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35.戦国の冬
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吐く息が白くなった12月。
最近では雪がちらつく日もあって、朝晩は信じられないくらい冷え込む。
静岡生まれ静岡育ちの俺にはこの寒さは大変にこたえる。
隣の隣の県なのに、なんでこんなに寒いんだよ。
嘘かホントか現代の地球は温室効果ガスによって温暖化が進んでいたようだし、実際に戦後から気温の上昇が見られたようだ。
戦国時代からの気温の推移なんて分からないけど、たぶん現代よりも寒いんじゃないかな。
静岡もまだみかんが育つような気候ではないのかもしれない。
岐阜でこんなに寒いんじゃ、北海道とか東北とかの人たちは大変なんだろうな。
この時代だとエアコンはもちろんのことコタツもストーブもまだ無いから、直火で身体を温めるしかないんだよね。
囲炉裏とか火鉢とかで。
通気性の良すぎるこの時代の建物じゃあ全然室温が上がらないんだ。
俺達はまだお金があるから綿入りの着物とかを着ることができるけれど、夏用も冬用も無い一着の着物を着まわして震えながら冬を越すような感じの人たちにとっては本当に冬というのはできるなら来て欲しくないものだろう。
冬は畑の野菜も凍っちゃうし、森に行っても動物は見当たらないし山菜も木の実も実っていない。
食べる物が無くなるという点でも、その日をギリギリで生きている人たちには致命的だ。
この時代は人口に対して食料の生産が足りていない時代だ。
どう頑張っても食べ物を手に入れることができない人というのが出てくる。
足りないものは人から奪うしかない。
だからこそ戦が後を絶たないんだ。
歴史に残らないような小さな争いが毎日起きて、負けた人は死に、勝った人が飯にありつける。
それが戦国時代の人々の常識なんだ。
この常識を変えない限りは、平和な世などは訪れないだろう。
そしてそれを変えようとしたからこそ、徳川家康は250年以上続く徳川幕府を作ることができたのだと俺は思う。
まあ運がよかっただけかもしれないけどね。
運も実力のうちでしょ。
ということで強運の持ち主徳川家康さん、俺に力を貸してくれ。
俺は火鉢にあたりながら10連ガチャをタップした。
演出は赤。
Sランク
なし
Aランク
なし
Bランク
・脇差
Cランク
・米×10
・日本酒×10
・白ワイン×10
・みりん×10
・木綿反物×3
Dランク
・ビーチサンダル
・フライ返し
・えんぴつ
・飴玉×10
うーん、まるで今の徳川家康さんを現しているかのようだ。
まだまだ徳川家康さんの運気はこんなものか。
再来年あたり武田との戦で大きい方漏らす予定だしな。
まあBランクが出ただけありがたい。
三河の方角に拝んでおこう。
ありがたやありがたや。
しかし、飴玉が出たか。
一度織田信長に献上したことのある飴玉だが、あれ以来結構気に入っちゃったみたいなんだよね。
戦場まで送れとか書かれた手紙が届くみたいで、たまに家臣の人が飴玉は無いかって殿に聞きに来るんだよ。
手に入ったら褒美をやるからすぐに岐阜城まで持ってくるように言われている。
褒美って何くれるんだろう。
俺はちょっとだけ期待しながら殿の屋敷に飴玉を持っていった。
まさか飴玉10個が米3俵になるとは。
米1俵は60キロ。
3俵で180キロだ。
現代で俺が食べていたような20キロ2980円の米であれば3万円にも満たない価値だ。
だけど食料の価格が高いこの時代では米3俵といえば1貫では買えないだろう。
1貫といえば永楽銭で1000枚。
現代の価値でいえば10万円は確実にあるだろう。
飴玉10個が10万円を越える価値になってしまった。
この間の戦で殿がもらった褒美が10貫くらいだったかな。
少しの申し訳なさを感じて、もらった米のうち2俵は殿に渡した。
まあ大体他所の武家だったらこのくらいの取り分になるだろう。
しかし殿は戦国時代に生まれるべきじゃなかったほどのお人好し。
もらいすぎだと渋ったので、屋敷の庭先を稽古に使わせてもらっている使用料だと言って押し切った。
勝三君の稽古は俺が個人的に受けたことだから使用料を払うべきなのに、殿は頑なに受け取らなかったんだ。
山内家は未だに家計が火の車なのにね。
武士は食わねど高楊枝とは言うけれど、さすがに食わないで生きていける武士は居ない。
最近では千代さんから文字を教わることが無くなったから、そろそろ山内家の台所事情が心配だったんだよね。
米2俵あれば少しは余裕ができたはずだ。
なかなか貧乏武士の家来というのも大変だよ。
貧乏だからお金あげるよって正面から言うわけにもいかないんだから。
まああと1年ちょっとの辛抱だ。
史実通りなら再来年の夏、浅井・朝倉との戦いで戦功を上げた殿は近江400石の領主になるはず。
400石といえば今の4倍だ。
うーん、でも家臣とか増やすだろうし、結局貧乏な気もしてきた。
高浜城主になるのは14年後。
翌年には長浜城主になって2万石弱だ。
さすがにそこまで行ったら貧乏から脱却できるのだろうが、15年は長いよな。
やっぱり手柄を立てて出世するというのは遠回りなんだろうか。
出世はそのくらいのスピードでいいのだけれど、お金だけでも稼ぐ方法は無いものか。
俺だけだったら適当にガチャから出たものを売れば、簡単にそこそこの財産は築ける気がする。
でも、殿に俺のガチャの力を隠しつつも山内家主導で金稼ぎをしてもらうとなるとなかなか難しい。
そもそも殿は商売に向いてない。
絶望的に騙されやすいからね。
俺が特に働いてないのに食えているのを特に不思議にも思わないみたいだからね。
他の人からはたまに聞かれたりするから実家が裕福で支援を受けているような気配を匂わせることで誤魔化しているのに、殿は何も聞かないから。
気を使ってくれているのかもしれないけど、ちょっと人が良すぎる。
俺が他家の忍だったら今頃暗殺されているかもしれない。
まあ木っ端武士の殿を暗殺しても誰も得をしないんだけど。
はたして、お人好しの殿ができる商売がこの戦国の世にあるのだろうか。
最近では雪がちらつく日もあって、朝晩は信じられないくらい冷え込む。
静岡生まれ静岡育ちの俺にはこの寒さは大変にこたえる。
隣の隣の県なのに、なんでこんなに寒いんだよ。
嘘かホントか現代の地球は温室効果ガスによって温暖化が進んでいたようだし、実際に戦後から気温の上昇が見られたようだ。
戦国時代からの気温の推移なんて分からないけど、たぶん現代よりも寒いんじゃないかな。
静岡もまだみかんが育つような気候ではないのかもしれない。
岐阜でこんなに寒いんじゃ、北海道とか東北とかの人たちは大変なんだろうな。
この時代だとエアコンはもちろんのことコタツもストーブもまだ無いから、直火で身体を温めるしかないんだよね。
囲炉裏とか火鉢とかで。
通気性の良すぎるこの時代の建物じゃあ全然室温が上がらないんだ。
俺達はまだお金があるから綿入りの着物とかを着ることができるけれど、夏用も冬用も無い一着の着物を着まわして震えながら冬を越すような感じの人たちにとっては本当に冬というのはできるなら来て欲しくないものだろう。
冬は畑の野菜も凍っちゃうし、森に行っても動物は見当たらないし山菜も木の実も実っていない。
食べる物が無くなるという点でも、その日をギリギリで生きている人たちには致命的だ。
この時代は人口に対して食料の生産が足りていない時代だ。
どう頑張っても食べ物を手に入れることができない人というのが出てくる。
足りないものは人から奪うしかない。
だからこそ戦が後を絶たないんだ。
歴史に残らないような小さな争いが毎日起きて、負けた人は死に、勝った人が飯にありつける。
それが戦国時代の人々の常識なんだ。
この常識を変えない限りは、平和な世などは訪れないだろう。
そしてそれを変えようとしたからこそ、徳川家康は250年以上続く徳川幕府を作ることができたのだと俺は思う。
まあ運がよかっただけかもしれないけどね。
運も実力のうちでしょ。
ということで強運の持ち主徳川家康さん、俺に力を貸してくれ。
俺は火鉢にあたりながら10連ガチャをタップした。
演出は赤。
Sランク
なし
Aランク
なし
Bランク
・脇差
Cランク
・米×10
・日本酒×10
・白ワイン×10
・みりん×10
・木綿反物×3
Dランク
・ビーチサンダル
・フライ返し
・えんぴつ
・飴玉×10
うーん、まるで今の徳川家康さんを現しているかのようだ。
まだまだ徳川家康さんの運気はこんなものか。
再来年あたり武田との戦で大きい方漏らす予定だしな。
まあBランクが出ただけありがたい。
三河の方角に拝んでおこう。
ありがたやありがたや。
しかし、飴玉が出たか。
一度織田信長に献上したことのある飴玉だが、あれ以来結構気に入っちゃったみたいなんだよね。
戦場まで送れとか書かれた手紙が届くみたいで、たまに家臣の人が飴玉は無いかって殿に聞きに来るんだよ。
手に入ったら褒美をやるからすぐに岐阜城まで持ってくるように言われている。
褒美って何くれるんだろう。
俺はちょっとだけ期待しながら殿の屋敷に飴玉を持っていった。
まさか飴玉10個が米3俵になるとは。
米1俵は60キロ。
3俵で180キロだ。
現代で俺が食べていたような20キロ2980円の米であれば3万円にも満たない価値だ。
だけど食料の価格が高いこの時代では米3俵といえば1貫では買えないだろう。
1貫といえば永楽銭で1000枚。
現代の価値でいえば10万円は確実にあるだろう。
飴玉10個が10万円を越える価値になってしまった。
この間の戦で殿がもらった褒美が10貫くらいだったかな。
少しの申し訳なさを感じて、もらった米のうち2俵は殿に渡した。
まあ大体他所の武家だったらこのくらいの取り分になるだろう。
しかし殿は戦国時代に生まれるべきじゃなかったほどのお人好し。
もらいすぎだと渋ったので、屋敷の庭先を稽古に使わせてもらっている使用料だと言って押し切った。
勝三君の稽古は俺が個人的に受けたことだから使用料を払うべきなのに、殿は頑なに受け取らなかったんだ。
山内家は未だに家計が火の車なのにね。
武士は食わねど高楊枝とは言うけれど、さすがに食わないで生きていける武士は居ない。
最近では千代さんから文字を教わることが無くなったから、そろそろ山内家の台所事情が心配だったんだよね。
米2俵あれば少しは余裕ができたはずだ。
なかなか貧乏武士の家来というのも大変だよ。
貧乏だからお金あげるよって正面から言うわけにもいかないんだから。
まああと1年ちょっとの辛抱だ。
史実通りなら再来年の夏、浅井・朝倉との戦いで戦功を上げた殿は近江400石の領主になるはず。
400石といえば今の4倍だ。
うーん、でも家臣とか増やすだろうし、結局貧乏な気もしてきた。
高浜城主になるのは14年後。
翌年には長浜城主になって2万石弱だ。
さすがにそこまで行ったら貧乏から脱却できるのだろうが、15年は長いよな。
やっぱり手柄を立てて出世するというのは遠回りなんだろうか。
出世はそのくらいのスピードでいいのだけれど、お金だけでも稼ぐ方法は無いものか。
俺だけだったら適当にガチャから出たものを売れば、簡単にそこそこの財産は築ける気がする。
でも、殿に俺のガチャの力を隠しつつも山内家主導で金稼ぎをしてもらうとなるとなかなか難しい。
そもそも殿は商売に向いてない。
絶望的に騙されやすいからね。
俺が特に働いてないのに食えているのを特に不思議にも思わないみたいだからね。
他の人からはたまに聞かれたりするから実家が裕福で支援を受けているような気配を匂わせることで誤魔化しているのに、殿は何も聞かないから。
気を使ってくれているのかもしれないけど、ちょっと人が良すぎる。
俺が他家の忍だったら今頃暗殺されているかもしれない。
まあ木っ端武士の殿を暗殺しても誰も得をしないんだけど。
はたして、お人好しの殿ができる商売がこの戦国の世にあるのだろうか。
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