召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第34話 薬草採取の再開

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 ミルフィーユ周辺に、魔物がいなくなったのを確かめた後、さっそく、薬草採取を再開することになった。

 もちろん、オレも、その手伝いを頼まれた。
 手伝いといっても、オレは『魔物除け係』として、いっしょに森に入るだけだ。

 森に入るのは、ほんとうに久しぶりらしい。
 王国軍が常駐していた時でさえ、ほとんど、森には入れなくなっていたそうだ。
 街をかろうじて守れる程度の兵士しか、派遣されていなかったせいだろう。

 
 「今にして思えば、一時的に兵士を300名ほど増員したのは、宰相の配下の貴族たちを、隣の領地まで安全に避難させるためじゃったのだろうの」
 「そして、我々に魔物をけしかけ、全滅したのを見計らって、また、戻ってくる算段だったのでしょうね」
 「それが、まさか、こうして、薬草採取を再開してるなんてね」
 「世の中、マジで、何が起きるかわからねえぜ。ジュンみてえのが、ひょっこり現れるんだからよ。
  やっぱ、諦めさえしなきゃ、なんとかなるもんだな」


 そんな話をしながら、領主のアルベールさんたちも、護衛を兼ねて、薬草採りを手伝っていた。

 四人は、元Sクラスの冒険者パーティだ。
 でも、薬草にも詳しいらしい。
 もしかすると、下積み生活が、長かったのかもしれない。

 
 「ありがとう、ジュンくん。
  まさか、この森で、こんなにゆったりと採取ができる日が来るなんて…。
  感謝しても、しきれない気持ちよ」

 イレーヌさんそっくりの女性に、礼を言われた。
 
 このひとは、マリアンヌさん。
 ミルフィーユ辺境伯夫人で、イレーヌさんのお母さんだ。
 もちろん、エルフではないが、どうみても、お姉さんにしか見えない。

 ここに、セシリアとマリアさんが加わると、四姉妹に見えた。
 それくらい、この四人は、顔立ちが似ていた。


 今日は、森に来たことがなかった子どもたちも、参加している。
  マリアンヌ夫人は、教会と共に、付属の『孤児院』を、取り仕切っているからだろう。

 前にも言ったように、オレは不幸な小学生時代を送ったせいか。子どもを『天敵』と認識している。
 たとえ、マリアンヌ夫人が、慈しむような眼差しを向けていようと、ぜったいに油断はしない。


 薬草採りに飽きたのだろう。
 『天敵』のひとりが、オレのところにやってきた。

 「ねえねえ、お兄ちゃん…」

 幼稚園の年少さんくらいの女の子だった。

 「…セシリアお姉ちゃんとは、もうオトナの関係なの?」

 あどけない顔で、いきなり、恐ろしい質問をぶつけてきた。

 類は友を呼ぶ…のだろうか。
 話を聞きつけた、年長ぽい男の子が、ばたばたと駆けてきた。

 「ばーか、そんなの聞くまでもねえよ。
  そんな若い兄ちゃんが、我慢できるわけねえだろっ!
  とうぜん。もう、いくところまでいっちまったさっ!」

 なぜか、自信満々に宣言した。
 
 すると。

 近くで、聞き耳を立てていたのだろう。
 やはり、年長っぽい女の子が、オレを指差してなじった。 

 「セシリア姉さまだって、まだ子どもなのよ!あんた、とんでもない鬼畜ね!」

 「「「「「「「「えっ?きちくなの?」」」」」」」」

 なぜか。ちびっこたちの視線が、いっせいに、オレに集まった。
 『きちく』という単語のどこに、ちびっこを惹きつける要素があるのだろう?
 
 思わず、うろたえたオレが見えたのか。イレーヌさんが心配そうにやってきた。
 そして、幼稚園の先生のように、ちびっこたちを叱った。

 「まあ、まあ!あなたたち!へんなこと言って、ジュンさまを困らせちゃ、だめよ!」
 
 「でもぉ…」

 さっそく。オレを『鬼畜』と断定した年長幼女が、口をとがらせた。

 「…こいつってば、セシリア姉さまに、いやらしいことをしたんだよ」

 なぜか。すでに、既成事実化されていた。
 
 「まあ、まあ、まあ!何て馬鹿なことを!
  ジュンさまは、わたしが間違って抱きついただけで、気絶しちゃうような純情な方なのよ!」

 __いや、いや

 気絶まではしてないぞ。

 「ええっ!そうだったの!」

 年長幼女は、イレーヌさんの言葉を、素直に信じた。そして…

 「悪かったわね…」

 気の毒そうに、オレを見上げて謝った。

 「…あんた。ホントは、『ヘタレ』…だったのね」

 いっけん謝罪してるように見えて、じっしつ侮辱していた。

 「「「「「「「「えっ?ヘタレなの?」」」」」」」」

 なぜか。ちびっこたちの視線が、ふたたび、オレに集まった。
 『ヘタレ』という単語のどこに、ちびっこを惹きつける要素があるのだろう?
 
 オレが、ふたたび、うろたえていると、薬草採りの終了が告げられた。


 「ありがとうございました。
  ジュンさまが、子どもたちの面倒をみてくださったので、薬草をたくさん集められました」

 聖女セシリアが、わざわざ、お礼を言いに来た。
 すこし頬が赤いので、『いくところまで、いっちまった』発言も聞こえていたのだろう。

 ちびたちの面倒をみた覚えなど微塵もないが、それに拘泥するのも、おとな気ない。
 しかたがないので、黙ってうなずいた。


 マリアンヌさんは、そんなオレたちを、微笑ましげに見ていた。そして、

 「これで、久しぶりに、『上級ポーション』作りが出来るわ!」と、明るい声で言った。

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