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【第4部】浩輔編
14.交換
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約束を反故にしようかとも思ったが、浩輔は次の週の土曜日、パン屋に赴いた。
指定の昼休みよりは遅れてしまったが、舞衣はきっといるだろう。
足取り軽く、パン屋に向かった。
「いらっしゃいませ……あっ……」
レジにいた舞衣が浩輔を見つけると、小さく笑った。
片手を軽く挙げ、挨拶を交わした。
今日もメロンパンがあったので、それを三つ買い、カツサンドも見つけて購入した。
他にも客がいたので、その客達が会計を済ませた後に並ぶことにした。
「いらっしゃいませ」
「よぅ……」
格好つけた挨拶をする。
「メロンパン、好き?」
「そういうわけじゃないけど……この前、美味かったから。三つは買いすぎか?」
「ううん。そんなことないよ。ちょっと待ってね」
舞衣はレジを離れ、店の奥に行ってすぐに戻ってきた。
「よかったら、このメロンパン、食べて。今日までのなんだけど。並べてもよかったんだけど、ちょっと欠けてるから下げたんだ」
「いいのか?」
「うん、いいよ。食べてもらえるなら」
舞衣に会計をしてもらい、今日は紙袋ではなく、白いビニール袋に入れてくれた。
「あ、買い物袋忘れた」
「今日はいいよ、こっちに入れとくね」
「ありがとう」
ショッピングバックやエコバッグを持って来ないと、と思うのに、今日はうっかりしてしまった。
(浮かれてたか……)
舞衣に会うことが少し、少しだけ、楽しみにしていた。
そのせいだろうと思うことにした。
「じゃ、また」
「ありがとうございま……あっ、待って三原君」
「え?」
そのまま帰ろうとして、舞衣に呼び止められた。
「連絡先……交換、してない……」
「ああ……」
忘れてなかったか、と元の位置に戻った。
ポケットからスマホを取り出すと、舞衣もレジの下から荷物を出し、スマホを用意した。
浩輔は観念し、連絡先を交換することにした。
「これ、読み取って」
QRコードを出すと、舞衣がそれを読み取った。
お互いのIDを交換すると、舞衣が一つスタンプを送って来た、
「……もう、削除したりは、ないよね?」
「今のところ、ない」
「わかった」
「ん」
舞衣の言葉に、素直に頷いた。
ただ連絡先を交換するだけだし、何も問題はない。
「連絡、してもいいかな」
「そのつもりで交換したんだろ」
「そ、そうだよね。うん、じゃあ連絡する」
「あんまりしつこい連絡だとブロックするけどな」
「そんな、しないよ! そんなこと……」
「冗談だよ」
舞衣の慌てっぷりが面白くて、つい揶揄ってしまった。
「冗談……あは、冗談、そっか」
焦る舞衣の姿が面白く思えたのだ。
「舞衣がいい時にでも飯食いに行こうぜ」
「え……」
「嫌ならいいけど」
「行く! 絶対行く!」
「今は就活とか試験があるだろうけど、落ち着いたら飯でもな」
「……うん」
幼さの残る舞衣に対し、優しい眼差しを送った。
(妹がいたらこんな感じなのかな)
昔は好きだった彼女に対し、恋愛というより愛情を感じていた。
「じゃ、俺行くわ、腹減ってるから」
「うん、また来てね」
「じゃあな」
「ありがとうございました!」
浩輔の入れ替わりに、別の客が店内に入っていった。
指定の昼休みよりは遅れてしまったが、舞衣はきっといるだろう。
足取り軽く、パン屋に向かった。
「いらっしゃいませ……あっ……」
レジにいた舞衣が浩輔を見つけると、小さく笑った。
片手を軽く挙げ、挨拶を交わした。
今日もメロンパンがあったので、それを三つ買い、カツサンドも見つけて購入した。
他にも客がいたので、その客達が会計を済ませた後に並ぶことにした。
「いらっしゃいませ」
「よぅ……」
格好つけた挨拶をする。
「メロンパン、好き?」
「そういうわけじゃないけど……この前、美味かったから。三つは買いすぎか?」
「ううん。そんなことないよ。ちょっと待ってね」
舞衣はレジを離れ、店の奥に行ってすぐに戻ってきた。
「よかったら、このメロンパン、食べて。今日までのなんだけど。並べてもよかったんだけど、ちょっと欠けてるから下げたんだ」
「いいのか?」
「うん、いいよ。食べてもらえるなら」
舞衣に会計をしてもらい、今日は紙袋ではなく、白いビニール袋に入れてくれた。
「あ、買い物袋忘れた」
「今日はいいよ、こっちに入れとくね」
「ありがとう」
ショッピングバックやエコバッグを持って来ないと、と思うのに、今日はうっかりしてしまった。
(浮かれてたか……)
舞衣に会うことが少し、少しだけ、楽しみにしていた。
そのせいだろうと思うことにした。
「じゃ、また」
「ありがとうございま……あっ、待って三原君」
「え?」
そのまま帰ろうとして、舞衣に呼び止められた。
「連絡先……交換、してない……」
「ああ……」
忘れてなかったか、と元の位置に戻った。
ポケットからスマホを取り出すと、舞衣もレジの下から荷物を出し、スマホを用意した。
浩輔は観念し、連絡先を交換することにした。
「これ、読み取って」
QRコードを出すと、舞衣がそれを読み取った。
お互いのIDを交換すると、舞衣が一つスタンプを送って来た、
「……もう、削除したりは、ないよね?」
「今のところ、ない」
「わかった」
「ん」
舞衣の言葉に、素直に頷いた。
ただ連絡先を交換するだけだし、何も問題はない。
「連絡、してもいいかな」
「そのつもりで交換したんだろ」
「そ、そうだよね。うん、じゃあ連絡する」
「あんまりしつこい連絡だとブロックするけどな」
「そんな、しないよ! そんなこと……」
「冗談だよ」
舞衣の慌てっぷりが面白くて、つい揶揄ってしまった。
「冗談……あは、冗談、そっか」
焦る舞衣の姿が面白く思えたのだ。
「舞衣がいい時にでも飯食いに行こうぜ」
「え……」
「嫌ならいいけど」
「行く! 絶対行く!」
「今は就活とか試験があるだろうけど、落ち着いたら飯でもな」
「……うん」
幼さの残る舞衣に対し、優しい眼差しを送った。
(妹がいたらこんな感じなのかな)
昔は好きだった彼女に対し、恋愛というより愛情を感じていた。
「じゃ、俺行くわ、腹減ってるから」
「うん、また来てね」
「じゃあな」
「ありがとうございました!」
浩輔の入れ替わりに、別の客が店内に入っていった。
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