星恋月夜(ほしこいづくよ)

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17.挑発

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 構内を歩いていると、坂本に声をかけられ、教育棟の影へ連れて行かれた。
 坂本に出会した時点で嫌な予感しかない。
 そして、案の定、坂本が詰め寄ってきた。春名絡みなのは間違いない。
「もう一度訊く。おまえと春名はどういう関係だ?」
「どういう関係でもないですけど」
「そうか……」
 その答えに不服なようで、坂本は浮かない顔になった。
「俺とつきあいながら別の男のことを考えてる女だ。……一線を越えようにも、いつもいつも俺を拒む」
「…………」
 坂本は、突如祐輔の肩を壁にぶつけた。
「いっ……」
 激しい痛みに襲われた。
 コンクリートの塀にぶつけられて、痛くないわけがない。
「正直に言えよ! この情けない男が!」
 春名のことを好きなくせに、と罵声を浴びせられ、一瞬怯みそうになる。
 身体も大きいが声も大きい男だと思った。
 痛みに顔を顰めて何も言えない祐輔を見て、
「フンッ」
 と大きな鼻息を一つ出して、坂本は去ろうとした。
 このまま言われっぱなしなのは悔しく、黙っていればいいものを、つい我慢できずに叫んでしまった。
「言えるわけないでしょう! みんながみんな、あんたみたいに行動に移せる人間ばっかりじゃないんだ。あんたみたいなこと、この僕にできるわけないんですから!」
「なんだそりゃ」
「言えるわけ、ない……」
「何をだ? 春名が好きなことをか? 俺は言えるぞ。春名が好きだ。おまえより先に春名を好きになった。俺が振り向かせてやるって思ってる。あんな気の強い女、抱けば絶対しおらしくなる。俺しか見えなくなるくらいに甘やかしてやれる」
「ふざけんな! あんたの脳内はお花畑か? 不埒なことばっか言いやがって。あの人のこと全然わかってないじゃないか!」
 坂本は、春名と大人の関係を持つことしか考えていないようだ。それが祐輔には不快でしかなかった。
「きれい事言いやがって。おまえだってそうなんじゃないのか。ああ、そうか、言えないんだよな? 春名とキスしたいとか、それ以上のことしたいって思わないのか? 思ってんだろ?」
「そんなこと考えたことない!」
 ただ……、と祐輔は呟いた。
「……ただ、僕が、あの人を好きなだけです」
 ただあの人がいればいい……、と震える声で言った。
「俺だって最初はそうだったけどな……。どんどん欲しくなるんだよ」
 坂本は、フッと不敵に笑って去っていった。

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