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第四章 大型連休は遊園地デートです!?
33話 神城一華、十二歳。……迷子になりました
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ちなみに、今日はお小遣いをたくさん持ってきている。
友達と出かけることが少なかったから、私のお小遣いは貯まりにたまっていた。
今日だけは、ぼっちだったことに感謝……かな?
私は元々、物欲も少ない方。
お父さんは事あるごとにお小遣いをくれるから、困っちゃって断ることもあったくらいだ。
「おいしそう。どれにしようかな? これもいい……。あ! こっちもおいしそう! うーん、迷っちゃう」
「二つで迷ってるの?」
「うん、そうなんだけど……」
「じゃあ俺がもう片方を頼むから、それで二つ食べれるね」
「えっ、いいの?」
「もちろん。どれも美味しそうだしね」
魔央くんっ、なんて優しいの!
注文をして、できあがった料理を持ってテーブルに座る。
「(おいしい~~!)」
「美味しそうに食べるね、一華」
「だって本当においしいから!」
魔央くんの後ろのテーブルにいた、恋人らしき二人。
彼女さんが、彼氏さんに「あーん」をしている。
された彼氏さんの方は、とても嬉しそうだ。
ちらり、と魔央くんに視線を戻す。
……魔央くんも、アレをしたら喜んでくれるかな?
「ま、魔央くん」
「うん?」
「あ、あーん……!」
料理についてきたポテトを、魔央くんに向けてズイッと差し出す。
私を見たまま、固まってしまった魔央くん。
「ごっごめん! やっぱり、いまのは無し……」
──パクリ。
私が手を引っこめる前に、魔央くんはポテトを食べた。
ちろりと見えた魔央くんの赤い舌に、見てはいけないものを見た気がして、背中がぞわぞわとする。
ポテトだけじゃなく、指先も軽く噛まれて、最後に指をペロリとなめられてしまった。
「……ん、美味しい」
色っぽい微笑みを浮かべた魔央くん。
「そ、それはよかった……です」
「ふふ、なんで敬語なの?」
それは、魔央くんがカッコよすぎるからだ、なんて言えない。
「冷めないうちに食べよっ! ねっ?」
「はいはい、でもゆっくり食べてね。喉に詰まったら大変だ」
「小さい子供じゃないんだから、大丈夫だよ」
「そうだね。俺にとっては、愛しい女の子だ」
「(ま、またそんなことを言って……!)」
恥ずかしい……けれど、とても楽しいお昼の時間をすごした。
────なのに。
「魔央くん……、どこ~~~!?」
神城一華、十二歳。
遊園地で迷子になりました。
◇◇◆◇◇
「魔央くん、どこー……」
とりあえず園内を歩るきまわって、魔央くんを探すことにした。
でもどこも人が多くて、中々見つからない。
一人が心細くなってきて、下を向いて歩いていると突然、後ろから腕を引かれた。
「──わっ!?」
間一髪で、目の前をベビーカーが横切った。
「(危なかった……!)」
もし誰かに引き止められなかったら、ぶつかっていたと思う。
私はお礼を言おうと思い、後ろを振り返った。
「(……え、ウサギ?)」
さっき風船を小さい子供にわたしていた、着ぐるみの頭と似たような物を被っている。
首から下はシンプルな服装で、男の子だとわかった。
「あのっ、ありがとうございます!」
──ふるふる。
なぜか、うさぎの被り物をした人は喋らない。
身長的には魔央くんと同じくらいで、歳も近そう……かな?
『ウサギさん』、と仮の名前をつけてみる。
ウサギさんは私を見つめて、じっと動かない。
「…………」
「(なんで、ここを動かないのかな?)」
私が首をかしげると、同じように首をかしげた。
「えっと……、ウサギさんもお一人ですか?」
──ふるふる……、ブンブンッ!
一度、横に首を振ったあと、あわてて縦に首を振った。
……つまり、一人ってことでいいんだよね?
このウサギさんは、悪い人……じゃないと思う。
根拠はないけど、大丈夫な人だってカンが言っている。
私一人じゃ、魔央くんを見つけられそうもないし、だから……。
「私、友達と来てたんですけど……はぐれたゃって。──よかったら、一緒に探してもらえませんか!?」
「っ!?」
ウサギさんはびっくりしたように、ぴょんっと少し飛び跳ねた気がした。
友達と出かけることが少なかったから、私のお小遣いは貯まりにたまっていた。
今日だけは、ぼっちだったことに感謝……かな?
私は元々、物欲も少ない方。
お父さんは事あるごとにお小遣いをくれるから、困っちゃって断ることもあったくらいだ。
「おいしそう。どれにしようかな? これもいい……。あ! こっちもおいしそう! うーん、迷っちゃう」
「二つで迷ってるの?」
「うん、そうなんだけど……」
「じゃあ俺がもう片方を頼むから、それで二つ食べれるね」
「えっ、いいの?」
「もちろん。どれも美味しそうだしね」
魔央くんっ、なんて優しいの!
注文をして、できあがった料理を持ってテーブルに座る。
「(おいしい~~!)」
「美味しそうに食べるね、一華」
「だって本当においしいから!」
魔央くんの後ろのテーブルにいた、恋人らしき二人。
彼女さんが、彼氏さんに「あーん」をしている。
された彼氏さんの方は、とても嬉しそうだ。
ちらり、と魔央くんに視線を戻す。
……魔央くんも、アレをしたら喜んでくれるかな?
「ま、魔央くん」
「うん?」
「あ、あーん……!」
料理についてきたポテトを、魔央くんに向けてズイッと差し出す。
私を見たまま、固まってしまった魔央くん。
「ごっごめん! やっぱり、いまのは無し……」
──パクリ。
私が手を引っこめる前に、魔央くんはポテトを食べた。
ちろりと見えた魔央くんの赤い舌に、見てはいけないものを見た気がして、背中がぞわぞわとする。
ポテトだけじゃなく、指先も軽く噛まれて、最後に指をペロリとなめられてしまった。
「……ん、美味しい」
色っぽい微笑みを浮かべた魔央くん。
「そ、それはよかった……です」
「ふふ、なんで敬語なの?」
それは、魔央くんがカッコよすぎるからだ、なんて言えない。
「冷めないうちに食べよっ! ねっ?」
「はいはい、でもゆっくり食べてね。喉に詰まったら大変だ」
「小さい子供じゃないんだから、大丈夫だよ」
「そうだね。俺にとっては、愛しい女の子だ」
「(ま、またそんなことを言って……!)」
恥ずかしい……けれど、とても楽しいお昼の時間をすごした。
────なのに。
「魔央くん……、どこ~~~!?」
神城一華、十二歳。
遊園地で迷子になりました。
◇◇◆◇◇
「魔央くん、どこー……」
とりあえず園内を歩るきまわって、魔央くんを探すことにした。
でもどこも人が多くて、中々見つからない。
一人が心細くなってきて、下を向いて歩いていると突然、後ろから腕を引かれた。
「──わっ!?」
間一髪で、目の前をベビーカーが横切った。
「(危なかった……!)」
もし誰かに引き止められなかったら、ぶつかっていたと思う。
私はお礼を言おうと思い、後ろを振り返った。
「(……え、ウサギ?)」
さっき風船を小さい子供にわたしていた、着ぐるみの頭と似たような物を被っている。
首から下はシンプルな服装で、男の子だとわかった。
「あのっ、ありがとうございます!」
──ふるふる。
なぜか、うさぎの被り物をした人は喋らない。
身長的には魔央くんと同じくらいで、歳も近そう……かな?
『ウサギさん』、と仮の名前をつけてみる。
ウサギさんは私を見つめて、じっと動かない。
「…………」
「(なんで、ここを動かないのかな?)」
私が首をかしげると、同じように首をかしげた。
「えっと……、ウサギさんもお一人ですか?」
──ふるふる……、ブンブンッ!
一度、横に首を振ったあと、あわてて縦に首を振った。
……つまり、一人ってことでいいんだよね?
このウサギさんは、悪い人……じゃないと思う。
根拠はないけど、大丈夫な人だってカンが言っている。
私一人じゃ、魔央くんを見つけられそうもないし、だから……。
「私、友達と来てたんですけど……はぐれたゃって。──よかったら、一緒に探してもらえませんか!?」
「っ!?」
ウサギさんはびっくりしたように、ぴょんっと少し飛び跳ねた気がした。
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