6 / 10
孤独な王様と獣人族の王子様 挿絵有り
しおりを挟む
近頃、後宮に流れているある噂がある。それは、隣国の王子がこの国の王様の新たな妃としてやってくるというものであった。王子なのは別に問題はない。この後宮には美しい男性も数人囲われていた。問題なのは、隣国が獣人の住まう国であるということだった。獣人はこの国にはほとんどいない。差別の対象ですらあった。
「獅子、らしいわ」
「まぁ……」
「野蛮人じゃない」
「肉しか食べないって聞いたわ。生のままの肉」
「嫌、そんな食事風景見たら、私、卒倒しちゃうわ」
「獣の耳と尻尾が生えているらしいの」
「私たち、食べられてしまわないかしら? 」
「まさかそんな……」
「わからないわよ。野蛮な獣なのですもの」
「私、怖いわ」
「私も」
「皆様、無視なさいませ。いないものとして扱うのですわ」
「……そうですわ。そうしましょう」
「どうせ、そんな下賤な者を王様が相手をなさる筈はないもの。私たちも相手をする必要はございませんでしょう」
共通の敵に対しては、後宮の住人たちの結束は固かった。
まだ若年の王様は、後宮に住まう住人達が苦手であった。先代が集めた美姫達や、美しい青年達が、王が代替わりしても居座り続けていて、若年の王様は手を焼いていた。
そして、王様はあまたの家臣に囲まれていたが、常に孤独であった。後宮の住人たちも、王様の孤独を癒すことは出来ない。誰も王様の抱える孤独に気付かないのだから。
王様は、心を許せる相手を欲していたのだ。
隣国から僅かな供だけを連れてやって来た獅子の王子は、兵士かと見紛うばかりの筋骨隆々とした体躯をしていた。鬣のような灼熱色の髪と、頭の上にある丸い獣の耳、ふさふさした黒い毛の生えた先端を持つ長い尻尾。顔貌はこの国では見たことのないほど精悍であった。年齢もほとんど王様と変わらない。
謁見の間で、しばし言葉を失って見惚れてしまった王様に、側仕えの者が合図をする。
我に返って、慌てて口を開いた王様であった。
初夜の褥で、獅子の王子は王様に告げた。
「孤独な王よ、これからは私が貴方の友となろう。だから、今宵は私だけを見て、私だけを欲してほしい。私は、王を幸せにすると約束しよう」
まるで立場が逆転したかのような王子の言葉は、不思議と心地よく響いて、王様の胸にすとんと収まったのだ。
王様と獅子の王子は無二の親友となった。
したたかな獅子の王子は、後宮の陰湿な苛めにも負けることはなく、少しずつ味方を増やして、後宮の居心地を改善していった。
王様に安らぎをもたらし、未知の快楽をも教えた獅子の王子は、心から王様を愛した。
そうして、最愛の妻を得た王様は、末永く幸せに暮らしたのである。
SFさま(@SF30844166)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!
「獅子、らしいわ」
「まぁ……」
「野蛮人じゃない」
「肉しか食べないって聞いたわ。生のままの肉」
「嫌、そんな食事風景見たら、私、卒倒しちゃうわ」
「獣の耳と尻尾が生えているらしいの」
「私たち、食べられてしまわないかしら? 」
「まさかそんな……」
「わからないわよ。野蛮な獣なのですもの」
「私、怖いわ」
「私も」
「皆様、無視なさいませ。いないものとして扱うのですわ」
「……そうですわ。そうしましょう」
「どうせ、そんな下賤な者を王様が相手をなさる筈はないもの。私たちも相手をする必要はございませんでしょう」
共通の敵に対しては、後宮の住人たちの結束は固かった。
まだ若年の王様は、後宮に住まう住人達が苦手であった。先代が集めた美姫達や、美しい青年達が、王が代替わりしても居座り続けていて、若年の王様は手を焼いていた。
そして、王様はあまたの家臣に囲まれていたが、常に孤独であった。後宮の住人たちも、王様の孤独を癒すことは出来ない。誰も王様の抱える孤独に気付かないのだから。
王様は、心を許せる相手を欲していたのだ。
隣国から僅かな供だけを連れてやって来た獅子の王子は、兵士かと見紛うばかりの筋骨隆々とした体躯をしていた。鬣のような灼熱色の髪と、頭の上にある丸い獣の耳、ふさふさした黒い毛の生えた先端を持つ長い尻尾。顔貌はこの国では見たことのないほど精悍であった。年齢もほとんど王様と変わらない。
謁見の間で、しばし言葉を失って見惚れてしまった王様に、側仕えの者が合図をする。
我に返って、慌てて口を開いた王様であった。
初夜の褥で、獅子の王子は王様に告げた。
「孤独な王よ、これからは私が貴方の友となろう。だから、今宵は私だけを見て、私だけを欲してほしい。私は、王を幸せにすると約束しよう」
まるで立場が逆転したかのような王子の言葉は、不思議と心地よく響いて、王様の胸にすとんと収まったのだ。
王様と獅子の王子は無二の親友となった。
したたかな獅子の王子は、後宮の陰湿な苛めにも負けることはなく、少しずつ味方を増やして、後宮の居心地を改善していった。
王様に安らぎをもたらし、未知の快楽をも教えた獅子の王子は、心から王様を愛した。
そうして、最愛の妻を得た王様は、末永く幸せに暮らしたのである。
SFさま(@SF30844166)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
過去のやらかしと野営飯
琉斗六
BL
◎あらすじ
かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。
「一級になったら、また一緒に冒険しような」
──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。
美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。
それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。
昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。
「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」
寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、
執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー!
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
