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【第2部】21.嵐の前
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「トモがフルで働きたいってものも驚いたけどさ、正社員になりたいって言った時は結構驚いたな」
オーナー兼店長の沢村は言った。
トモは、幼い頃からの家庭環境の影響で料理をするのが好きで、今は解体したが組の若の勧めで、この店でアルバイトを始めた。
組が解体され、会長の勧めもあり、働くことを続け、正社員になりたいと希望して今に至るのだ。
「世話になって、めちゃくちゃ感謝してます」
「トモをこんなふうにした彼女とはうまく行ってんのか」
「ええ、まあ」
実は沢村も昔は組員だったらしいが、その面影は全くない。昔のことは知らないが、すんなり抜けられたのだろうかと不思議に思う。トモよりは十五程上だと聞いたことがあったが、ここまで店を軌道にのせるまでは並々ならぬ苦労があっただろうと、一般社会の常識に乏しいトモですら思った。
その沢村は、年の開いた弟であるかのようにトモを可愛がってくれている。
「写真とかないの」
「……ない、ですね」
トモは口ごもった。
「その妙な間からすると、ありそうだな」
「まともなものがないです」
「どういう意味だ?」
あるなら見せろ、と沢村はトモに詰め寄った。
観念してトモは聡子の写真を見せる。
しかしその写真は、事後に眠ってしまった聡子の寝顔だった。
「非公式ですよ。彼女に見つかったらヤバイです」
「おいおい、こんな写真撮っていいのかよ」
「自分が楽しむだけのものなんで」
「ツーショとかないの」
「ないですね」
寝顔じゃよくわかんねえな、と沢村は苦笑した。
二人で出かけたこともないし、先日はドタキャンで泣かれてしまっている。トモは全部は話していないが、聡子が悲しそうだった話は沢村にしていた。
「せっかくのデートを潰したのは俺だからな、すまん」
「いえ、大丈夫ですよ、なんだかんだ言って、あいつは理解してくれたし、誰も責めなかったんですから。すごいよく出来た女です」
「おー、当てられるわ、熱い熱い」
沢村は冷やかした。
「お! そうだ、トモ。俺いいこと考えた」
「はい?」
沢村の楽しそうな顔に、首を傾げた。
オーナー兼店長の沢村は言った。
トモは、幼い頃からの家庭環境の影響で料理をするのが好きで、今は解体したが組の若の勧めで、この店でアルバイトを始めた。
組が解体され、会長の勧めもあり、働くことを続け、正社員になりたいと希望して今に至るのだ。
「世話になって、めちゃくちゃ感謝してます」
「トモをこんなふうにした彼女とはうまく行ってんのか」
「ええ、まあ」
実は沢村も昔は組員だったらしいが、その面影は全くない。昔のことは知らないが、すんなり抜けられたのだろうかと不思議に思う。トモよりは十五程上だと聞いたことがあったが、ここまで店を軌道にのせるまでは並々ならぬ苦労があっただろうと、一般社会の常識に乏しいトモですら思った。
その沢村は、年の開いた弟であるかのようにトモを可愛がってくれている。
「写真とかないの」
「……ない、ですね」
トモは口ごもった。
「その妙な間からすると、ありそうだな」
「まともなものがないです」
「どういう意味だ?」
あるなら見せろ、と沢村はトモに詰め寄った。
観念してトモは聡子の写真を見せる。
しかしその写真は、事後に眠ってしまった聡子の寝顔だった。
「非公式ですよ。彼女に見つかったらヤバイです」
「おいおい、こんな写真撮っていいのかよ」
「自分が楽しむだけのものなんで」
「ツーショとかないの」
「ないですね」
寝顔じゃよくわかんねえな、と沢村は苦笑した。
二人で出かけたこともないし、先日はドタキャンで泣かれてしまっている。トモは全部は話していないが、聡子が悲しそうだった話は沢村にしていた。
「せっかくのデートを潰したのは俺だからな、すまん」
「いえ、大丈夫ですよ、なんだかんだ言って、あいつは理解してくれたし、誰も責めなかったんですから。すごいよく出来た女です」
「おー、当てられるわ、熱い熱い」
沢村は冷やかした。
「お! そうだ、トモ。俺いいこと考えた」
「はい?」
沢村の楽しそうな顔に、首を傾げた。
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