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【第4部】浩輔編
15.嫉妬の矛先
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七月に入り、浩輔は見習社員から正社員に昇格した。
特に待遇が厚くなったわけではないが、バイト扱いだったのが正社員になった。前職ほどではないが、元々待遇はいい職場だ。
相変わらずプライベートは堕落している。
最近はマユカの誘いはないが、今日はミサに誘われ、彼女の部屋とやってきた。
店に行ってもマユカの姿はないのだ。
(どうしたんだろ、体調悪いのかな)
裕美ママの店の、ユリという女性が入院していたように、マユカも出られない理由があるのかもしれない。しかし心配は人並みにするだけで、あまり真剣に心配はしない浩輔だった。ミサの身体だけで欲を満たすしかないかな、と勝手なことを考えていた。
「いらっしゃい。上がって」
「うん、お邪魔します」
そう言われ、いつものようにキラキラしたミサの部屋に上がり込む。
上がり込むなり、彼女に抱きつかれた。
「わっ……」
「早くしたくて」
唇を押しつけながら、浩輔のシャツの上から二つの先端の実をまさぐった。
薄着になった今は、シャツ一枚を脱げばすぐ裸体になれる。
「ミ、ミサさん……」
ふと、何か違和感があった。
(……?)
なんだろう、と思うが、確定できるものがない。何に違和感を抱いたのか、はっきりとはわからない。
ミサが急かすように浩輔のチノパンを脱がせ、下着をずらした。
飛び出した浩輔のものを手で握り、咥える姿は淫乱そのものだ。
「どうしたの、なんでそんなに慌ててるの」
「んん……っ……んぐ……」
欲しかったのだろうか。
無心で咥えるミサの髪をそっと撫でてやる。時折上目遣いで浩輔を見遣り、嬉しそうに微笑んだ。
「巧すぎ……」
ミサに初めてしてもらった時は、あまりの快感に気を失いそうになったものだ。
「ミサさん、いいよ、もう。俺もミサさんを良くしてあげたいから」
ね、と優しく言い、ミサの口からそれを離すと立ち上がらせた。
「可愛い、ミサさん」
首に腕を回し、またキスをしてきた。
「今日、なんか甘えんぼさんみたいだな」
「そんなことない」
そう言いながらミサは着ているものを脱ぎ捨てた。
「いつ見てもミサさんの身体、キレイだよね」
「早く……」
「うん」
浩輔は、ミサの身体を貪った。
ミサも、浩輔の身体をいつも以上に求めてきた。
(なんだろうな……今日のセックス、良かったけど、何か違和感……)
ミサがシャワーを浴びている間に、浩輔は服を着た。
先にシャワーを借りたので、寛がせてもらっている。
(なんでこんなこと思うんだろう……)
スマホをチェックしていると、ミサがシャワーを浴び終え、薄着で戻ってきた。
「もう帰る?」
「うん、ミサさんが戻ってきてから帰ろうと思って待ってた」
いつも、情事が終われば帰宅をする浩輔だ。
泊まることはない。
「待たせてごめんね」
「そんなことないよ。ミサさんの部屋、居心地いいし」
ただセックスするだけだけど、とは言わなかった。
リラックスできるのは事実だ。
帰ろうかな、と腰掛けていたベッドから立ち上がると、ミサが前に立った。
「?」
帰りのキスかな、と思って彼女を見下ろすと、ミサのほうからキスをしてきた。いつもはミサがせがんで浩輔がするのだが。
(……まただ)
今度は身体がぞわりとする、そんな違和感があった。
「三原君」
「ん?」
「マユカとはいつから?」
「え」
突然の切り出しに浩輔は目を見開いた。
「マユカともしてるでしょ?」
「……え……」
「マユカのほうがいい?」
「……ごめん」
何も言えず、ただ謝罪の言葉しか出てこなかった。
「気づいてないと思った?」
「…………」
「別に悪いとは言わないよ。三原君が誰と寝ようと、構わないんだから。でも……わたしの知ってる人は嫌だって言ったのにな」
本当にごめん、と浩輔はもう一度言った。
「ミサさん、嫉妬してる?」
「そんなのじゃない」
ミサの顔は怒っていた。甘えるような、可愛らしいものではなかった。
茶化してる場合じゃない、と直感で思った。
「約束破って、ごめん」
「いいよ、もう。じゃあ、これで最後にしよっか」
「えっ!」
ミサの言葉に浩輔は動揺した。
「ごめん、マユカさんとはもうしないから。ミサさんだけにするから」
「他の人は?」
「してない、他にはしてない」
「そう」
「もう……マユカさんとしないし、ほんとに、他にはしてないから」
「ふうん……」
なんだかぞわりとする。
逃げたいけど逃げられないような、しかしミサとはつながっていたい、心と身体が混乱している。
「マユカとしてないんだ」
「……うん。最近は店でも会ってないし、誘われてない」
「……そう」
ミサはにやりと笑った気がしたが、気のせいだろうか。
(なんだろう、今日のミサさん、ちょっと怖い気がする……)
「じゃあ、マユカとは会わないでね。わたしからのお願い」
ミサは浩輔の身体にしなだれかかってきた。
「う、うん」
「まあ、あの子ももう三原君と会うことはないと思うけど」
「え? どういう……」
「じゃあ、わたしの所に来てね。来れる時でいいから、さ」
わかった、と頷いた。
じゃあ、と軽く挨拶をしてミサの部屋を出た。
特に待遇が厚くなったわけではないが、バイト扱いだったのが正社員になった。前職ほどではないが、元々待遇はいい職場だ。
相変わらずプライベートは堕落している。
最近はマユカの誘いはないが、今日はミサに誘われ、彼女の部屋とやってきた。
店に行ってもマユカの姿はないのだ。
(どうしたんだろ、体調悪いのかな)
裕美ママの店の、ユリという女性が入院していたように、マユカも出られない理由があるのかもしれない。しかし心配は人並みにするだけで、あまり真剣に心配はしない浩輔だった。ミサの身体だけで欲を満たすしかないかな、と勝手なことを考えていた。
「いらっしゃい。上がって」
「うん、お邪魔します」
そう言われ、いつものようにキラキラしたミサの部屋に上がり込む。
上がり込むなり、彼女に抱きつかれた。
「わっ……」
「早くしたくて」
唇を押しつけながら、浩輔のシャツの上から二つの先端の実をまさぐった。
薄着になった今は、シャツ一枚を脱げばすぐ裸体になれる。
「ミ、ミサさん……」
ふと、何か違和感があった。
(……?)
なんだろう、と思うが、確定できるものがない。何に違和感を抱いたのか、はっきりとはわからない。
ミサが急かすように浩輔のチノパンを脱がせ、下着をずらした。
飛び出した浩輔のものを手で握り、咥える姿は淫乱そのものだ。
「どうしたの、なんでそんなに慌ててるの」
「んん……っ……んぐ……」
欲しかったのだろうか。
無心で咥えるミサの髪をそっと撫でてやる。時折上目遣いで浩輔を見遣り、嬉しそうに微笑んだ。
「巧すぎ……」
ミサに初めてしてもらった時は、あまりの快感に気を失いそうになったものだ。
「ミサさん、いいよ、もう。俺もミサさんを良くしてあげたいから」
ね、と優しく言い、ミサの口からそれを離すと立ち上がらせた。
「可愛い、ミサさん」
首に腕を回し、またキスをしてきた。
「今日、なんか甘えんぼさんみたいだな」
「そんなことない」
そう言いながらミサは着ているものを脱ぎ捨てた。
「いつ見てもミサさんの身体、キレイだよね」
「早く……」
「うん」
浩輔は、ミサの身体を貪った。
ミサも、浩輔の身体をいつも以上に求めてきた。
(なんだろうな……今日のセックス、良かったけど、何か違和感……)
ミサがシャワーを浴びている間に、浩輔は服を着た。
先にシャワーを借りたので、寛がせてもらっている。
(なんでこんなこと思うんだろう……)
スマホをチェックしていると、ミサがシャワーを浴び終え、薄着で戻ってきた。
「もう帰る?」
「うん、ミサさんが戻ってきてから帰ろうと思って待ってた」
いつも、情事が終われば帰宅をする浩輔だ。
泊まることはない。
「待たせてごめんね」
「そんなことないよ。ミサさんの部屋、居心地いいし」
ただセックスするだけだけど、とは言わなかった。
リラックスできるのは事実だ。
帰ろうかな、と腰掛けていたベッドから立ち上がると、ミサが前に立った。
「?」
帰りのキスかな、と思って彼女を見下ろすと、ミサのほうからキスをしてきた。いつもはミサがせがんで浩輔がするのだが。
(……まただ)
今度は身体がぞわりとする、そんな違和感があった。
「三原君」
「ん?」
「マユカとはいつから?」
「え」
突然の切り出しに浩輔は目を見開いた。
「マユカともしてるでしょ?」
「……え……」
「マユカのほうがいい?」
「……ごめん」
何も言えず、ただ謝罪の言葉しか出てこなかった。
「気づいてないと思った?」
「…………」
「別に悪いとは言わないよ。三原君が誰と寝ようと、構わないんだから。でも……わたしの知ってる人は嫌だって言ったのにな」
本当にごめん、と浩輔はもう一度言った。
「ミサさん、嫉妬してる?」
「そんなのじゃない」
ミサの顔は怒っていた。甘えるような、可愛らしいものではなかった。
茶化してる場合じゃない、と直感で思った。
「約束破って、ごめん」
「いいよ、もう。じゃあ、これで最後にしよっか」
「えっ!」
ミサの言葉に浩輔は動揺した。
「ごめん、マユカさんとはもうしないから。ミサさんだけにするから」
「他の人は?」
「してない、他にはしてない」
「そう」
「もう……マユカさんとしないし、ほんとに、他にはしてないから」
「ふうん……」
なんだかぞわりとする。
逃げたいけど逃げられないような、しかしミサとはつながっていたい、心と身体が混乱している。
「マユカとしてないんだ」
「……うん。最近は店でも会ってないし、誘われてない」
「……そう」
ミサはにやりと笑った気がしたが、気のせいだろうか。
(なんだろう、今日のミサさん、ちょっと怖い気がする……)
「じゃあ、マユカとは会わないでね。わたしからのお願い」
ミサは浩輔の身体にしなだれかかってきた。
「う、うん」
「まあ、あの子ももう三原君と会うことはないと思うけど」
「え? どういう……」
「じゃあ、わたしの所に来てね。来れる時でいいから、さ」
わかった、と頷いた。
じゃあ、と軽く挨拶をしてミサの部屋を出た。
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