25 / 222
【第1部】5.誕生日
5
しおりを挟む
ファミレスを出ると、
「駅まで送る」
トモはそう言った。遠慮をしたが、
「こんな遅くに女一人で歩かせられるわけないだろ」
こう言われては甘えるしかなかった。
(前は『ガキが一人で』と言われたが、今日は『ガキ』とは言われなかったな)
二年前は「ガキ」と何度も言われていた。
(もう、ガキじゃないって思ってくれてる……?)
途中、ラブホ街を通りすぎて行く。
昼間はわからないが、夜ともなるとイルミネーションのように明るい。そして時間的に、どこも賑わっているようだ。なぜ賑わっているのか、それは考えないことにした。
(まさか……)
思わず身体を強ばらせる。
その様子を見たトモが、
「あん? なんだ、興味あんのか」
ニヤニヤと笑った。
「ちがっ……」
「興味あんなら入ってみるか?」
「違いますって! そんなの、ありません! そういうことは、好きな人とじゃないと! てか結婚前の男女がそんなことしてはいけませんし!」」
聡子は顔を真っ赤にして否定する。
「昭和かよ」
トモは笑う。
「だいたいなあ、俺は入ってみるかって言っただけだろ? 二十歳の記念にでも見てみるかって。別におまえとヤろうなんて言ってないぞ? そんなビビんなくても、とって食ったりしねえし。てか、まさかまだ男知らねえとか? 最近の高校生でも進んでんだろうに。友達においてかれてんじゃないのか? 結婚前の男女がーなんて今時ないぞ?」
「……ほっといて下さいっ」
自分で墓穴を掘ってしまったことに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。
男女が人目をはばかることなく、ホテルに入って行くのを見て、聡子はドキドキしてしまう。
「……おまえ、ほんとに男いねえのか?」
「いませんよ」
「気が強いからか?」
「知りませんよそんなこと」
悪かったですね、と口を尖らせる。
また揶揄われているのだと思うが、ついムキになってしまう。そしてまた「気が強い」と言われてしまうのだろう。
「おまえさ、黙ってれば可愛いのにな」
「か、可愛い……?」
聡子はふいにそんなことを言われ、顔を赤らめた。
「そんなこと言われたことないです。トモさんだけですよ、そんなこと言うの。それに、第一お世辞とはわかってますし」
「前も言ってたな。そんなわけねえだろ」
トモは鼻で笑う。
(なんでそんなこと言うのかな……)
どうでもいい話をしながら歩いていると。
「あらトモじゃない!」
女性に声をかけられ、立ち止まった。
ゴージャスな髪型で、洋服もぴったりとしたもので身体のラインがしっかりわかるものだ。夜の歓楽街で働いているのかと言った風貌の美人な女性だ。少し気が強そうなイメージがあった。
(気が強そう……もしかして、恋人……?)
「久しぶり。一人? ねえ、あたしトモにかまってもらえてないから最近寂しいなあって思ってたの。ねっ、今夜どう?」
「……いや」
トモはなんだか気まずそうだ。ちらりと背後にいる聡子を気にしている。
「今日は連れがいるから。悪いな」
「え?」
きらびやかな女性は、トモの斜め後ろにちょこんといる聡子に目をやると驚いた。
「うそ! 随分地味な子ね!? 気づかなかった。どこの店の子!? こんな子見たことなわね」
「……まあ、そういうわけだから」
「えーっ、たまには構ってよお」
「そう言われてもな……」
「今日がだめなら明日でもいいじゃない」
女性の甘えた声に、トモは明らかに困惑している。
「あたし、絶対その子より上手よ? トモは大きい胸が好きでしょ。ほら」
女性はトモの手を取り、自分の胸に押し付けた。
「ひゃっ」
トモではなく、聡子が小さく悲鳴をあげてしまう。
「やめろ」
「ねーえ、トモのいい所全部知ってるし、満足させてあげられるわよ? トモだって、あたしのいい所知ってるでしょ? ねっ」
女はトモにしなだれかかる。
(うわー……大人って……)
「……悪い、また今度な」
「今度っていつよ」
「今度は今度だ」
トモはばつが悪そうにし、聡子を促してその場から立ち去った。聡子はぺこりと頭を下げて、トモの後ろを慌てて付いて行った。
「駅まで送る」
トモはそう言った。遠慮をしたが、
「こんな遅くに女一人で歩かせられるわけないだろ」
こう言われては甘えるしかなかった。
(前は『ガキが一人で』と言われたが、今日は『ガキ』とは言われなかったな)
二年前は「ガキ」と何度も言われていた。
(もう、ガキじゃないって思ってくれてる……?)
途中、ラブホ街を通りすぎて行く。
昼間はわからないが、夜ともなるとイルミネーションのように明るい。そして時間的に、どこも賑わっているようだ。なぜ賑わっているのか、それは考えないことにした。
(まさか……)
思わず身体を強ばらせる。
その様子を見たトモが、
「あん? なんだ、興味あんのか」
ニヤニヤと笑った。
「ちがっ……」
「興味あんなら入ってみるか?」
「違いますって! そんなの、ありません! そういうことは、好きな人とじゃないと! てか結婚前の男女がそんなことしてはいけませんし!」」
聡子は顔を真っ赤にして否定する。
「昭和かよ」
トモは笑う。
「だいたいなあ、俺は入ってみるかって言っただけだろ? 二十歳の記念にでも見てみるかって。別におまえとヤろうなんて言ってないぞ? そんなビビんなくても、とって食ったりしねえし。てか、まさかまだ男知らねえとか? 最近の高校生でも進んでんだろうに。友達においてかれてんじゃないのか? 結婚前の男女がーなんて今時ないぞ?」
「……ほっといて下さいっ」
自分で墓穴を掘ってしまったことに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。
男女が人目をはばかることなく、ホテルに入って行くのを見て、聡子はドキドキしてしまう。
「……おまえ、ほんとに男いねえのか?」
「いませんよ」
「気が強いからか?」
「知りませんよそんなこと」
悪かったですね、と口を尖らせる。
また揶揄われているのだと思うが、ついムキになってしまう。そしてまた「気が強い」と言われてしまうのだろう。
「おまえさ、黙ってれば可愛いのにな」
「か、可愛い……?」
聡子はふいにそんなことを言われ、顔を赤らめた。
「そんなこと言われたことないです。トモさんだけですよ、そんなこと言うの。それに、第一お世辞とはわかってますし」
「前も言ってたな。そんなわけねえだろ」
トモは鼻で笑う。
(なんでそんなこと言うのかな……)
どうでもいい話をしながら歩いていると。
「あらトモじゃない!」
女性に声をかけられ、立ち止まった。
ゴージャスな髪型で、洋服もぴったりとしたもので身体のラインがしっかりわかるものだ。夜の歓楽街で働いているのかと言った風貌の美人な女性だ。少し気が強そうなイメージがあった。
(気が強そう……もしかして、恋人……?)
「久しぶり。一人? ねえ、あたしトモにかまってもらえてないから最近寂しいなあって思ってたの。ねっ、今夜どう?」
「……いや」
トモはなんだか気まずそうだ。ちらりと背後にいる聡子を気にしている。
「今日は連れがいるから。悪いな」
「え?」
きらびやかな女性は、トモの斜め後ろにちょこんといる聡子に目をやると驚いた。
「うそ! 随分地味な子ね!? 気づかなかった。どこの店の子!? こんな子見たことなわね」
「……まあ、そういうわけだから」
「えーっ、たまには構ってよお」
「そう言われてもな……」
「今日がだめなら明日でもいいじゃない」
女性の甘えた声に、トモは明らかに困惑している。
「あたし、絶対その子より上手よ? トモは大きい胸が好きでしょ。ほら」
女性はトモの手を取り、自分の胸に押し付けた。
「ひゃっ」
トモではなく、聡子が小さく悲鳴をあげてしまう。
「やめろ」
「ねーえ、トモのいい所全部知ってるし、満足させてあげられるわよ? トモだって、あたしのいい所知ってるでしょ? ねっ」
女はトモにしなだれかかる。
(うわー……大人って……)
「……悪い、また今度な」
「今度っていつよ」
「今度は今度だ」
トモはばつが悪そうにし、聡子を促してその場から立ち去った。聡子はぺこりと頭を下げて、トモの後ろを慌てて付いて行った。
1
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる