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二度目の夜会
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月日は流れ、1か月後。
今夜は我がバルヒェット家で夜会が催される。
そこで、ヒーリーヌとゲレオルク様の婚約発表が行われる。私たちの婚約騒動が社交界中で有名な噂になってしまったためだ。
私も出席しないわけにはいかず、身支度を整えていた。いつになく上等なドレスに上等な装飾品。
そういえば、今頃になって侍女がネックレスを用意したことがないことに気づいた。恐らく、お父様から何か指示が行っていたのだろう。
私がフィンリー殿下からいただいたネックレスを常に身につけられるように。
「フィンリー殿下はお元気かしら……?」
あの時はそれ以外のことで頭がいっぱいだったけれど、初恋の人と再会したのだ。それも、本当に素敵な男性に成長していて。
後になってときめきが追いついたような感覚だ。あの頃の初恋が戻ってきたような、不思議な気持ち。
でも、彼のことを考えるとすぐに暗い気持ちになる。あれからお茶会には参加していないし、お父様とも話していないから帝国の戦況がどうなっているのかはわからない。
今日の夜会で何かがわかるかもしれないと淡い期待を胸に、胸元のネックレスを指でなぞった。
エスコートをしてくれる男性がいない私は、肩身の狭い思いで会場の隅に立っていた。そもそも夜会への参加経験自体が少ないから、何をしていいかもわからないのだ。
それにしても、今日の招待客は大物が多い。普段は夜会に姿を見せないとかいう王太子殿下までいらっしゃっているようだ。
参加者にほどよくお酒も入り始めた頃、お母様に手招きされた。いよいよ始まるのだと思い、近づく。
「これまでのご無礼お許しくださいとは申しません。ですが、不肖の娘にも代わってお詫びを申し上げます」
耳元でささやかれた言葉を聞いて、ああお母様もご存じだったのか、と今更ながらに気づく。横顔を見上げたが、いつも通りに澄ました顔をしていた。
お父様が現れる。目ざとい貴族の数人が、お父様を指さして、何やら耳打ちしあった。
お父様は、招待客に向けて淡々と説明する。
私とゲレオルク様の婚約がつつがなく「解消」されたこと。それから、新たにヒーリーヌと、ゲレオルク様が婚約したこと。
招待客の反応は好意的だった。祝福の拍手が会場を包み込む。
一身に注目を浴びたヒーリーヌは得意げに、ふふんと鼻をならしている。……それも周りに見られていることがわかっていないのだろうか?
対するゲレオルク様は平然としている。当たり前のことを当たり前に受け入れている、そんな顔だ
しかし、私が気になったのはもっと別のところだ。
「解消、なのですか……? 破棄ではなく?」
誰に向けたでもない私の発言を耳ざとく聞き取ったお母様は、こう一言。
「あなたに過失がないのに婚約破棄などとあり得ないことです」
愛情など欠片も感じられない、冷ややかな声。実際に愛情はないのだろう。私の出自がどうであろうと、穏やかな家族だけの関係に水を差した邪魔者には違いない。
だが、そんなことより、かけられた言葉の内容が私にとっては嬉しかった。
もちろん、言われた内容は当たり前のことだ。自分でもずっとそう思っていた。
それなのに、誰かにそう言ってもらえるだけで、こうも安心するものだとは知らなかった。
「それから、もうひとつ、重大なお知らせがございます」
お父様は、そう言うときびすを返して、屋敷の奥へと入って行った。夜会のホストの突然の不思議な行動に、招待客がざわめく。
何も聞かされていなかった私も、途方に暮れるしかなかった。
今夜は我がバルヒェット家で夜会が催される。
そこで、ヒーリーヌとゲレオルク様の婚約発表が行われる。私たちの婚約騒動が社交界中で有名な噂になってしまったためだ。
私も出席しないわけにはいかず、身支度を整えていた。いつになく上等なドレスに上等な装飾品。
そういえば、今頃になって侍女がネックレスを用意したことがないことに気づいた。恐らく、お父様から何か指示が行っていたのだろう。
私がフィンリー殿下からいただいたネックレスを常に身につけられるように。
「フィンリー殿下はお元気かしら……?」
あの時はそれ以外のことで頭がいっぱいだったけれど、初恋の人と再会したのだ。それも、本当に素敵な男性に成長していて。
後になってときめきが追いついたような感覚だ。あの頃の初恋が戻ってきたような、不思議な気持ち。
でも、彼のことを考えるとすぐに暗い気持ちになる。あれからお茶会には参加していないし、お父様とも話していないから帝国の戦況がどうなっているのかはわからない。
今日の夜会で何かがわかるかもしれないと淡い期待を胸に、胸元のネックレスを指でなぞった。
エスコートをしてくれる男性がいない私は、肩身の狭い思いで会場の隅に立っていた。そもそも夜会への参加経験自体が少ないから、何をしていいかもわからないのだ。
それにしても、今日の招待客は大物が多い。普段は夜会に姿を見せないとかいう王太子殿下までいらっしゃっているようだ。
参加者にほどよくお酒も入り始めた頃、お母様に手招きされた。いよいよ始まるのだと思い、近づく。
「これまでのご無礼お許しくださいとは申しません。ですが、不肖の娘にも代わってお詫びを申し上げます」
耳元でささやかれた言葉を聞いて、ああお母様もご存じだったのか、と今更ながらに気づく。横顔を見上げたが、いつも通りに澄ました顔をしていた。
お父様が現れる。目ざとい貴族の数人が、お父様を指さして、何やら耳打ちしあった。
お父様は、招待客に向けて淡々と説明する。
私とゲレオルク様の婚約がつつがなく「解消」されたこと。それから、新たにヒーリーヌと、ゲレオルク様が婚約したこと。
招待客の反応は好意的だった。祝福の拍手が会場を包み込む。
一身に注目を浴びたヒーリーヌは得意げに、ふふんと鼻をならしている。……それも周りに見られていることがわかっていないのだろうか?
対するゲレオルク様は平然としている。当たり前のことを当たり前に受け入れている、そんな顔だ
しかし、私が気になったのはもっと別のところだ。
「解消、なのですか……? 破棄ではなく?」
誰に向けたでもない私の発言を耳ざとく聞き取ったお母様は、こう一言。
「あなたに過失がないのに婚約破棄などとあり得ないことです」
愛情など欠片も感じられない、冷ややかな声。実際に愛情はないのだろう。私の出自がどうであろうと、穏やかな家族だけの関係に水を差した邪魔者には違いない。
だが、そんなことより、かけられた言葉の内容が私にとっては嬉しかった。
もちろん、言われた内容は当たり前のことだ。自分でもずっとそう思っていた。
それなのに、誰かにそう言ってもらえるだけで、こうも安心するものだとは知らなかった。
「それから、もうひとつ、重大なお知らせがございます」
お父様は、そう言うときびすを返して、屋敷の奥へと入って行った。夜会のホストの突然の不思議な行動に、招待客がざわめく。
何も聞かされていなかった私も、途方に暮れるしかなかった。
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