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第四章 大型連休は遊園地デートです!?

32話 恋人のまねごと

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 ついに遊園地へとやってきた。
 中に入ってすぐにある大きな園内の地図を見て、二人で初めにどこに行くかを悩む。

一華いちか、どこから行く?」
「うーん。……魔央まおくん、ジェットコースターとか平気?」
「もちろん」
「私ね、乗りたいけど怖いっていうか……」
「なら俺が手を握っててあげるから、乗ってみる?」
「本当? ……なら、大丈夫かも」

 私たちはまず、ジェットコースターへと向かった。
 やっぱりどのアトラクションも、すごい人の列だ。
 最後尾に並んでもすぐに、私たちの後ろには列ができていた。
 ふと、列の前の方に並んでいた、リンクコーデをしている高校生くらいの男女の二人が気になった。
 恋人同士なのか、見ているこっちが頬が熱くなってしまう距離感の近さだ。

「ねー、暑いから扇|《あお》いで~?」
「しょうがねーな。ほら」

 暑い、と言った彼女さんに、彼氏さんが手であおいで風を送っている。

「(ふふっ、仲いいなぁ)」

 ──それを熱心に見ていた魔央くん。
 次に、瞳をキラキラさせて私を見た。

「ねぇ、一華。暑くない? 大丈夫?」
「ちょっと暑いけど、まだ大丈夫だよ」
「……俺すこし暑いから、あおいでくれない? 手で」
「(ま、魔央くんまさか……!)」

 さっきの人たちと同じことをやろうとしてる!?

「ダメ?」
「うっ……!」

 しゅんとした顔になる魔央くん。
 目をうるうるさせて、私を見てくる。
 そんな目で見られたら、やるしかなくなっちゃうよ!

「(……えいっ!)」

 魔央くんの顔の前で、両手を上下にパタパタさせて風を送る。
 本当にこれで涼しいのかな?

「……ふふ、涼しい。ありがと」

 素晴らしいほどに、ニッコニコの笑顔になる魔央くん。
 ──目のやり場に困っていると、列の後方から聞こえてきた話に私の動きが止まる。

「見てみてー、あのカップルかわいい~」
「中学生くらいかな? ラブラブじゃーん」

「(ひゃぁぁっ!? 見られてる! って私たちはカップルじゃないよ!)」

 恥ずかしくなって、あおいでいる手を引っこめようとしたら、魔央くんに腕をつかまれた。

「もっと見せつけちゃお?」

 魔央くんは、私の手のひらに……。
 ──ちゅ。
 と、キスをした。

「なななっ、魔央くん!?」

 私たちのことを話していたお姉さんたちも、顔を赤くめている。
 私も同じ気持ち、いやそれ以上ですお姉さん方!
 なのに犯人である魔央くんは、いつも通りのすまし顔。
    
「あ、列が進んだよ。いこう」

 と言って、私の手を取り歩き出す。
 ……もうドキドキしているのに、いまからジェットコースターに乗るのは、正直不安しかない!

◇◇◆◇◇

 列は順調に進み、私たちの番がやっと来た。

「それではみなさん、いってらっしゃ~い!!」

 スタッフの女性が、明るく送り出してくれた。   
 ゆっくりと動きだしたジェットコースター。
 なんだかもう怖くて、目を閉じてしまった。
   
「一華。ほら、手を出して?」
 
 魔央くんに右手を握られて、すこし心が落ちついてきた。

 ジェットコースターは、最初の山場を迎えようとしている。
 いま見えるのは青空だけ。
 そしてついに────、

『きゃーーーー!』
「きゃぁぁぁぁ!」

 乗っているほかのお客さんの悲鳴も聞こえる中、私もおもいっきり声を出した。

「あははっ、速いねジェットコースターは」

 となりでは、魔央くんが純粋に楽しんでいた。
 そうだ、魔央くんは翼があるから、高いところは慣れっこだよねっ。
 いいなぁ!
 私だって、何度か魔央くんと空を飛んでいるのに、ジェットコースターの落ちる瞬間は慣れない。

 そのあとも、ジェットコースターが落ちるたびに、私は絶叫していた……。

◇◇◆◇◇

「大丈夫? 飲み物買ってくるから、そこで座ってて」
「う、うん……ありがとう」

 園内のベンチでひと休み中。
 魔央くんに手を握ってもらっていたから、そんなに怖くはなかった。
 けれど叫びすぎたのと、上下するジェットコースターに気分が悪くなってしまった。

「ふぅ……」

 深くベンチに座って、園内を楽しそうに歩く人たちをながめる
 ベンチのすぐ近くで、うさぎの着ぐるみが小さな子供に風船を渡していた。
 風船をもらった子は、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。

「(ふふ、可愛いなぁ)」
   
 しばらくその光景をぼーっと見ていたら、頬に冷たいものが当てられた。

「いーちか」
「きゃっ! ……魔央くん!」
「はい、どうぞ。こぼさないよう気をつけてね」
「あ、ありがとう」
「一華も風船がほしいの? もらってこようか」
「ううんっ、見てただけだよ!」

 私のとなりに座って、ジュースを飲む魔央くん。
 もう少しベンチで休憩してから、私たちはまた違うアトラクションへ向かった。

 ──色々と乗って、お腹もすいてきた頃。
 時間的にもお昼ぐらいだ。

「どこかでお昼でも食べよっか」
「うん!」

 外のテーブルで食べようってことになって、私たちは屋台が立ち並ぶエリアへ向かった。
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