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二章
21 限りなく攻撃力を極めた結果がこれです
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先陣を切るモルガ。
横目で見ると、モルガは敵のブレードを槍で防ぎ、
「ぬんッッ!」
懐に入ると拳を全力で振るっていた。
拳はマナナンガルの胸へ命中。
拳の形にボディがひしゃげてボールのように軽やかに吹き飛び、後方のマナナンガル数体を巻き込んで転倒させる。
巨大な身長と鋼鉄のような全身の筋肉があってこその強烈なパワープレイ。
戦い方が化け物すぎる。
そして、他の戦士たちもそれにならってショートスピアで敵の武器を防ぎつつ、人形の法具をぶん投げたり蹴ったり殴ったり、モルガと同様純粋な力で破壊しにかかる。
挟撃を警戒して、里の周囲にも戦士たちを配置している。
その分主戦場の戦力は削られているが、それを補えるほどの精鋭を集めたらしい。
目の前の光景が、にわかには信じられない。
「マジで金属のボディを拳で潰してるんだが?」
目をこすってもう一回見てみても見える光景は同じだった。
「せ、世界って広いなあ……」
深く考えないでおこう。
大事なのは、精鋭たちの筋肉なら人形の法具に対抗しうるということだ。
俺はゲッカレイメイを片手に、
「ダッタ、俺たちも戦うぞ」
「だった!」
突撃してきたフレイバグを見えない盾で防いだ。
けど、ダッタの筋肉量ではモルガのように直接潰すことはできない。
光っている部分には手がかろうじて入るくらいの隙間が空いているから、なにか刃物を差し込むことは可能だ。
だが、ショートランスでは、金属を傷つけるほどの威力はそうそう出せない。
文字が刻まれているのは表面ではなく裏側だ。
傷つける隙を衝くのは難儀だろう。
かといって、俺の攻撃はたった一度きり。
フレイバグ一体を道連れにするのが精一杯だ。
俺が防いでいる間にダッタが攻撃して倒してくれるのが理想なのだが、彼女の腕力が足りない。
考えあぐねていると、すでにダッタは動いていた。
俺の盾にぶつかって足を止めていたフレイバグの懐へ潜り込み、後ろ足を掴んで持ち上げる。
そのまま回転するように体をひねり、近くの岩にフレイバグの頭を叩きつけた。
フレイバグは頭が潰れて光を失い、動かなくなる。
全身のバネと遠心力を利用して頭を叩き潰す――やっぱりダッタは、戦闘センスがずば抜けて高い。
だが、全体を見ると、徐々に押されてきている。
「対応できているのは一部だけか」
負傷し、血を流して倒れている戦士たちが出てきている。
仲間はそれもお構いなしにとにかく敵を蹴散らすことに注力していた。
「けど、殺されてはいないのか……?」
倒れた戦士は気を失ってはいるものの、呼吸で胸が上下しているのがわかった。
情けをかけられている――わけではないよな。
だが、このままでは消耗戦になる。
松明があるとはいえ、夜中で視界もおぼつかない。
人型のマナナンガルとフレイバグの二体が目をつけてこちらに詰め寄ってきた。
すかさず盾で防ぐ。
ダッタ、いけるか?
俺が目配せをすると、ダッタはうなずいた。
フレイバグのブレードをかわし、マナナンガルの長い腕についている棍棒は槍で受け流す。
受け流しざま、足を払ってマナナンガルを転倒させた。
ナイフでフレイバグをいなしながら、転倒したマナナンガルの脇の隙間からちょうどほのかに光っている場所へ向けて槍を差し込み、てこの原理で槍の柄を踏み抜き、中の文字を破壊する。
武器であるショートスピアもその拍子で破壊されるが、
「ダッタ!」
俺は近くに置いていた予備を投げてよこした。
ダッタはしっかりと戦えているが、味方が次第に手こずりだしている。
それに、人形の法具の戦法が変わっていた。
ばらばらに各個撃破しようとしていたのが、二体で一人を相手するようになっていた。
攻め方を意図的に変えたのだ。
指揮官がいる。
たぶん森の中で、戦況を窺って人形の法具に指令を出しているやつがいるのだ。
「森の中! だれか攻撃できるやつがいるか!? 指揮官がいる可能性が高い!」
叫ぶと、近くにいた一人が反応する。
「本当だな!?」
「可能性が高いが、注意してくれ! なるべく複数で――」
「いらねえよ! 背中は守らなくていい! ぶっ殺してくる!」
森へ向かって駆けた若い男の戦士が、しかし、次の瞬間に切り伏せられて倒れた。
「やっぱりよぉ、自分で戦ったほうが実感湧くよな。戦っている実感が!」
森の中から、チンピラみたいな若い男が一人出てきた。
つけている鎧は胸当てと脚の脛当てだけで、かなり軽装備だ。
武器は手に持つショートソード一本のみ。
何者かなんて、考えなくてもわかる。
「聖刻騎士団! やはり来ていたのか……!」
まずい。
聖刻騎士団の騎士は、全員《第三位階》以上。
第三位階以上の人間は、個別に法具を持つことが許されている。
未知の法具を持っている敵が来やがった。
横目で見ると、モルガは敵のブレードを槍で防ぎ、
「ぬんッッ!」
懐に入ると拳を全力で振るっていた。
拳はマナナンガルの胸へ命中。
拳の形にボディがひしゃげてボールのように軽やかに吹き飛び、後方のマナナンガル数体を巻き込んで転倒させる。
巨大な身長と鋼鉄のような全身の筋肉があってこその強烈なパワープレイ。
戦い方が化け物すぎる。
そして、他の戦士たちもそれにならってショートスピアで敵の武器を防ぎつつ、人形の法具をぶん投げたり蹴ったり殴ったり、モルガと同様純粋な力で破壊しにかかる。
挟撃を警戒して、里の周囲にも戦士たちを配置している。
その分主戦場の戦力は削られているが、それを補えるほどの精鋭を集めたらしい。
目の前の光景が、にわかには信じられない。
「マジで金属のボディを拳で潰してるんだが?」
目をこすってもう一回見てみても見える光景は同じだった。
「せ、世界って広いなあ……」
深く考えないでおこう。
大事なのは、精鋭たちの筋肉なら人形の法具に対抗しうるということだ。
俺はゲッカレイメイを片手に、
「ダッタ、俺たちも戦うぞ」
「だった!」
突撃してきたフレイバグを見えない盾で防いだ。
けど、ダッタの筋肉量ではモルガのように直接潰すことはできない。
光っている部分には手がかろうじて入るくらいの隙間が空いているから、なにか刃物を差し込むことは可能だ。
だが、ショートランスでは、金属を傷つけるほどの威力はそうそう出せない。
文字が刻まれているのは表面ではなく裏側だ。
傷つける隙を衝くのは難儀だろう。
かといって、俺の攻撃はたった一度きり。
フレイバグ一体を道連れにするのが精一杯だ。
俺が防いでいる間にダッタが攻撃して倒してくれるのが理想なのだが、彼女の腕力が足りない。
考えあぐねていると、すでにダッタは動いていた。
俺の盾にぶつかって足を止めていたフレイバグの懐へ潜り込み、後ろ足を掴んで持ち上げる。
そのまま回転するように体をひねり、近くの岩にフレイバグの頭を叩きつけた。
フレイバグは頭が潰れて光を失い、動かなくなる。
全身のバネと遠心力を利用して頭を叩き潰す――やっぱりダッタは、戦闘センスがずば抜けて高い。
だが、全体を見ると、徐々に押されてきている。
「対応できているのは一部だけか」
負傷し、血を流して倒れている戦士たちが出てきている。
仲間はそれもお構いなしにとにかく敵を蹴散らすことに注力していた。
「けど、殺されてはいないのか……?」
倒れた戦士は気を失ってはいるものの、呼吸で胸が上下しているのがわかった。
情けをかけられている――わけではないよな。
だが、このままでは消耗戦になる。
松明があるとはいえ、夜中で視界もおぼつかない。
人型のマナナンガルとフレイバグの二体が目をつけてこちらに詰め寄ってきた。
すかさず盾で防ぐ。
ダッタ、いけるか?
俺が目配せをすると、ダッタはうなずいた。
フレイバグのブレードをかわし、マナナンガルの長い腕についている棍棒は槍で受け流す。
受け流しざま、足を払ってマナナンガルを転倒させた。
ナイフでフレイバグをいなしながら、転倒したマナナンガルの脇の隙間からちょうどほのかに光っている場所へ向けて槍を差し込み、てこの原理で槍の柄を踏み抜き、中の文字を破壊する。
武器であるショートスピアもその拍子で破壊されるが、
「ダッタ!」
俺は近くに置いていた予備を投げてよこした。
ダッタはしっかりと戦えているが、味方が次第に手こずりだしている。
それに、人形の法具の戦法が変わっていた。
ばらばらに各個撃破しようとしていたのが、二体で一人を相手するようになっていた。
攻め方を意図的に変えたのだ。
指揮官がいる。
たぶん森の中で、戦況を窺って人形の法具に指令を出しているやつがいるのだ。
「森の中! だれか攻撃できるやつがいるか!? 指揮官がいる可能性が高い!」
叫ぶと、近くにいた一人が反応する。
「本当だな!?」
「可能性が高いが、注意してくれ! なるべく複数で――」
「いらねえよ! 背中は守らなくていい! ぶっ殺してくる!」
森へ向かって駆けた若い男の戦士が、しかし、次の瞬間に切り伏せられて倒れた。
「やっぱりよぉ、自分で戦ったほうが実感湧くよな。戦っている実感が!」
森の中から、チンピラみたいな若い男が一人出てきた。
つけている鎧は胸当てと脚の脛当てだけで、かなり軽装備だ。
武器は手に持つショートソード一本のみ。
何者かなんて、考えなくてもわかる。
「聖刻騎士団! やはり来ていたのか……!」
まずい。
聖刻騎士団の騎士は、全員《第三位階》以上。
第三位階以上の人間は、個別に法具を持つことが許されている。
未知の法具を持っている敵が来やがった。
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