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第二章 ギルドと魔王
第十三話 【連合国】
しおりを挟む連合国は公称10万の兵で、魔王ルブランの討伐を掲げて、進軍を開始した。
総指揮は、序列1位の”エルプレ国”の騎士デュ・ボアがとっている。
連合国の序列4位の国オラブルから、出陣した公称10万の兵は、砦の構築を行うために先行した1万(公表した数字は5万)の奴隷兵を除いた。9万(実際には4万)の兵が、魔王ルブランの居城を目指している。各国から精鋭部隊(と言っている者たち)が参加している。足並みが揃うはずもなく、進軍速度は予想以上に遅い。
序列4位のオラブルから、魔王城までは通常行軍で5日ほどだが、倍の10日をかけても到着していない。
そのために、首脳部と呼ばれる面々のイライラが溜まり始めている。
特に、武官ではなく、砦が最終的には”都市”にする計画があるために、序列4位のオラブルからは、都市計画のための文官が従軍している。慣れない行軍と、遅々として進まない状況に、精神的にも疲れ切ってしまっている。
「ボア殿。砦の建築を行うのですか?」
散々愚痴を言ってから、質問の形になっているが、もう何度も話されている内容だ。
「そうだ。魔王ルブランが、どのような手で、帝国を退けたのか情報が入ってこない。まずは、後方支援を確立しなければ、攻めるのも難しいだろう」
この返答も、定型文となってしまっている。
「ルナカール殿。落ち着いたらどうですか?今、砦と同時に、柵も作成している。森から、”魔物が出てくる”という報告は、他の国にも、ギルドにも上がってきていない。砦についても安全に過ごせるのは保証されている」
「それは、理解しているが、ボーシェ殿。砦への到着は、まだなのだろう?我らは、武官ではない。このようなテントでは、疲れてしまう」
「ガハハ。貧弱な、文官らしい言い草だな」
偉丈夫で、見るからに”武”に特化した。ジャガールが。文官だと解る、神経質な見た目をしているルナカールの背中を、ジャガール基準で優しく叩いている。痛そうな表情をしながら、逃げることも出来なく、ルナカールはボーシェに助けを求めようとしている。
序列が上のジャガールを止められるのは、デュ・ボアしかしないのだが、”我、関せず”の態度で、見目麗しい奴隷から受け取ったぬるいワインを煽っている。
「ジャガール殿。貴殿たち、武官なら慣れてはいるから平気だろうが・・・。どうにも落ち着かない。陣の作成は、どのくらいで終わる?」
「ルナカール。ジャガールも少し、落ち着け。砦は、兵たちが構築している。休まずに働かせれば、3日で仮の住まいができる。そうだったな。ボーシェ」
序列1位のデュ・ボアは慣例通りに、下位の者たちに”殿”は付けない。
決められたわけではないが、暗黙の了解になってしまっている。
「そうです。計画通りに進んでいます。今日にも、柵が完成して、明日から砦内部に取り掛かる。我らが到着する頃には、完成している。他の者たちが休める場所も完成しているだろう」
ボーシェは、予定通りに進んでいると伝えているが、実際には連絡が途絶えがちになっている。
朝と夕方に、現地から伝令が出て、一日に2回の報告が届くことになっているのだが、ボーシェにも、デュ・ボアにも連絡が来ない時がある。それでも、連絡が来ていることから、二人とも事前打ち合わせで、問題はないと判断した。
このときに、魔王ルブランたちは作戦を修正しながら実行している。
柵は、何度も崩されている。1万いた奴隷兵の半数以上は魔王たちに捕らえられている。一部の奴隷は魔王の兵が見えると、自ら進んで投降するものまでいる。森から出てくる魔王軍は、捕らえた奴隷たちを解放して、まだ連合国にいる奴隷たちに呼びかけさせている。
砦の建築を任された、序列1位のエルプレの責任者や、序列3位のヴァコンから出されたテクノクラートたちは、報告書を送っている。
”問題は発生していない”
順調だと伝えることで、問題の発覚を遅らせようとした。
問題は、各々の報告者を変える事で、虚偽の報告が行われないようにしたのだが、両方の国から出された者たちが、魔王軍からの攻勢を防ぎきれない。実際にはそれだけではなく、予定していた砦の作成が滞っていることを、隠そうとした。
報告を待つ二人。
デュ・ボアは、ミスを犯した者には苛烈な制裁を加える事で有名だ。そのために、報告の時点でミスが解ってしまえば、間違いなく殺される。そう考えた、担当者は虚偽の報告を行い。残っている奴隷兵を酷使して、なんとか予定に近づけようと必死になる。
同じように、ボーシェは神経質で、自分のマイナス評価になるような事柄を犯した部下をその場で殺すこともある。
もともとが、奴隷兵を酷使して造成するような予定が組まれていた。それが、魔王軍から攻撃で柵が破壊されて、構築中であった各国の重要人物が住まう場所まで破壊された。そして、奴隷兵は魔王軍に捕らえられて数を減らしている。物資も奪われてしまっている。
「そうか、それなら移動が終われば、テントでの生活も終わると言うのだな」
「そうだ。ルナカールは、砦に残ってもらって、本国との連絡を頼みたい」
「承知しております」
「ジャガールには、砦に到着後、ただちに兵を再編成して、森の攻略に乗り出してほしい」
「任せて欲しい。森は、どうする?帝国のように、切り開くか?」
「任せる。森の中は、魔物が多いと聞いている」
作戦会議に参加している序列1位から4位の面々は、成功を疑っていない。
魔王ルブランを討伐して、凱旋する自分たちを想像しているのだ。序列4位の国は、魔王城の近くまで領土が広がるのだ。ルナカールは、広がった土地を領地とすることが認められている。魔王城を資源と考えている連合国は、この領地は”美味しい”状態になるのは期待できる未来なのだ。
ジャガールは、討伐した魔物と魔王を素材と考えている。
領地は、序列4位のオラブルが持っていくが、討伐した魔物と魔王の素材は、序列2位のカルカダンが権利を有することになっている。
名誉を、序列1位のエルプレが持っていく、序列4位は領地。序列2位が素材。序列3位は、魔王領に居ると思われている奴隷たちの権利を持っていくことになっている。この作戦に参加した。他の国々は拠出した物資や金額に応じた配当を受け取ることになっている。
既に、魔王ルブランの討伐は確定していて、その配分まで決められている。
行軍が遅々として進まない理由は、各国の足並みが揃わないこともあるが、それよりも大きいのが、帯同している貴族も多く、貴族の行軍が遅いことも影響を大きくしている。。
そして、上層部が夕方からワインを飲み始める。
これらの、輸送にも時間が掛かっている。
そして・・・。
シャガールが、会議が終わって立ち上がった。
「今日は、貴様と貴様だ。来い!」
テントの端に並んでいた、見目麗しい奴隷の二人の首輪に繋がる縄を引っ張りながらテントから連れ出す。
行軍が送れている理由は、上層部が夜の度に奴隷を閨に呼ぶためだ。日が暮れる前から初めて、翌朝になっても起きてこない。昼過ぎになって、起き出してからの行軍だ。一日の半分以上を寝ている(自国が用意しているテントでの性活をしている)状態になっている。
これでは、どれだけ兵を急がしても進むわけがない。
行軍の速度に文句を言っている、ルナカールも同じような状態だ。ジャガールよりは多少はマシという程度だ。
上層部や首脳部だけではなく、貴族連中も、ジャガールと同じ行動をしている。
砦の建設予定地まで、約2日になった時点で、連合国軍は異変に気がついた。
「ボーシェ!」
「ボア殿。貴国の連絡は?」
「昨日は来ていない。貴国は?」
「こちらも同じです」
二人の下に、魔王ルブランが砦を強襲したという情報が届く1日前で、彼らが後方から襲われるまで2日を切っている。
「砦の建築は順調のはずです」
「あぁこちらの報告も、間違っていない。魔王ルブランが伝令に気がついたか?」
「その可能性もありますが・・・」
「伝令が簡単に殺られるとは思えない」
「はい。我が国だけではなく、エルプレ国の伝令が殺られるとは・・・」
二人は、伝令が来ないことを、カルカダン国とオラブル国に告げるために、ジャガールとルナカールを呼び出す。
行軍の速度を上げることで合意した。
この時には、全てが遅かった。
あまりにも、手応えがなかったために、魔王軍は作戦を変更していた。
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