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二章
20 聖刻騎士団は戦いを観察する
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前方に番犬型、後方に兵隊型。
そしてさらに後方――森の茂みから、人形の法具たちとアギ族の対峙を見つめる三人の人間の姿があった。
「妙だな。アルトゥーサの住人らしき人間もいる。捕虜として捕まっているのか?」
木々の間に隠れながら、聖刻騎士団のスレムは言う。
最前列にいる集団の中に、アルトゥーサの住人らしき男がアギ族と肩を並べているのが見えた。
「なにか言ってますね。弱点がどうとか」
ここからだとよく聞こえない。
聖刻騎士団の一人、一番の若手であるイレイルは耳を澄ませて傾聴に努める。
「彼が第五位階なら、救い出さなければならない」
「おいおい」
三人いる騎士の三人目、アマジスが肩をすくめた。
「馬鹿なこというんじゃねえよ。どう見たって奴らの仲間じゃねえか。裏切り者だろ」
「それは話を聞いてみないとわからない」
「明白だろ」
「安易に断じるのは早計だ」
「……はぁ」
アマジスはあからさまに大きなため息をつく。
「こんなのが隊長かよ? その頭ん中神聖奥義書だけはどうにかならんかね」
「? ああ、まあ、そうだな」
言われた皮肉がわからず、スレムは曖昧にうなずいた。
アマジスはまた嘆息する。
「それで、戦況をどう見る?」
「こちらはマナナンガル二十五、フレイバグ四十。相手はこちらの兵力の半分くらいだ。これだけ戦力差があるのに加えて、そもそもお前は前線にいらないっつうの。指揮官のくせになんでこんな近くの現場まで来たんだよ。阿呆が。去れ」
アマジスは露骨に面倒くさそうに前方を眺める。
「状況を把握したほうがいいからだ。それに――神父様からいただいたご命令は、生かして捕まえることだ。犠牲者が出ないよう、様子を見ながら戦う必要がある」
スレムは足元を這っていた生首に太い蛇がついたような人形の法具――指令型を見下ろした。
ペナンガランを通して、自分たちは人形の法具におおまかな指示を出せる。
「生かして捕まえる、じゃなくて『なるべく』生かして捕まえる、だろ?」
アマジスは携えていたショートソードの柄を握り、さやから抜こうとする。
「つまり殺してもいいってことだ」
いつでも飛び出して首をはねに行ける。そんな気概を感じる。
「アマジスさん、それはさすがにちょっと解釈違いだと思いますが。あなたの言い方だと、不必要な殺しでも行っていいというようにも聞こえます」
イレイルが横から反論した。
背が小さいのをごまかすように、大きめの声量でしゃべっている。
「第六位階なんて何人死んでも変わらんだろ」
「そうとも限らないでしょう、審問してみなければ。あのアギ族と一緒にいる第五位階らしき男の人だって――」
イレイルがなにか言うより早く、アマジスは遮るようにショートソードを抜いた。
「だから、どこからどう見ても裏切り者だろ。第六位階を――人じゃないものどもを擁護するのかよ」
「僕はただ、慈悲を与える余地があると……」
「慈悲なんてあるかよ。おい。第三位階のくせに、お前は第六位階の臭いがするなあ。神父に告発するか? それともここで処理してやろうか? あ?」
「…………」
「この間合いなら、お前の《弓の法具》より俺の法具のほうが有利だからなあ。処理すんなら一瞬だぞ?」
「無益な言い争いはやめろ。剣をしまえ」
スレムが横からぴしゃりと言った。
「……へいへい」
アマジスは口を曲げたあと、呆れたように剣をしまった。
「本気じゃねえよ。まったく冗談が通じねえ奴らだぜ」
言っているうちに、人形の法具が動き出し、アギ族と激突する。
モルガの近くで人形の法具を見据えるアルトゥーサの町民――エンを見つめて、スレムはまた理解し難い顔でつぶやいた。
「しかしなぜこんなところに……?」
まだ言ってやがる、とアマジスがそれを聞いてぼやいた。
そしてさらに後方――森の茂みから、人形の法具たちとアギ族の対峙を見つめる三人の人間の姿があった。
「妙だな。アルトゥーサの住人らしき人間もいる。捕虜として捕まっているのか?」
木々の間に隠れながら、聖刻騎士団のスレムは言う。
最前列にいる集団の中に、アルトゥーサの住人らしき男がアギ族と肩を並べているのが見えた。
「なにか言ってますね。弱点がどうとか」
ここからだとよく聞こえない。
聖刻騎士団の一人、一番の若手であるイレイルは耳を澄ませて傾聴に努める。
「彼が第五位階なら、救い出さなければならない」
「おいおい」
三人いる騎士の三人目、アマジスが肩をすくめた。
「馬鹿なこというんじゃねえよ。どう見たって奴らの仲間じゃねえか。裏切り者だろ」
「それは話を聞いてみないとわからない」
「明白だろ」
「安易に断じるのは早計だ」
「……はぁ」
アマジスはあからさまに大きなため息をつく。
「こんなのが隊長かよ? その頭ん中神聖奥義書だけはどうにかならんかね」
「? ああ、まあ、そうだな」
言われた皮肉がわからず、スレムは曖昧にうなずいた。
アマジスはまた嘆息する。
「それで、戦況をどう見る?」
「こちらはマナナンガル二十五、フレイバグ四十。相手はこちらの兵力の半分くらいだ。これだけ戦力差があるのに加えて、そもそもお前は前線にいらないっつうの。指揮官のくせになんでこんな近くの現場まで来たんだよ。阿呆が。去れ」
アマジスは露骨に面倒くさそうに前方を眺める。
「状況を把握したほうがいいからだ。それに――神父様からいただいたご命令は、生かして捕まえることだ。犠牲者が出ないよう、様子を見ながら戦う必要がある」
スレムは足元を這っていた生首に太い蛇がついたような人形の法具――指令型を見下ろした。
ペナンガランを通して、自分たちは人形の法具におおまかな指示を出せる。
「生かして捕まえる、じゃなくて『なるべく』生かして捕まえる、だろ?」
アマジスは携えていたショートソードの柄を握り、さやから抜こうとする。
「つまり殺してもいいってことだ」
いつでも飛び出して首をはねに行ける。そんな気概を感じる。
「アマジスさん、それはさすがにちょっと解釈違いだと思いますが。あなたの言い方だと、不必要な殺しでも行っていいというようにも聞こえます」
イレイルが横から反論した。
背が小さいのをごまかすように、大きめの声量でしゃべっている。
「第六位階なんて何人死んでも変わらんだろ」
「そうとも限らないでしょう、審問してみなければ。あのアギ族と一緒にいる第五位階らしき男の人だって――」
イレイルがなにか言うより早く、アマジスは遮るようにショートソードを抜いた。
「だから、どこからどう見ても裏切り者だろ。第六位階を――人じゃないものどもを擁護するのかよ」
「僕はただ、慈悲を与える余地があると……」
「慈悲なんてあるかよ。おい。第三位階のくせに、お前は第六位階の臭いがするなあ。神父に告発するか? それともここで処理してやろうか? あ?」
「…………」
「この間合いなら、お前の《弓の法具》より俺の法具のほうが有利だからなあ。処理すんなら一瞬だぞ?」
「無益な言い争いはやめろ。剣をしまえ」
スレムが横からぴしゃりと言った。
「……へいへい」
アマジスは口を曲げたあと、呆れたように剣をしまった。
「本気じゃねえよ。まったく冗談が通じねえ奴らだぜ」
言っているうちに、人形の法具が動き出し、アギ族と激突する。
モルガの近くで人形の法具を見据えるアルトゥーサの町民――エンを見つめて、スレムはまた理解し難い顔でつぶやいた。
「しかしなぜこんなところに……?」
まだ言ってやがる、とアマジスがそれを聞いてぼやいた。
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