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激突
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「銀の連中がこっちにくる前に、あの美しい狼を仲間にしてさっさと撤収するわよ!」
タニヤは全身に風を受けながら、クヌートに声をかけた。
新調したゴーグルを装着して、タニヤは真っすぐに一角狼を見つめる。
「時間がないから一気にきめましょう。正面から堂々と! 頼むわねクヌート」
「きゅきゅい!(任せろ!)」
クヌートの頼もしい返事を聞いて、タニヤは手綱を握りしめて姿勢を低くする。
「――っきゅい‼」
クヌートは気合いを入れてひと声鳴くと、大きく翼を広げた。
クヌートも体勢を変えて風の抵抗を減らすと、一気に移動速度を上げた。怒りの雄叫びを上げている一角狼にすばやく近づく。
タニヤは指輪の中から、大きなランスを取り出した。
ランスには魔法付与により属性ダメージが追加されている。
通常攻撃時に、少しでも相手に触れることができれば麻痺状態にすることが可能だ。
タニヤは特殊効果つきのランスを真っ直ぐに構えて、正面から一角狼の角に向かって突撃した。
ガキンと、周囲に響き渡る大きな音がする。
タニヤのランスと、一角狼の大きな角が正面からぶつかりあった。
「――ッガルル!」
一角狼はぶつかりあった場所から吹き飛んでいった。大きな木の幹に激しく身体を打ちつけ、うめき声をもらす。
「さすが危険度S級に分類されるだけあるわね。これで折れないか」
タニヤはこの一撃で角を折るつもりだった。しかし、一角狼の角は折れるどころか、欠けてもいない。
ひと思いに角を折って戦意を喪失させてしまおうと考えていたのだが、そう簡単にはいかなかった。
「しかも、麻痺耐性があるなんてね。角を折ることができなくても、動きさえ封じてしまえばこっちのものって思っていたけれど。考えが甘かったわ」
一角狼はすぐさま体勢を立ちなおした。上空を仰ぎ見ると、こちらに向かって大きく口を開ける。
「クヌート、回避して!」
一角狼の口から炎が吐きだされる。
クヌートは冷静に相手の攻撃を見極めて炎をかわしていく。
「……火かあ。クヌートとは相性が悪かったりしてね」
「きゅきゅい? きゅきゅきゅ?(嘘でしょ? いまそんなことを言うの?)」
「冗談よ。クヌートとは得意な属性攻撃が違うから、あの子はどんなことができるのかなって興味があるだけよ」
「きゅいー。きゅきゅいきゅい(そんなー。僕はお払い箱なの?)」
「そんなわけないじゃない。あなたは私の大切な相棒よ。嫌になっても離してあげないから」
タニヤは情けない声を出すクヌートの背中を優しく撫でる。
その間に、タニヤはランスを指輪の中にしまって弓を取り出した。この弓にも特殊効果が付与されている。
「さて、これならどうかしら?」
タニヤは眼下の一角狼に向かい弓を引く。
弓に矢はつがえられてはいないが、タニヤが弦を引くと淡い光に包まれた矢が出現する。
放たれた光の矢は分裂して、一角狼の身体に降り注いだ。複数の光の矢が一角狼の身体に突き刺さる。
しかし、一角狼はぶるぶると身体を揺すって、刺さった矢をあっさりと振るい落とした。
「ああ、やっぱり外皮はすごく固いのね」
タニヤは上空で一角狼を観察しながら、おもわずうなってしまう。
「この弓じゃ引っ掻かれた程度にもならないってことね。フェリシアさんには避けられたけど、ちょっとでも当たれば催眠効果があるはずなのになあ。あの子には特殊効果がまったく効かないのかしら?」
タニヤは指輪に弓をしまった。
効果のないアイテムを使っていてもしょうがない。
「切り替えて次に行きましょ、次。クヌートもっと高く飛んで! そこから一気に突っ込むわ」
クヌートはすぐさま空高く舞い上がる。
大きな一角狼が小さな豆粒のように小さく見える所まで、一気に昇り続けた。
タニヤは全身に風を受けながら、クヌートに声をかけた。
新調したゴーグルを装着して、タニヤは真っすぐに一角狼を見つめる。
「時間がないから一気にきめましょう。正面から堂々と! 頼むわねクヌート」
「きゅきゅい!(任せろ!)」
クヌートの頼もしい返事を聞いて、タニヤは手綱を握りしめて姿勢を低くする。
「――っきゅい‼」
クヌートは気合いを入れてひと声鳴くと、大きく翼を広げた。
クヌートも体勢を変えて風の抵抗を減らすと、一気に移動速度を上げた。怒りの雄叫びを上げている一角狼にすばやく近づく。
タニヤは指輪の中から、大きなランスを取り出した。
ランスには魔法付与により属性ダメージが追加されている。
通常攻撃時に、少しでも相手に触れることができれば麻痺状態にすることが可能だ。
タニヤは特殊効果つきのランスを真っ直ぐに構えて、正面から一角狼の角に向かって突撃した。
ガキンと、周囲に響き渡る大きな音がする。
タニヤのランスと、一角狼の大きな角が正面からぶつかりあった。
「――ッガルル!」
一角狼はぶつかりあった場所から吹き飛んでいった。大きな木の幹に激しく身体を打ちつけ、うめき声をもらす。
「さすが危険度S級に分類されるだけあるわね。これで折れないか」
タニヤはこの一撃で角を折るつもりだった。しかし、一角狼の角は折れるどころか、欠けてもいない。
ひと思いに角を折って戦意を喪失させてしまおうと考えていたのだが、そう簡単にはいかなかった。
「しかも、麻痺耐性があるなんてね。角を折ることができなくても、動きさえ封じてしまえばこっちのものって思っていたけれど。考えが甘かったわ」
一角狼はすぐさま体勢を立ちなおした。上空を仰ぎ見ると、こちらに向かって大きく口を開ける。
「クヌート、回避して!」
一角狼の口から炎が吐きだされる。
クヌートは冷静に相手の攻撃を見極めて炎をかわしていく。
「……火かあ。クヌートとは相性が悪かったりしてね」
「きゅきゅい? きゅきゅきゅ?(嘘でしょ? いまそんなことを言うの?)」
「冗談よ。クヌートとは得意な属性攻撃が違うから、あの子はどんなことができるのかなって興味があるだけよ」
「きゅいー。きゅきゅいきゅい(そんなー。僕はお払い箱なの?)」
「そんなわけないじゃない。あなたは私の大切な相棒よ。嫌になっても離してあげないから」
タニヤは情けない声を出すクヌートの背中を優しく撫でる。
その間に、タニヤはランスを指輪の中にしまって弓を取り出した。この弓にも特殊効果が付与されている。
「さて、これならどうかしら?」
タニヤは眼下の一角狼に向かい弓を引く。
弓に矢はつがえられてはいないが、タニヤが弦を引くと淡い光に包まれた矢が出現する。
放たれた光の矢は分裂して、一角狼の身体に降り注いだ。複数の光の矢が一角狼の身体に突き刺さる。
しかし、一角狼はぶるぶると身体を揺すって、刺さった矢をあっさりと振るい落とした。
「ああ、やっぱり外皮はすごく固いのね」
タニヤは上空で一角狼を観察しながら、おもわずうなってしまう。
「この弓じゃ引っ掻かれた程度にもならないってことね。フェリシアさんには避けられたけど、ちょっとでも当たれば催眠効果があるはずなのになあ。あの子には特殊効果がまったく効かないのかしら?」
タニヤは指輪に弓をしまった。
効果のないアイテムを使っていてもしょうがない。
「切り替えて次に行きましょ、次。クヌートもっと高く飛んで! そこから一気に突っ込むわ」
クヌートはすぐさま空高く舞い上がる。
大きな一角狼が小さな豆粒のように小さく見える所まで、一気に昇り続けた。
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