トレントなどに転生して申し訳ありません燃やさないでアッ…。

兎屋亀吉

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2.ゴブリン狩り

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 2年後

 嘘です2日後です。

 少年漫画と違って生まれた瞬間修行編突入です。

 はあ、お腹が減ったな。

 トレントの食事は足のような根から吸収するんだけど、どうやら普通の木と違ってただ土から養分を吸うだけでは足りないらしい。

 トレントには睡眠は必要ないみたいで、2日間土の養分だけ吸って獲物が通りかかるのをずっと待ってたんだけど、何も通らない。

 もうお腹が限界なのでこちらから獲物を探しに行こうと思う。

 僕はその場から動こうと足を伸ばすが、身体がギシギシいって動きが悪い。

 エネルギーが足りていないようだ。

 しょうがないので僕は根から魔力を吸い上げて身体を動かす。

 2日前にひどいことになったのでいろいろと研究していたのだが、この根から魔力を吸収する能力はトレントのスキルではないかと僕は思う。

 根から魔力を吸収して、その魔力を使って腕を伸ばしたり葉っぱを生やしたりと色々できる。

 魔力だけ吸って何もしないと2日前のようにひどいことになる。

 推測だけど、たぶん魔力の器みたいのが身体の中にあって、その器以上の魔力を吸収すると身体が異常をきたすのだと思う。

 今の僕はまだ成長して器を大きくする余地があったから助かったけれど、成長しきっていたら本当に破裂していたかもしれない。

 便利な能力だけど魔力を吸い上げるたびに周りの草が枯れているので、無制限で使える能力ではないらしい。

 僕は少量の魔力を常に吸い上げながら意気揚々と歩き出した。




 僕の目の前を緑の肌のあいつがうろついている。

 そう、ファンタジー世界の定番であり、初心者御用達のモンスター、ゴブリンだ。

 初めての獲物が人型か…。

 僕とて好き好んでゴブリンなどを食べたいわけではない、しかし、空腹には勝てない。

 別に口から食べるわけでもあるまいし、我慢しよう。

 ゴブリンは全部で3匹、僕はただの木のフリをして、タイミングをはかる。

 僕は背が低いのでどうしても下から見上げる形になるのだけれど、あいつら汚いボロ切れを腰に巻いているだけなので、ぶらぶらしたものがチラついて非常に不快だ。

 ここは一気にやってしまうとしよう。

 僕は一気に根から魔力を吸い上げて魔法を発動する。

 そう、魔法だよ、魔法。

 色々と試行錯誤してみたのだけれど、この世界の魔法は魔法陣や呪文などは必要なく、普通にイメージで発動した。

 常日頃から異世界に行ったときのためにイメージトレーニングしてきた僕にかかれば、2日で攻撃に使えるくらいまで習熟することはたやすいことだった。

 この身体は睡眠も必要ないしね。

 トレントの魔力を吸収する能力も魔法の習熟の一助となった。

 この世界で普通のトレントが魔法を使うかどうかはまだわからないけれど、トレントに魔法は鬼に金棒と同義なのではないだろうか。

 と、そんなことを考えながらも僕は魔法の効果を正確にイメージしながら地面に魔力を流していく。

 地面が盛り上がりはじめ、ゴブリン達が異変に気づいたようだが、なにが起こっているのかはよく分かっていないようだ。

 そして次の瞬間地面から伸びた太いつららのような石柱が3匹のゴブリンを貫き、グギャーという断末魔の叫び声をあげて絶命した。

 すまないゴブリンよ、恨みは無いが僕の糧となってくれ。

 食べるためとはいえ初めて人型のモンスターを殺したけれど、思ったよりも忌避感は薄いな。

 この身体はモンスターだから、弱肉強食という自然界の掟が本能に刻まれているのかもしれない。

 苦悶の表情を浮かべたまま絶命しているゴブリンに根を伸ばして突き刺し、その命を吸い取っていく。

 ああうまいわーゴブリン。

 特に味とかは感じないけれど(味とか感じたらゴブリンなんか食べたくない)なんともいえない満足感がある。

 僕に吸収されたゴブリンはカラカラに干からびて、最後は砂になって崩れ落ちた。

 トレントに吸収されたものはこうなってしまうのか、ひどいものだ。

 そして僕の中にゴブリンの生命力と魔力が流れ込んできて、力がみなぎってくる。

 また僕の身体が成長しているみたいだが、2日前のように破裂しそうな苦痛は無く、身体の内側から広がる心地よい熱が高揚感を与えてくれる。

 2日前のは緊急の成長でこれが本来の成長のしかたなのだろう。

 ご馳走様。

 3匹のゴブリンを食べ終わった僕は、次の獲物を求めて森を彷徨うのだった。


 
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