文字サイズ
小
中
大
特大
1 / 96
序章 召喚勇者
第一話 召喚勇者
1つの戦いが終わろうとしていた。
人族の悲願。”魔物の王”討伐が実現しようとしていた。
「ユウキ!どうだ」
「あと、5000!1割。リチャードの一撃で削れる」
「フェルテ!俺に補助を!」
「解った!”根源なる力よ。汝に力を”リチャード!!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
聖剣を持つサトシがリチャードの後に続く、”魔物の王”にダメージを与えられるようにできるのは、聖剣を使える勇者だけだ。
”うぉぉぉぉ!!!”
強化されたリチャードの攻撃で、”魔物の王”を守っていた結界が砕ける。新たな結界をはられないように、バックアップが結界魔法を阻害する魔法を発動する。
「サトシ!魔王の左肩を狙え!魔核がある!」
「サンキュ!ユウキ!皆、決めるぞ!」
「「「「「おぉぉぉ!!!!」」」」」
サトシが、聖剣を”魔物の王”の左肩に差し込む。
”魔物の王”が絶叫を上げる。サトシは、そのまま聖剣を押し込む。
サトシの一撃で、魔核が弾ける。
だが、まだ魔王は生きている。
「ユウキ!」
「魔核はない!再生スキルが発動している!再生する前に、倒すぞ!魔核が再生する前なら、ダメージが通る!」
ユウキの的確な指示で、パーティーのメンバーは武器や魔法で攻撃を始める。
魔核を砕かれた”魔物の王”は、それでも戦い続けた。負けは、消滅を意味している。”王”としての自分が消滅してしまうと、まとまり始めていた”魔物”がまた各地に散らばってしまう。魔物を守るために、そして人類と敵対しないためにも、自分が消滅するわけにはいかない。
『異世界より召喚された者たちよ・・・。我が貴様らに何をした!』
「魔物の王よ!滅びろ!」
『貴様ら!神に誑かせられたか!!』
「魔王よ!滅びろ!」
一斉攻撃が、”魔物の王”に被弾する。
『神よ!我が滅びれば・・・人類も・・・。解っているのか・・・』
”魔物の王”は、神への怨嗟の言葉を残して、聖剣にえぐられた左肩から徐々に崩れた。
『勇者たちよ。神に騙されるな・・・』
「うるせえよ。この世界の王族にも、神殿のお偉いさんも、神も俺たちは信じていない!俺たちは、俺たちの為に、お前を倒す道を選んだ!」
『・・・。そうか・・・。勇者たちの進む道・・・』
勇者たちが、この世界に召喚されてから、7年の月日と、数多くの犠牲が必要だった。
しかし、勇者たちは”ここ”に目的を達成した。
この世界の人族の悲願ではなく、勇者たちの目的である”自分の世界に帰る”ことを叶えるために・・・。
「ユウキ!有ったか?」
ユウキと呼ばれた青年は、”魔物の王”が崩れた場所から一つの珠を見つけ出す。
”魔物の王”が持っていた剣を、サトシと呼ばれた青年に投げる。受け取ったサトシは、剣を放り投げてから、聖剣で砕く。剣が砕く音が響き渡る。剣の柄をサトシは拾い上げてユウキに投げ返す。ユウキは、柄を受け取ってから持っていた袋にしまう。同じように、”魔物の王”が持っていた防具に付いているオーブを外して袋に入れる。最後に、”魔物の王”の頭上に生えていた角を拾い上げてから、仲間たちに放り投げる。仲間たちは順番に、角を見たり触ったりしている。
「あった。情報は間違っていなかった。”時空魔法のオーブ”だ」
「やったな!さて・・・」
聖剣を持つ、サトシが皆を見回す。
全員が、召喚された勇者だ。召喚されたときには、350名を越えていた。世界中から集められた。年齢は13歳から15歳の男女で、孤児だという共通点以外には共通しているものは何もなかった。
異世界召喚の定番というべき、言語解釈以外にも各人に適したスキルが芽生えた。
勇者たちは、最初からまとまっていたわけではない。教会や各国の王族の思想に染まった者も、多く存在していた。勇者たちは、大人の思惑に乗って、内部分裂を繰り返した。魔物側に寝返る者も出てきた。
”俺THUEEEEEE”と勘違いして訓練を受けずに、魔物に突撃して殺された勇者も存在した。
心を病んで自ら死を選んだ者も居る。
そして、最初の1ヶ月で359名居た、勇者は322名まで数を減らした。
一年後には、勇者たちは248名まで減っていた。友が死んだことで、仲間が目の前で魔物に食い殺されたことで、勇者同士の内部分裂で・・・。理由は様々だが、勇者たちはこのままでは生き残れないと考え団結することを考えた。
勇者たちの団結を恐れたのは、”魔物の王”ではなかった。人族では勝てなかった、魔物たちを駆逐する勇者たちを、民衆は絶叫と称賛で迎えた。異世界から召喚された勇者。団結して魔物を駆逐する。民衆だけではなく、各国の王族や、この世界の唯一絶対神を崇める教会としても、誇らしい結果になる・・・。はずであった。
民衆に人気があり、武力を持つ者たちが団結し始めている。
王たちは、自らの地位を奪われる恐怖を感じた。そして、教会も同じだ。民衆は、回復魔法で治す勇者たちを”聖女”や”聖者”として持て囃した。教会は、神を信じることで、回復魔法が使えると宣伝していた。しかし、異世界からきた勇者が教会の司祭たちが使う回復魔法よりも強力な回復魔法を使ってみせた。教会の特に上層部は勇者の中に居る”聖女”や”聖者”が民衆に施しをするのを恐れた。
各国の王族は教会と協力して、勇者たちが団結するのを阻止した。欲を刺激して、分断を図った。
勇者たちは、異世界で過ごした年月を加えても、中学生か高校生だ。生き馬の目を抜くような政治闘争、派閥闘争を繰り返している王族や貴族や教会関係者に叶うはずもなく、分断された。
2年たって、勇者たちは小集団で行動するようになった。
その中でも、聖剣を召喚できる日本人のサトシは勇者の中の勇者と思われるようになり、リーダーになることが多くなっていった。徐々にメンバーが固定され、サトシが率いるグループは、日本人とアメリカ人とドイツ人で構成されている。バックアップの勇者を含めても、29名と数は少ないが、最強のチームだと思われていた。実際に、撃破した魔物の数だけではなく、魔物の王に仕える将軍級を初めて討伐したのも、サトシのチームだ。
各国や教会が勇者たちを懐柔し自らの懐に入れ始めていた。
サトシたちのチームは、一つの小国を選んで、身を寄せることになった。他の勇者たちは、サトシたちの決断を笑った。
サトシたちが選んだ小国は、魔物が住まう領域に近く、一番近い人族の国との境には高い山脈が横たわって、細い一本の谷を進むしか無い。このときには、サトシたちは同じ勇者たちも敵とみなしていた。勇者たちの多くは、”神の雫”という麻薬に犯されている事実をユウキが掴んできた。
小国は、”神に見捨てられた国”と呼ばれていた。サトシたちは、2年の月日を使って、小国の守りを固めた。守りだけではなく、食糧事情や、衛生状態を改善した。
「ユウキ。お前が、オーブを使え。お前が・・・。可能性が高い」
ユウキは、サトシの言葉に驚いた。オーブは一度使ってしまえば消えてしまう。そして、適性がなければ使えない。
「でも、俺は・・・」
「俺は、このチームのリーダーをやっているが、このチームの要はお前だ。ユウキ!皆も同じ考えだ。それに、俺は・・・」
ユウキは、サトシの言葉を聞いて、周りを見る。
全員が、ユウキを見て頷いている。
「わかった」
ユウキは、オーブを手にしっかりと持つ。
そして、オーブに自分の魔力を流し込む。
灰色をしていたオーブは、緑色に輝き出す。オーブが、適性を認めた証拠だ。徐々に光が強くなる。ユウキは、魔力を流し込み続ける。ここからはオーブとの我慢比べだ。上位のオーブになると、必要な魔力量が変わってくる。満たないと、オーブの取り込みに失敗する。
ユウキの限界ギリギリまでの魔力を注いだところで、オーブは激しく光、明滅し始めた。
そして、数秒間の明滅の後で、激しく光った。
ユウキは、自分の手からオーブの重みがなくなったと認識した。
そして、頭の中に新しいスキルが芽生えたことを知らせるメッセージを受け取った。
『時空転移』
ユウキたち勇者が欲しくて、欲しくて探していたスキルだ。
「ユウキ!」「ユウキ!」「ユウキ!」
勇者たちが駆け寄ってくる。
ユウキを心配そうに見つめる55の瞳。
「時空魔法だ。時間と空間を越えて俺が認識できる、”場所”に移動できる。人数の制限は・・・。」
皆が、ユウキの次の言葉を待つ。
「ない。正確には、魔力次第だ。距離と時間と人数に比例するようだ」
皆が、手を合せて喜ぶ。戦い疲れている状態だが、皆が望んだ答えだ。
こうして、サトシたち召喚された勇者たちは、故郷に帰るための方法を手に入れた。
感想 0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜
平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。
そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。
転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。
六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。
しかし、その力はあまりにも危険だった。
だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。
……そのはずだった。
王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。
そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。
目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。
これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
【老化返却】聖女の若さは俺の寿命だった〜回復魔法の代償を肩代わりしていた俺を追放した報いだ。回復のたびに毛が抜け、骨がスカスカになるが良い〜
「寿命を削って回復してやってたのに……感謝すらしないんだな」
聖女パーティの荷物持ち兼回復術師だった俺は、ある日突然パーティを追放された。
理由は「回復魔法のコストが寿命で、もうすぐ死ぬ無能はいらない」という勝手な思い込み。
だが、彼らは知らなかった。
俺の正体が、この世界の生命を司る世界樹の根源そのものだったことを。
俺の寿命は無限であり、俺がパーティにいたからこそ、彼らは「若さ」と「健康」を維持できていたのだ。
「俺がいなくなったら、誰が君たちの老化を止めるの?」
俺がいなくなった途端、聖女たちの身体に異変が起きる。
回復魔法を唱えるたびに、自慢の金髪はバサバサと抜け落ち、肌は土色に。
若さに溺れていた彼女たちは、骨がスカスカになり、杖なしでは歩けない老婆のような姿へと変わり果てていく。
一方、解放された俺は隣国の美少女皇女に拾われ、世界樹の力で枯れた大地を森に変える「現人神」として崇められていた。
「今さら戻ってきて? ……悪いけど、そのハゲ散らかした老婆、誰だっけ?」
すべてを失ってから「俺」の価値に気づいても、もう遅い。
これは、恩を仇で返した連中が、自らの美容と健康を代償に破滅していく物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
巻き込まれただけの高校生、冒険者になる
クラスメイトに疎まれ、馬鹿にされ、蔑まれる男子高校生。
少し頭のネジが外れた彼だが、少ない友人や、家族の事だけは大切にしている、至って普通の高校生。
そんな彼がいつも通りの日常を送っていると、唐突に地面に穴が開き迷宮に落とされてしまう。
そこで出会った仲間と共に外を目指すが、数々の困難に出会い苦戦を強いられる事となる。
これは平凡な高校生が色々な悩みを抱えながら異世界を歩き、家族との再会を望む成長の物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【経験値×100】を呪いと誤解され追放された荷物持ち、最初の一匹でLv1からLv5へ
十五歳のエルンは、神授の儀で【経験値×100】を授かった。だが神官に「レベルアップに必要な経験値が百倍になる呪い」と判定され、無能の荷物持ちとしてこき使われた末、パーティを追放されてしまう。
それでも、ひとつだけ腑に落ちないことがあった。水晶には「必要経験値」などと書かれていなかったのだ。
答えを確かめるため、エルンは短剣一本で角兎に挑む。泥臭い死闘の末、初めて自分の手で魔物を倒した瞬間――Lv1だった彼のレベルは、一気にLv5へ跳ね上がった。
増えていたのは、必要経験値ではない。魔物から得られる経験値の方だった。
昨日まで逃げるしかなかった魔物を倒し、迷宮を駆け、ギルドの常識を次々と塗り替えていくエルン。彼を切り捨てた元仲間が立ち尽くす一方で、エルンは新たな相棒とともに前へ進み続ける。
これは「一生レベルが上がらない」と笑われた少年が、戦うほど強くなる力で最強への道を駆け上がる、爽快成長ファンタジー。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。