伝えたい、伝えられない。

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41.引越前夜(後編)

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 湯をかけてやると、彼女を背後から抱きしめる。と言いつつ、身体を密着させて、右手は胸に、左手は秘部へとやり、それぞれを丁寧に愛撫した。
 左手の指を内部へと侵入させ掻き回すと、真緒の腰がくねる。
 自然と臀部が後ろへ突き出され、創平は押さえつけた。
「ほら……また溢れてきた……」
 背後から優しく声をかけると、彼女は壁に手をついたまま悶えている。
「ぃぅ……ぁ……」
(気持ちいいんだ……)
 さんざんまさぐったあと、創平はそろそろだなと真緒の腰を引いて、振り向かせた。
 荒々しいキスをすると、真緒がしがみついてきた。
「そろそろ欲しい?」
 うん、と彼女は頷いたが、創平は首を横に振る。
「まだ駄目」
 創平の左側に浴槽があり、その縁に真緒の右足を乗せるように言った。
「片足、ここに乗せて」
 素直に従った彼女の身体を右手で抱き寄せ、左手はまた彼女の秘部を撫で始めた。軽く開脚をさせた真緒のナカをまたも指で掻き回すと、脚を閉じようと動いた。
「駄目、脚は閉じるなよ。このままで、掻き回すぞ」
 初めはゆっくり指で掻き回していたのに、次第に速くなる。がしがしと出し入れを繰り返すと真緒が耐えるために創平に身を預けてきた。
「しっかり掴まってろよ」
 些か乱暴ではあったが、手でナカを擦ると急にきゅっと締め付けらる感覚があった。
(あー……これは……)
 ガクッ……ガクッ……と真緒の腰が痙攣するかのように小刻みに揺れた。
(イッたかな……)
 だらりと創平の身体から離れ、地に座り込んだ。
「大丈夫か……?」
『急に……頭が……真っ白になって……』
「ん、そっか……。気持ちよかったんだな」
『……たぶん』
 立てるか、と真緒を立たせようとしたが、真緒は座り込んだままだった。
 立ったままなら、そのまま挿入してしまおうと思っていたのだが、立っているのに耐えられなくなったようなので今はやめておくことにした。
 仕方ないな、と真緒の前に立ち、股間を目の前に突きだした。
「ほら、舐めて」
 そそり立つ自分のモノを突き出し、容赦なく真緒に言った。
 断られるかと思ったが、真緒は膝をついて座り直し、手に取ったかと思うと、すぐに口に含んだ。
(お……やる気満々……)
 じゅぷりじゅぷり……卑猥な音を立てて、真緒は固くなったそれを転がす。片手で袋に触れ、さわさわと優しく撫でてきた。
「うっ……それ……」
 強く触られると痛むが、真緒の今の触れ方には煽られてしまった。
 真緒は上目遣いで創平を見ている。
 潤んだ瞳で見つめるのに、口では一生懸命創平のモノを頬張っている。
「エロい……」
 濡れた髪を撫で、嬉しくなって笑った。
 普段とのギャップもたまらない。
 大人しくて、周囲が可愛いと言う真緒が、まさか男の、しかも彼女を毛嫌いしていた男のモノを咥えて悦んでいるなんて。それを知っているのは自分だけで。
 何という優越感だろうか。
(興奮する……)
 真緒が緩急を使い分けて、創平のモノを刺激する。
「あ……ちょ……」
 ヤバい、と小さく声に出してしまい、真緒の口の動きが速く強くなった。
「だ、駄目……駄目、このままだと……」
 じゅぷじゅぷという音は激しくなり、時折真緒が袋に触れることで、快感は絶頂へと向かい始めているのを感じた。
「こら……やばいから……」
 手を使い、真緒は動きを益々速める。
「くぅー……っ……もう無理っ」
 そして、獣のような声を出すと、創平は真緒を突き放した。
 否や。
 白濁の液体が真緒の顔に飛び散った。
 創平は固くなっているそれを、自分で絞り出すように握った。
 はあはあ、と荒い息を吐き出した。
 先端から白いものがまだ少し流れ出した。
 ぺたり、と浴槽の縁に力なく座る。
 真緒はというと顔についたものを指でなぞり、ぺろりと舌先で舐めた。
「馬鹿、そんなもん舐めるな!」
 気づいて、力ないながらも真緒の手を掴んだ。
 真緒が少し眉を顰める。
「苦くて不味いだろ、絶対に口にするなよ」
『でも……飲む人がいるって……』
「そんなの危ないプレイだよ」
『好きな人のものは……』
「好きな人のは飲みたい? 俺のも駄目。俺は飲ませたくない。だって、これ、俺の汚い欲望だよ? そんなの……飲ませられっかよ」
『でも、子供の種がいっぱい入ってるって……』
 真緒は必死で手話を使って伝えてきた。
 辛うじて創平にもわかるものだった。
「そうかもしれないけど、今は子作りしてるわけじゃないだろ? 愛情表現っていうか……今のは、どう考えても俺の性欲発散のセックスだ、まともじゃない……だから、とにかく駄目だ。いいか?」
 わかりました、と真緒は顔を汚したまま頷いた。
「とりあえず顔洗って……」
 洗面器で湯を取り、真緒に差し出した。
「ぁぃ……」
 真緒はじゃぶじゃぶと顔を洗い、そのあと、創平にも湯を渡した。
「ん?」
 身体が冷える前に湯をかけたほうがいい、ということのようだった。
「大丈夫、めちゃくちゃ火照ってるから。真緒が身体にかけな」
 彼女は大人しく従ったあと、創平の前にしゃがんだ。
『痛みますか……?』
「え?」
『ずっと噛みつくみたいに咥えてしまって……』
 創平は手を伸ばし、真緒の頭を撫でた。
「痛くないよ」
 真緒は創平を心配しているらしかった。
 創平が項垂れるように座っているので、不安になったようだ。
「ただの賢者タイム。もうちょっと待ってな。別に真緒を邪険にしたりはしないから」
 いつだったか、園田茜が発言したことを気にしている節がある。
 創平が、射精をしたあとに態度が冷ややかになる、と聞いていたのですぐに帰ろうとしたこともあった。
 確かにかつてはそんなひどい態度の時代があったが、真緒にはそんな気持ちにはならない。終わっても抱き合って微睡んだり、自分のモノが落ち着くまでの時間を真緒と一緒に過ごしている。
「真緒の口でイカせてもらえて嬉しかったし。真緒は先に湯に浸かっときな……」
 うん、と真緒は頷いて、創平に背を向けて自分の身体を洗ったあと、湯船に浸かった。
(ほんとは……あのままイカずに、後ろから突きたかったんだよな……)
 創平も、落ち着くと身体を洗い、湯船に足を入れた。真緒が立ち上がり、創平に浸かるようにと手で示してくれた。
「ありがとな」
 ゆっくりと腰を下ろし、真緒も狭い浴槽に密着するように向かい合わせで浸かった。
「疲れたろ」
 声をかけると、彼女は否定するように首を振った。
『松浦さんのほうが……』
「俺は大丈夫。まあ三回も出してるからな……」
『ごめんなさい』
「なんで謝る? まだまだ俺は衰えてないなって思っただけ。真緒相手だと、何回でも出来るんだなって。それにさっきは、真緒がしてくれただろ? だから俺より真緒が疲れたかなって思ったんだよな」
 また真緒は首を振った。
「それに結局、真緒のナカに挿れてはないな……」
『あ』
「せっかく真緒がセックスしたいって言ってくれたのに、俺だけいい思いしてる」
 そんなことはないです、と彼女はぶんぶん頭を振った。
「もうちょっと待ってくれたら……出来る」
 今夜は何度でも出来る自信はあるのだ、本当に。
『いいですいいです!』
 真緒は全力で遠慮をした。
「いや、だいぶ戻ったし……真緒が握ってくれたら大きくなるかな。真緒をよがらせたい……」
『駄目です、もう充分ですから』
 体力使いすぎです、と真緒は言った。
「真緒を悦ばせたかったんだけどなあ……。最初で最後のお泊まりだからって、すっげー張り切ったけど、なんか性欲だけが突っ走った感じ。俺、駄目だな」
『駄目じゃないです!』
 そんなこと言わないでください、と真緒が泣きそうな顔になった。
『だったらわたしのほうが……無理をさせてしまって……』
「そんなことないから」
『じゃあ、今度、また……お風呂で、したらいいんじゃないですか……?』
「え」
 自分が見た手話が、意味を間違ってはいないだろうか、と考える。気持ちのいい思いをして、思考が少し鈍っているのだ。
「風呂でしてもいいってこと?」
『……はい』
「じゃあ、また一緒に風呂に入ってくれるってこと?」
『……まあ、そう、ですね』
「やった」
 途端に創平は手を上げ、悦んだ。俺って単純だ、と我ながら思ってしまう。
「じゃあ次回は新居で、かな」
『……はい』
「なあ真緒」
 チュウして、と唇と突き出すと、真緒はちゅっと優しくキスをしてくれた。
「今日はたくさん真緒としたし、元気もらったし、明日はめちゃめちゃ動けそうだな。真緒は……辛いかもだけどさ」
 真緒の下半身に視線を落とすと、真緒がぴゅっとお湯をはじいて創平に飛ばした。
『大丈夫ですっ』
 見るなというように、湯をかける。
「こらこら。……わかったよ」
 ごめんごめん、と軽く謝った。
「よし……そんなら、もうちょっと温まったら上がるか。湯冷めしてもいけねえしな」
『そうですね』
 二人は笑い合った。
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