43 / 49
瀬崎
同僚と
しおりを挟むーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
金曜の夜、いつもの居酒屋で同僚と飲んでいた。
「最近、あの子……凪ちゃんだっけ。見ないけど、どうしたの? もしかして振られた?」
「……な訳ないやろ」
凪がいる日には毎回みんなを先に帰らして凪の元へと向かっていたからか、感づかれてしまった。
今まであまり色恋沙汰はなかったからか、同僚たちは妙に感心を持っているらしく、頻繁に話を振られるようになった。
「付き合っちゃうとはなー。瀬崎、意外とやり手なんだな」
「なー。いいよな瀬崎は。クリスマス近いのに俺なんて……あー寒い! 独り身はより一層寒い! 彼女持ちより体感温度三度は寒いね!」
「あれ、お前彼女いなかったっけ」
「おいっ、こいつ一か月前に振られたんだよ」
「えーっ! 何やったんだよお前」
どうやら話のネタは違う奴に移ったみたいだ。
お猪口に入った日本酒をちびちびと飲みながら凪のことを考える。
凪とそういう関係になった日から、何度か体を重ねようとしたが無理だった。
原因は俺にあることは明白だ。それでも凪は一生懸命受け入れようとしてくれていた。
……だが、最近は連絡が少なくなった。
飲みに誘って断られる。
たまに来ても食事をして、用があるからとさっさと帰ってしまう。
ここ一ヶ月は触れることすらできていない。
やっぱり俺と付き合ったことを後悔しているのか。
凪はもうとっくに俺と別れたいのかもしれない。
だが、付き合ったばかりだから言い出せないのかもしれない。
俺から身を引いた方がいいのかもしれないと、少し誘う回数を減らしていた。
それからも、凪に誘われることは一回もなかった。凪を手放したくはない。
……でも、それは俺のわがままだ。
きちんと話し合って、凪を離してやらないと。
それが凪のためだ。
「すまん、急用を思い出した」
「おい、どこ行くんだよ」
「えー帰るのー」
頭の中はごちゃごちゃのままだが、とりあえず凪に伝えないと。
仲間の言葉を尻目に、俺は残りの日本酒を飲み干して居酒屋を出て凪の家へ急いだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる