召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第27話 銀狼

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 「これ、もう、ブラックウルフじゃないっすよね?
  治癒魔法で、進化するなんて、もう、わけわかんないっすけど…」

 たしかに、全身、シルバーになっていた。
 銀を、黒とは呼べない。
 しかも、ちょっと光ってる気がする。

 「鑑定だと、シルバーウルフと出ました」

 セシリアが確認してくれた。

 「おいおい、それって…」
 「Sランクの希少種よね。兄さん」
 「そうっす。もう、討伐隊が組まれるレベルっす」

 さすが、異世界の戦士…と云ったところだろうか。
 二人はもちろん。クレアさんまでもが、いつのまにか低く身構えていた。
 ミニのセーラー服姿なので、目のやり場に困った。

 「心配はいりませんニャー」
 「ボクも、そう思うよー。ほら…」

 二匹のシルバーウルフは、異世界の戦士など眼中にないらしい。
 オレのそばにり寄って、手を、くんくんぺろぺろしている。
 サイズが乳牛なので、かわいいとは、お世辞にも云えないが。

 そのうち、噛り付くんじゃないか。
 不安に思っていると、シルバーウルフが、オレをじっと見て吠えた。

 「わおーん、おんおん、わおん、わお、わおん…」

 __うん?

 何か訴えてる?
 いっしょうけんめいなのは、わかったけど…。
 何言ってるのか、さっぱりわからない。

 「ライムの出番です、ニャ」 

 さすが、上級精霊。
 ライムには、ウルフの言葉が分かるのだろう。
 オレの代わりに、話し出した。

 「に、にゃ? にゃ、にゃーにゃ、にゃにゃにゃ、にゃーにゃ…」
 「わーおん、わおわお、わおん、わお、わーおん…」

 どっかの、ショッピングモールっぽかったが、異種族交信は、まもなく、終了。
 ライムが、翻訳してくれた。 

 「やはり、心配は、いりませんニャ。
  命を救ってくれたジュンしゃまに、『従属』したいそうですニャ。
  そして、一緒に連れてって…とお願いしてますニャ」

 __なるほど

 いわゆる『従魔』になってくれるのか。
 そういえば、かの桃太郎も、こんな感じで、わんこの家来ができた気がするな。
  
 いちおう、ケンイチさんにも相談しようとしたら、笑って、シルバーウルフを指差した。

 「どうするも、こうするもねえだろう」

 振り返ると、セーラが、シルバーウルフの背に寝そべっていた。
 そして、ビーフジャーキーで餌付けまでしている。まさに、神速の神業だった。

 「じゃあ、いいか」

 いちおう、庭もあるし、車庫もある。
 もしかすると、家にも、上がれるかもしれない。
 
 こうして、銀狼は、めでたく、我が家のペットになった。


 オレたちと二匹は、再び、ミルフィーユ領へ急いだ。
 銀狼たちは、車の速度にも、余裕でついてくる。
 
 ただ、時折、銀狼たちの姿が見えなくなった。

 しかし、そういうときは、前に馬車が走っていたり、馬車とすれ違ったりした。
 馬車が見えなくなると、また、どこからともなく現れた。

 「…たく、手のかからねえやつらだぜ」
 「こんな従魔、見たことないっすよ」

 生まれて初めてのペットなので、褒められるとうれしい。
 たとえ、乳牛サイズでも。

 
 「だけどよ。あの家といい、この車といい。ほんとうにとんでもねえな。
  どっちも、ジュンの魔力を、電気に変換してるんだろうぜ。
  どんだけ走っても、メーターは、いっこうに減らねえぜ」

 __なるほど

 でも、もしかすると、『神改造』のお陰かもしれない。
 どっちにしても、バッテリー残量を気にせずに走れるのは、助かると思った。

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