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第三章 ウワサの悪魔を調査せよ

19話 声がする男子トイレ?

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「やっぱり校舎の中も、く、暗いね……」

 体育館そうだけど、夜の校舎も同然ながら電気がついていない。
 廊下は真っ暗で突き当たりが見えない分、いつもより長く感じた。
  
「でっ、電気つけちゃったら、雰囲気出ないでしょっイチカ」
「忘れていたけど、懐中かいちゅう電灯でんとうを持ってきていたんだ。つけちゃダメだろうか?」

 天内あまないくんがウエストポーチから懐中電灯を取り出すと、柚瑠ゆずるくんはそれをひったくる。

「じゃあ、先頭のボクが持つから、それ以外の灯りは禁止ね!」
「柚瑠、怖いんでしょ? さっきも体育館で震えてたしね」

 魔央まおくんがニヤリ、と笑いながら言えば柚瑠くんはギャンッと吠えた。

「はぁ!? こ、怖くなんかないし!」
「…………」
「ねぇ聞いてるのマオっ! ……な、なに、見てるの?」

 柚瑠くんを見つめて、動かない魔央くん。

「柚瑠…………、うしろ」

 そう言われて、柚瑠くんはギギギっとロボットのようにうしろを振り返る。

「──ワッ」
「ひぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

 柚瑠くんの真うしろに立っていた界李かいりくん。
 立っていただけなんだけど、それをみた柚瑠くんは絶叫。
 そして、私の背中に隠れる柚瑠くん。

「ふふっ、まさかそんなに……ふっ、良い反応をするとは思わなかった」
「ひどい! マオのバカ! あとカイリも!」
「俺はただ、ワッて言っただけ」
「イチカ~! マオたちがいじめる!」
「まぁまぁ、落ち着いて柚瑠くん」

 柚瑠くんをなだめつつ、私は天内くんが難しい顔をしているのに気づいた。

「天内くん、どうかした?」
「──いま、何か聞こえなかったか?」
「え?」

 ──フフ。

「きゃあ!?」
「やっぱりだ、ここから聞こえる」

 天内くんが指さしたのは、男子トイレの入り口。
 私たちの教室は二階だから、一階のトイレはあまり使うことがない。   
 なじみがないトイレは、夜ということもあり不気味に感じた。

 ──フフ。
 
 またあの不気味な笑い声が聞こえた!

「少し見てくる」
「え、正気なのっ、ミカド!?」
「俺も……、天内くんと見てくる」
「カイリまで!? ……ボ、ボクも行く! マオとイチカはそこで待ってて」

 そう言って、三人は男子トレイへ入っていく。

 ──でも、いつまで経っても三人は帰ってこない。

「なんだか遅いね、柚瑠くんたち」
「そうだね……。あまり長居するのもよくないし俺、ちょっと様子を見てくるよ」

 ──すぐに戻るから、ここから動かないで。
 すごく怖いけど、柚瑠くんたちのことも心配だ。
 私は、男子トイレへ入っていく魔央くんを見送った。

 すぐに戻ってくると言った魔央くんだけど、中々戻ってこない。
 そろそろ、一人でいるのが怖くなって来た頃。
 男子トイレの入り口に人影が見えた。

「あ! 魔央く……」
「……神城かみしろさん? なんで一人なんだ? 黒羽くろばねはどうした」

 男子トレイから出てきたのは、天内くん、柚瑠くん、界李くんの三人だ。

「さっき魔央くんがみんなを呼びに行ったんだけど、見なかった?」
「マオ? 見てないけど」
「あぁ、僕たちのあとに誰も入ってきてないが……。なぁ? 瀬尾せおくん」

 一番うしろにいた界李くんが振り返って、男子トイレの入り口へ呼びかける。

「魔央? いるの……?」

 返事はない。
 
 ──そして、男子トイレの中を探しても魔央くんはいなかった。
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