後宮BL短編連作

木野葉ゆる

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孤独な王様と獣人族の王子様 挿絵有り

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 近頃、後宮に流れているある噂がある。それは、隣国の王子がこの国の王様の新たな妃としてやってくるというものであった。王子なのは別に問題はない。この後宮には美しい男性も数人囲われていた。問題なのは、隣国が獣人の住まう国であるということだった。獣人はこの国にはほとんどいない。差別の対象ですらあった。

「獅子、らしいわ」
「まぁ……」
「野蛮人じゃない」
「肉しか食べないって聞いたわ。生のままの肉」
「嫌、そんな食事風景見たら、私、卒倒しちゃうわ」
「獣の耳と尻尾が生えているらしいの」
「私たち、食べられてしまわないかしら? 」
「まさかそんな……」
「わからないわよ。野蛮な獣なのですもの」
「私、怖いわ」
「私も」
「皆様、無視なさいませ。いないものとして扱うのですわ」
「……そうですわ。そうしましょう」
「どうせ、そんな下賤な者を王様が相手をなさる筈はないもの。私たちも相手をする必要はございませんでしょう」

 共通の敵に対しては、後宮の住人たちの結束は固かった。

 まだ若年の王様は、後宮に住まう住人達が苦手であった。先代が集めた美姫達や、美しい青年達が、王が代替わりしても居座り続けていて、若年の王様は手を焼いていた。
 そして、王様はあまたの家臣に囲まれていたが、常に孤独であった。後宮の住人たちも、王様の孤独を癒すことは出来ない。誰も王様の抱える孤独に気付かないのだから。
 王様は、心を許せる相手を欲していたのだ。

 隣国から僅かな供だけを連れてやって来た獅子の王子は、兵士かと見紛うばかりの筋骨隆々とした体躯をしていた。鬣のような灼熱色の髪と、頭の上にある丸い獣の耳、ふさふさした黒い毛の生えた先端を持つ長い尻尾。顔貌はこの国では見たことのないほど精悍であった。年齢もほとんど王様と変わらない。
 謁見の間で、しばし言葉を失って見惚れてしまった王様に、側仕えの者が合図をする。
 我に返って、慌てて口を開いた王様であった。

 初夜の褥で、獅子の王子は王様に告げた。
「孤独な王よ、これからは私が貴方の友となろう。だから、今宵は私だけを見て、私だけを欲してほしい。私は、王を幸せにすると約束しよう」
 まるで立場が逆転したかのような王子の言葉は、不思議と心地よく響いて、王様の胸にすとんと収まったのだ。

 王様と獅子の王子は無二の親友となった。
 
 したたかな獅子の王子は、後宮の陰湿な苛めにも負けることはなく、少しずつ味方を増やして、後宮の居心地を改善していった。
 王様に安らぎをもたらし、未知の快楽をも教えた獅子の王子は、心から王様を愛した。

 そうして、最愛の妻を得た王様は、末永く幸せに暮らしたのである。



SFさま(@SF30844166)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!
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