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28.父親(後編)
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「妥協したって言うけど、妥協したのは俺のほうだったなあって」
「それを父さんは黙ってたんだ」
「まあ、何も言わないでいるよ」
「よく我慢してるね」
寡黙な父親だが、ギャンギャンうるさい母親によく耐えているものだ。
「うん、別に我慢してるわけじゃないけどな。一番好きな人じゃなくて、二番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれる、っていう話もあったし。そうれこうやって今までやってきたわけだし」
「いやいや、どこの説よ」
「都市伝説だろうけど、俺の時代にはそんなこと言うやつらもいたわけよ」
「幸せかどうか、死ぬまでわからんだろうにな」
そういうことだよなあ、と父親は笑う。
「それに母さんのこと二番目でもなかったし」
「うわ、辛辣……でも事実だよな。なあ。離婚したいと思ったことはないの?」
「まあ……あまりないかな」
「あまり? じゃあ、何度かあるってことか?」
「それなりにな」
はは、と父親はビールを口にしながら笑う。
(どんなことでなんだろ……)
「あんまり母さんを図に乗らせると、熟年離婚して退職金持ってかれちゃうよ?」
見栄や体裁、世間体ばかりの母親だ、金を寄越せと言いかねない、と息子ながら考えてしまう。
「そうしたいならすればいいと思ってるよ、俺は」
「えーっ……」
「もう離婚だ、って言ったこともあるし、その度に母さんが泣いて謝ってきてたから」
「えっ、母さんが!?」
「世間体ばかり気にする母さんだからな。ギャアギャアうるさいのに我慢ならないことがあって、子供は俺が引き取るから一人で出て行け、って言うと……な」
父親がそんなことを言ったことがあったなんて想像がつかなかった。よほどのことがあったのだろう、過去には。
深くは訊かなかったが、創平が工業高校に行くと言い出して、近所の子たちは私立や公立の進学校に行くのに恥ずかしいと言い出したことが要因のようだ。そういえば中学三年生の頃、両親の空気が良くない時期があった。創平自身は両親、とりわけ母親に反抗していたのでどうでもいいと思っていたが。
(あの頃か……)
父親は自分のことは我慢出来ても、子供達のことを言われると限界がある性格のようだ。今更気づいた創平だが。
「母さんは、妥協してやった、とか結婚してやった、とか言ってるけれど、最終的には引き下がるし、まあ結局は俺に負い目があるのかもしれないね」
「……はあ、母さんには呆れる」
「それでも俺は母さんには感謝してるよ。創平も悠平も独立するまで育ててくれて、家計のやりくりもしてくれてるし、家計が苦しい時はパートに出てくれてたし、毎日家事も炊事もしてくれて、感謝しきれないくらい感謝してるんだから」
あとは彩花だけだしな、と父親は愉快そうに笑った。
「これまで創平には嫌な思いもさせたけど」
何が、と唐揚げを頬張り父親を見る。
「散々悠平と比べられてきただろう」
「まあ、しょうがない。俺のほうが勉強出来ないし、顔もよくないし」
「俺に似たからな」
「別に父さん……正直イケメンじゃないけど、悪いわけじゃないし。性格も穏やかだしさ。どうせなら性格も父さんに似たかったけどなあ。いいDNAは全部悠平に行ったな」
「そんなことはないと思うけどな。母さんのおかげか、おまえは女の子に人気があったしな」
父親の目にはそう映っていたのかと思うとおかしくなった。
「そう? 悠平のほうがモテたけどなあ」
「まあ、創平にとっては母さんは煙いかもしれないけど、おまえが生まれた時はそりゃあ喜んだもんだよ。初めての子だしな。可愛がってたんだから」
「悠平が生まれるまではでしょ」
「そんなことはないよ」
子供はみんな可愛いよ、と父親は笑った。
「こうして息子と酒が飲めるなんて、最高じゃないか」
「…………」
父親がそう思うなら、正直嬉しいことだ。
酒は強くはないが、嫌いではないし、こうやって父親と飲めるのは創平も嬉しかった。
「な、創平」
「ん?」
「倉橋さん、だったか」
ギクリ、とした。
「彼女は元気にしてるか?」
「……まあ」
「母さんが、連れてきてくれって言ってるんだが」
「無理」
そんなこと言わずに、と父親は苦笑している。
(無理なんだって)
「あの時のこと、母さんは酷いことを言ったって気にしているぞ」
「今更遅いよ」
「覆水盆に返らずなのはわかってるよ。母さんはあのとおり、すぐ口に出すから」
母親に常識が欠けていることは父親もわかっている。
こういう人として欠落している部分に、父親も窘めてきたのだろう。
「父さんはどう思ったの」
「どう、とは?」
「ハンデのある子を連れてきて、がっかりした? 母さんは露骨だったよな」
父親は、優しい目で創平を見ている。
「がっかりなんてしない。そりゃ、驚きはしたけど。創平が初めて連れてきた女性なんだから。おまえが手話を使うのにも驚いたし、連れてきた女性が、あんなに綺麗なお嬢さんなのにも驚いた」
驚きばっかりだったよ、と彼は穏やかな笑みを浮かべた。
「おまえが選んだ人なら、俺は反対しないよ」
「母さんは?」
「母さんも、俺と同じだろう」
「ハンデのある人を蔑んだ目で見てたよな、あの人。普段からそうなんだろ。他人事でさ。まあ俺もそうだったんだけど」
「……」
言葉に詰まって、父親は黙ってしまった。
「世間では弱者だけど、だからといって下に見ていいわけじゃない。手助けして共存していかなきゃいけないだろ」
「……創平は、立派になったな」
「立派じゃねえよ」
やっぱり俺はあの母親の血を引いているんだからクズなんだよ、そう言いたかった。
沈黙が流れ、ごくりとビールを飲む喉の音や、餃子を咀嚼する音が響いた。
「……また連れておいで。今度は一緒に御飯を食べて行ってもらおう。あの時手土産をいただいたのに、すぐ帰ってしまったから、何もしてあげられていないし」
「無理」
「そう尖らなくていいから」
「だから無理なんだって」
「どうして」
「もう別れたから」
「え?」
父親は顔を顰めている。
創平の言葉を理解しようとしている様子だった。
「どうして。母さんのせいか?」
「……違うよ」
「母さんの……」
「違うって!」
創平は声を荒らげた。
「面倒になったんだよ。彼女の意思疎通は手話か筆談でしか出来ないし、会話も伝わらないし、もう何もかも面倒くさくなったんだよ。だから家に連れて行くこともないから。母さんが孫に遺伝するとか心配する必要もない」
母さんが原因じゃないから安心して、とぶっきら棒に言った。
「またいつか、誰か連れてくから。母さんが気に入りそうな人……は無理かもしれないけど。それに当分ないだろうしな」
重苦しい空気が流れた。
唐揚げも餃子も無くなり、最後に残ったビールを飲み干した。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて創平が言うと、
「ごちそうさま」
父親も同じ動作をした。
「美味かった」
「うん、美味かったな、ごちそうになったよ。ありがと」
片付けは俺がするから置いといて、と創平は促した。
「すまないな、ありがとう」
そのあとは、妹の彩花の話や、父親の職場の後輩たちの話を聞いた。ごくごく普通の世間話だった。
しばらく話をした後に、父親は暇を申し出た。
バスとタクシーで帰るつもりだと言ってる。送りたくても自分も酒を飲んでしまったので仕方が無い。
「創平、たまには帰ってきてやりなさい。母さんも気にしてるから」
「まあ年末に」
あと三ヶ月も先だ。
「それまでに、だ」
「行けたら行く」
「帰ってこい」
「……わかったよ。けど気が向いたらな」
父親は手を振って、部屋を出て行ったのだった。
「それを父さんは黙ってたんだ」
「まあ、何も言わないでいるよ」
「よく我慢してるね」
寡黙な父親だが、ギャンギャンうるさい母親によく耐えているものだ。
「うん、別に我慢してるわけじゃないけどな。一番好きな人じゃなくて、二番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれる、っていう話もあったし。そうれこうやって今までやってきたわけだし」
「いやいや、どこの説よ」
「都市伝説だろうけど、俺の時代にはそんなこと言うやつらもいたわけよ」
「幸せかどうか、死ぬまでわからんだろうにな」
そういうことだよなあ、と父親は笑う。
「それに母さんのこと二番目でもなかったし」
「うわ、辛辣……でも事実だよな。なあ。離婚したいと思ったことはないの?」
「まあ……あまりないかな」
「あまり? じゃあ、何度かあるってことか?」
「それなりにな」
はは、と父親はビールを口にしながら笑う。
(どんなことでなんだろ……)
「あんまり母さんを図に乗らせると、熟年離婚して退職金持ってかれちゃうよ?」
見栄や体裁、世間体ばかりの母親だ、金を寄越せと言いかねない、と息子ながら考えてしまう。
「そうしたいならすればいいと思ってるよ、俺は」
「えーっ……」
「もう離婚だ、って言ったこともあるし、その度に母さんが泣いて謝ってきてたから」
「えっ、母さんが!?」
「世間体ばかり気にする母さんだからな。ギャアギャアうるさいのに我慢ならないことがあって、子供は俺が引き取るから一人で出て行け、って言うと……な」
父親がそんなことを言ったことがあったなんて想像がつかなかった。よほどのことがあったのだろう、過去には。
深くは訊かなかったが、創平が工業高校に行くと言い出して、近所の子たちは私立や公立の進学校に行くのに恥ずかしいと言い出したことが要因のようだ。そういえば中学三年生の頃、両親の空気が良くない時期があった。創平自身は両親、とりわけ母親に反抗していたのでどうでもいいと思っていたが。
(あの頃か……)
父親は自分のことは我慢出来ても、子供達のことを言われると限界がある性格のようだ。今更気づいた創平だが。
「母さんは、妥協してやった、とか結婚してやった、とか言ってるけれど、最終的には引き下がるし、まあ結局は俺に負い目があるのかもしれないね」
「……はあ、母さんには呆れる」
「それでも俺は母さんには感謝してるよ。創平も悠平も独立するまで育ててくれて、家計のやりくりもしてくれてるし、家計が苦しい時はパートに出てくれてたし、毎日家事も炊事もしてくれて、感謝しきれないくらい感謝してるんだから」
あとは彩花だけだしな、と父親は愉快そうに笑った。
「これまで創平には嫌な思いもさせたけど」
何が、と唐揚げを頬張り父親を見る。
「散々悠平と比べられてきただろう」
「まあ、しょうがない。俺のほうが勉強出来ないし、顔もよくないし」
「俺に似たからな」
「別に父さん……正直イケメンじゃないけど、悪いわけじゃないし。性格も穏やかだしさ。どうせなら性格も父さんに似たかったけどなあ。いいDNAは全部悠平に行ったな」
「そんなことはないと思うけどな。母さんのおかげか、おまえは女の子に人気があったしな」
父親の目にはそう映っていたのかと思うとおかしくなった。
「そう? 悠平のほうがモテたけどなあ」
「まあ、創平にとっては母さんは煙いかもしれないけど、おまえが生まれた時はそりゃあ喜んだもんだよ。初めての子だしな。可愛がってたんだから」
「悠平が生まれるまではでしょ」
「そんなことはないよ」
子供はみんな可愛いよ、と父親は笑った。
「こうして息子と酒が飲めるなんて、最高じゃないか」
「…………」
父親がそう思うなら、正直嬉しいことだ。
酒は強くはないが、嫌いではないし、こうやって父親と飲めるのは創平も嬉しかった。
「な、創平」
「ん?」
「倉橋さん、だったか」
ギクリ、とした。
「彼女は元気にしてるか?」
「……まあ」
「母さんが、連れてきてくれって言ってるんだが」
「無理」
そんなこと言わずに、と父親は苦笑している。
(無理なんだって)
「あの時のこと、母さんは酷いことを言ったって気にしているぞ」
「今更遅いよ」
「覆水盆に返らずなのはわかってるよ。母さんはあのとおり、すぐ口に出すから」
母親に常識が欠けていることは父親もわかっている。
こういう人として欠落している部分に、父親も窘めてきたのだろう。
「父さんはどう思ったの」
「どう、とは?」
「ハンデのある子を連れてきて、がっかりした? 母さんは露骨だったよな」
父親は、優しい目で創平を見ている。
「がっかりなんてしない。そりゃ、驚きはしたけど。創平が初めて連れてきた女性なんだから。おまえが手話を使うのにも驚いたし、連れてきた女性が、あんなに綺麗なお嬢さんなのにも驚いた」
驚きばっかりだったよ、と彼は穏やかな笑みを浮かべた。
「おまえが選んだ人なら、俺は反対しないよ」
「母さんは?」
「母さんも、俺と同じだろう」
「ハンデのある人を蔑んだ目で見てたよな、あの人。普段からそうなんだろ。他人事でさ。まあ俺もそうだったんだけど」
「……」
言葉に詰まって、父親は黙ってしまった。
「世間では弱者だけど、だからといって下に見ていいわけじゃない。手助けして共存していかなきゃいけないだろ」
「……創平は、立派になったな」
「立派じゃねえよ」
やっぱり俺はあの母親の血を引いているんだからクズなんだよ、そう言いたかった。
沈黙が流れ、ごくりとビールを飲む喉の音や、餃子を咀嚼する音が響いた。
「……また連れておいで。今度は一緒に御飯を食べて行ってもらおう。あの時手土産をいただいたのに、すぐ帰ってしまったから、何もしてあげられていないし」
「無理」
「そう尖らなくていいから」
「だから無理なんだって」
「どうして」
「もう別れたから」
「え?」
父親は顔を顰めている。
創平の言葉を理解しようとしている様子だった。
「どうして。母さんのせいか?」
「……違うよ」
「母さんの……」
「違うって!」
創平は声を荒らげた。
「面倒になったんだよ。彼女の意思疎通は手話か筆談でしか出来ないし、会話も伝わらないし、もう何もかも面倒くさくなったんだよ。だから家に連れて行くこともないから。母さんが孫に遺伝するとか心配する必要もない」
母さんが原因じゃないから安心して、とぶっきら棒に言った。
「またいつか、誰か連れてくから。母さんが気に入りそうな人……は無理かもしれないけど。それに当分ないだろうしな」
重苦しい空気が流れた。
唐揚げも餃子も無くなり、最後に残ったビールを飲み干した。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて創平が言うと、
「ごちそうさま」
父親も同じ動作をした。
「美味かった」
「うん、美味かったな、ごちそうになったよ。ありがと」
片付けは俺がするから置いといて、と創平は促した。
「すまないな、ありがとう」
そのあとは、妹の彩花の話や、父親の職場の後輩たちの話を聞いた。ごくごく普通の世間話だった。
しばらく話をした後に、父親は暇を申し出た。
バスとタクシーで帰るつもりだと言ってる。送りたくても自分も酒を飲んでしまったので仕方が無い。
「創平、たまには帰ってきてやりなさい。母さんも気にしてるから」
「まあ年末に」
あと三ヶ月も先だ。
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