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第二章 距離が縮まるオリエンテーション!

7話 喧嘩するほど、なんとやら?

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 今日の午前中の授業は、来週に行われる一泊二日のオリエンテーションの班決めだ。
 オリエンテーションは、入学して間もない一年生だけで泊まりに行く行事。
 何をするかと言うと、今回は一緒に遊んだりして親睦を深めるためだ。

 なんでも、私たちの学校専用の施設があるらしい。

 校長先生が考えて、職人さんに作らせたみたいなんだけど、紅魔中学校ってお金持ちなのかもしれない。

「じゃ、1グループ五人な~」

 先生の一言で、ガヤガヤと教室が騒がしくなった。
 みんな、仲のいい友達とグループを作りはじめたみたいだ。

 よしっ、私も乗り遅れないようにしなきゃ!

 そう意気込んで、席を立とうとしたら、肩に手を置かれてストンと椅子に座りなおしてしまった。

「どこにいくの? 一華は俺たちと同じグループだよね?」

 犯人は、安定の色気たっぷりな笑顔の魔央くんだ。
 横からガタンっと音がして、机がつなげられた。柚瑠くんと、界李くんだ。
 
「ボクとカイリもいれて~」
「よし。俺と一華、柚瑠と界李で四人だね」

 満足気な魔央くんに、私は「五人グループだから、あと一人足りないんじゃ……?」と言えば、魔央くんは笑顔を浮かべる。


「あと一人は、誰か適当に誘えば……」

「──僕が入ろう、黒羽」

 声がした方を向けば、腰に手を当てた天内くんが立っていた。

「天内くんっ!」
「天内……」

 さっきの笑顔はどこへやら。
 魔央くんは、途端に不機嫌そうな顔になった。

「もう満員なんだけど?」
「ちょっ、魔央くん嘘つかないの!」

 渋々、と言った感じだけれど、魔央くんの説得に成功する。近くの机をくっつけて、五人分の机が集まった。
 こうして無事に、オリエンテーションの班が決まった。
   
 私、魔央くん、柚瑠くん、界李くん、天内くんの五人だ。


◇◇◆◇◇
 

 班決めが終わって、次はオリエンテーションの内容説明! 

 ──なんだけど。

 うわぁ……、やっぱり女の子たちからの視線が痛い!
 私がイケメン四人を独り占めしてるように見えちゃうよね……。

 視線から逃げるように顔を下に向けていると、天内くんが心配そうに覗きこんできた。

「神城さん? どうかした?」
「ううんっ、なんでもないよ!」
「……もし黒羽たちと同じ班が嫌なら、一緒に抜けようか?」
「──天内、ここの班が嫌なら一人で他の班に行けばいい。俺はかまわないよ」
「僕は君たちを監視しなくちゃいけないんだ。僕個人の感情に左右されることじゃない」
「あぁそう」
「それに、今は神城さんの話をしていたんだ」

 あぁもうっ、なんで魔央くんと天内くんは、こんなに仲が悪いの!!
 誰かこの二人を止めてー!

 そうだ、界李くんに助けをっ、

「んん~……、もう食べられない…………」

 って寝てるし!
 なら柚瑠くんはっ──、

「ねーねー、ボク、山とか登りたくなーい」

 配られたしおりをパラパラとめくり、スケジュールのところを見ていた柚瑠くん。
 レクリエーションで、『早抜け☆チーム対抗山登り!』と書いてある。

 気分が下がっている柚瑠くんを味方につけるべく、しおりを隅から隅まで見て、ある一文を見つけた。


「……あ! 見てみて柚瑠くん!」
「んー?」
「1位になったチームには、ごほうびがあるみたいだよ!」

 ほらここ! と『ごほうび』と書かれた、しおりのページを見せる。

「ふむふむ……『ごほうび』が何かは当日まで秘密? どーせ子供騙しでしょ? やっぱりボクやる気にならなーい」
「そんなこと言わないでよ柚瑠くんっ」
「じゃあ、一華がボクを楽しませてよー」
「無理難題すぎる! 界李くん、助けて……」

 ってまだ寝てる!
 魔央くんと天内くんにいたっては、まだ言い合いをしているし……。

 二人の言い合いを止める事は無理そう、と私は諦めることにした。
 でも、ふと二人の会話から聞こえてきた言葉に、私はおどろく。

「俺の方が一華を愛してるから」

「──ちょっと待って、いつからそんな話になってたの!?」

「俺は四六時中、一華への愛を語れるよ?」
「語らなくていいからね!?」

 あぁ神様……、どうか一泊二日のオリエンテーションが無事に終わりますように!
 私、なんでもしますからー!


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