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【第2部】16.更新
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三ヶ月を過ぎた。
お試し期間は終わった。
お試しじゃなく、ちゃんと向き合って付き合いたい、そう聡子に伝えた。彼女も、
「本当にわたしでいいんですか。あとで後悔してもしりませんよ」
としつこいほど念を押してきた。無理もない、今まで誰にも本気にならなかった自分を信用してくれと言っているようなものなのだから。
「聡子がいい」
「……よろしくお願いします」
その後にした久しぶりのセックスは最高だった。惚れた女とするセックスがこんなに幸せなものだとは思わなかった。
聡子の部屋で、半ば強引に彼女を抱いた。
「三ヶ月過ぎた……から、いいよな?」
キスはいつも以上に丁寧に、官能的に、味わうように貪った。キスだけで彼女は蕩けた顔になっている。自分もきっとそうだったに違いない。彼女は全部受け入れてくれた。
狭いベッドをギシギシと鳴らし、腰を振った。久しぶりに使う腰は勝手に動き、止まらない。聡子は声を上げようとして、必死に抑えていた。
「なんで我慢するんだよ」
「……近所に……聞こえちゃうので……」
タオルを手にすると噛み、喘ぐのを抑えていた。
アパートの壁が薄いらしい。
誰と寝ても気にしたことなどなかった。
気にしなくていいなら、もっと声を上げさせるのに。
「可愛いな……」
「……っ……っ……」
彼女を抱くのはどれくらいぶりくらいだろうか。
彼女への気持ちを自覚してからは、初めてだ。
まるで思春期の男子のようだ。聡子のことを考えなかった日はない。好きだからしたい、その気持ちがようやくわかった気がした。
汗だくで絡み合った。
これまでの我慢を爆発させたかのように、トモは激しく彼女を貫いた。
「やばい、すぐイキそ……」
こくこく、と彼女は頷いた。一回目は申し訳ないくらい早く果ててしまい、もう一度してもいいかとお伺いを立ててしまった。もちろん彼女は頷いてくれた。
「ヤバいくらい……よかった……」
「……はい……」
外は寒いはずだが、二人の汗は止まらない。
狭いベッドに転がったまま、トモはぎゅっと聡子を抱きしめた。聡子もトモの胸に頭を預ける。
息が落ち着いても、二人は抱き合ったままだった。
「聡子」
「……はい」
顔を上げた聡子の唇にキスを落とした。
火照った顔が更に赤くなる。
「可愛いな」
「……もう」
頬を膨らませる聡子が、より可愛らしかった。
「こういう時に言うなんてズルいですよね」
「そうか?」
「そうですよ」
手を伸ばしてトモの頬を抓る聡子だ。
「いてて」
「抓ってやるんですからね」
「もう抓ってるだろ」
「もっと抓りますよ」
「いてて……。じゃあ俺も抓ってやる」
そう言ってトモは、聡子の胸の尖端を抓った。
「……んっ」
色気のある声に、トモはぴくりとした。
「煽るなよ」
ニヤニヤと笑えば、聡子はまた頬を膨らませた。そしトモは抓った胸を掴む。柔らかくて、彼女の胸はお気に入りだ。
「んもう……」
聡子はくるりと背を向けた。
「怒ったか?」
「怒ってません」
トモは聡子を包み込む。
彼女は怒ってはいないし、嫌がってはいないはずだ。照れているのだろう。
そう思うことにした。
「……聡子は温かいな」
「……智幸さんも、温かいですよ」
(やっぱ、怒ってないな)
トモは彼女を背中から抱きしめる力を加えた。
「智幸さん」
「ん?」
「わたしの呼び方、変わりましたね」
「そうか?」
「はい」
聡子の腹に手を置き、すりすりと撫でた。その手に、聡子の手が重なる。
「会ったばかりの頃は『嬢ちゃん』とか『あんた』でしたけど、それが『おまえ』になったのに、最近は『おまえ』って言われなくなりました」
確かに意図的に呼称は変えた。聡子は気付いていたようだ。付き合いだしてからは『おまえ』と言わないように意識していた。これはカズからのアドバイスだった。
「彼女を『おまえ』呼びしないほうがいいですよ」
「なんでだよ」
「不快に思う女の子は少なくないみたいですよ。下に見てるんだって思う人もいるみたいです。特に気の強い女の子は注意ですよ」
「そうなのか。俺はずっと『おまえ』って呼んでたな……」
「ちなみに『おまえ』って呼ぶのは、独占欲の表れだそうですよ。トモさんは、無意識のうちに彼女さんをずっと独占したかったんですかねえ」
「…………」
カズはにやにやと笑っていた。
指摘された時のことを思い出し、彼女に話した。
「言葉遣いが悪いってカズに指摘されたからな。気をつけようと思ったんだ」
「カズさん……ああ、あの方ですね。そうなんですか?」
独占欲の話は口にしないでおいた。知らず知らずのうちに、彼女を独占したかった心理の話は知られたくない。……聡子にひどいことをした時期のことであるし。
「わたしは智幸さんに『おまえ』って言われても、嫌じゃないですよ。なんか、独り占めされてるみたいで嬉しいです」
ドキリ、とした。
考えていることがバレているのかと思ってしまった。
「そ、そうか。もし『おまえ』って言っても、許してくれな」
「大丈夫ですよ」
ふふっ、と聡子は笑った。
──まったりしている場合ではなかった。
「やべえ、このままじゃ風邪ひく。汗ふかないと」
トモは身体を起こし、聡子の手を引いた。
「あ、智幸さん、じゃあ、シャワー浴びてください。トイレの前がお風呂場ですから」
「おう。……てか、一緒に浴びるか」
「えっ」
「なんだよ」
「だって……」
「恥ずかしいのか?」
なぜか聡子は躊躇いを見せた。
「隅々まで全部見てるのに何を恥ずかしがることがあるんだよ」
「……それとこれとは……」
「別に風呂場で襲ったりしねえよ、もう今日は」
「もう、今日はって……」
「したいのか?」
「しませんっ!」
さあシャワー浴びよう、とトモは聡子の手を引いてベッドから降りた。
確かに、初めて一緒に浴室に入ることに気付く。
付き合ってから初めてのことが多く、一つ一つが嬉しく思えた。
「俺が洗ってやるから」
「いいですいいですっ」
これがイチャイチャってやつだな、とトモはまた一つ彼女と過ごす楽しさを知った。
お試し期間は終わった。
お試しじゃなく、ちゃんと向き合って付き合いたい、そう聡子に伝えた。彼女も、
「本当にわたしでいいんですか。あとで後悔してもしりませんよ」
としつこいほど念を押してきた。無理もない、今まで誰にも本気にならなかった自分を信用してくれと言っているようなものなのだから。
「聡子がいい」
「……よろしくお願いします」
その後にした久しぶりのセックスは最高だった。惚れた女とするセックスがこんなに幸せなものだとは思わなかった。
聡子の部屋で、半ば強引に彼女を抱いた。
「三ヶ月過ぎた……から、いいよな?」
キスはいつも以上に丁寧に、官能的に、味わうように貪った。キスだけで彼女は蕩けた顔になっている。自分もきっとそうだったに違いない。彼女は全部受け入れてくれた。
狭いベッドをギシギシと鳴らし、腰を振った。久しぶりに使う腰は勝手に動き、止まらない。聡子は声を上げようとして、必死に抑えていた。
「なんで我慢するんだよ」
「……近所に……聞こえちゃうので……」
タオルを手にすると噛み、喘ぐのを抑えていた。
アパートの壁が薄いらしい。
誰と寝ても気にしたことなどなかった。
気にしなくていいなら、もっと声を上げさせるのに。
「可愛いな……」
「……っ……っ……」
彼女を抱くのはどれくらいぶりくらいだろうか。
彼女への気持ちを自覚してからは、初めてだ。
まるで思春期の男子のようだ。聡子のことを考えなかった日はない。好きだからしたい、その気持ちがようやくわかった気がした。
汗だくで絡み合った。
これまでの我慢を爆発させたかのように、トモは激しく彼女を貫いた。
「やばい、すぐイキそ……」
こくこく、と彼女は頷いた。一回目は申し訳ないくらい早く果ててしまい、もう一度してもいいかとお伺いを立ててしまった。もちろん彼女は頷いてくれた。
「ヤバいくらい……よかった……」
「……はい……」
外は寒いはずだが、二人の汗は止まらない。
狭いベッドに転がったまま、トモはぎゅっと聡子を抱きしめた。聡子もトモの胸に頭を預ける。
息が落ち着いても、二人は抱き合ったままだった。
「聡子」
「……はい」
顔を上げた聡子の唇にキスを落とした。
火照った顔が更に赤くなる。
「可愛いな」
「……もう」
頬を膨らませる聡子が、より可愛らしかった。
「こういう時に言うなんてズルいですよね」
「そうか?」
「そうですよ」
手を伸ばしてトモの頬を抓る聡子だ。
「いてて」
「抓ってやるんですからね」
「もう抓ってるだろ」
「もっと抓りますよ」
「いてて……。じゃあ俺も抓ってやる」
そう言ってトモは、聡子の胸の尖端を抓った。
「……んっ」
色気のある声に、トモはぴくりとした。
「煽るなよ」
ニヤニヤと笑えば、聡子はまた頬を膨らませた。そしトモは抓った胸を掴む。柔らかくて、彼女の胸はお気に入りだ。
「んもう……」
聡子はくるりと背を向けた。
「怒ったか?」
「怒ってません」
トモは聡子を包み込む。
彼女は怒ってはいないし、嫌がってはいないはずだ。照れているのだろう。
そう思うことにした。
「……聡子は温かいな」
「……智幸さんも、温かいですよ」
(やっぱ、怒ってないな)
トモは彼女を背中から抱きしめる力を加えた。
「智幸さん」
「ん?」
「わたしの呼び方、変わりましたね」
「そうか?」
「はい」
聡子の腹に手を置き、すりすりと撫でた。その手に、聡子の手が重なる。
「会ったばかりの頃は『嬢ちゃん』とか『あんた』でしたけど、それが『おまえ』になったのに、最近は『おまえ』って言われなくなりました」
確かに意図的に呼称は変えた。聡子は気付いていたようだ。付き合いだしてからは『おまえ』と言わないように意識していた。これはカズからのアドバイスだった。
「彼女を『おまえ』呼びしないほうがいいですよ」
「なんでだよ」
「不快に思う女の子は少なくないみたいですよ。下に見てるんだって思う人もいるみたいです。特に気の強い女の子は注意ですよ」
「そうなのか。俺はずっと『おまえ』って呼んでたな……」
「ちなみに『おまえ』って呼ぶのは、独占欲の表れだそうですよ。トモさんは、無意識のうちに彼女さんをずっと独占したかったんですかねえ」
「…………」
カズはにやにやと笑っていた。
指摘された時のことを思い出し、彼女に話した。
「言葉遣いが悪いってカズに指摘されたからな。気をつけようと思ったんだ」
「カズさん……ああ、あの方ですね。そうなんですか?」
独占欲の話は口にしないでおいた。知らず知らずのうちに、彼女を独占したかった心理の話は知られたくない。……聡子にひどいことをした時期のことであるし。
「わたしは智幸さんに『おまえ』って言われても、嫌じゃないですよ。なんか、独り占めされてるみたいで嬉しいです」
ドキリ、とした。
考えていることがバレているのかと思ってしまった。
「そ、そうか。もし『おまえ』って言っても、許してくれな」
「大丈夫ですよ」
ふふっ、と聡子は笑った。
──まったりしている場合ではなかった。
「やべえ、このままじゃ風邪ひく。汗ふかないと」
トモは身体を起こし、聡子の手を引いた。
「あ、智幸さん、じゃあ、シャワー浴びてください。トイレの前がお風呂場ですから」
「おう。……てか、一緒に浴びるか」
「えっ」
「なんだよ」
「だって……」
「恥ずかしいのか?」
なぜか聡子は躊躇いを見せた。
「隅々まで全部見てるのに何を恥ずかしがることがあるんだよ」
「……それとこれとは……」
「別に風呂場で襲ったりしねえよ、もう今日は」
「もう、今日はって……」
「したいのか?」
「しませんっ!」
さあシャワー浴びよう、とトモは聡子の手を引いてベッドから降りた。
確かに、初めて一緒に浴室に入ることに気付く。
付き合ってから初めてのことが多く、一つ一つが嬉しく思えた。
「俺が洗ってやるから」
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