない
目を閉じることさえも。
ただ見えるだけ
不自由だ
僕の身体じゃない
これは誰かの。
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