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三章
47 聖刻騎士団は逆に襲撃される
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探りを入れるための二本の矢は、再び防がれた。
部屋の中も途中で暗くなり、異端の者たちは窓から離れるように避難している。
「うーん、対応が早いな」
やや小高い場所にある家と家の間にある茂みへ潜みながら、イレイルは一人うなった。
「冷静なやつが指示を出しているのかな? やはり敵は馬鹿じゃない。異端に手を貸す見えない盾の使い手。あいつを倒すのが先だ」
様子を見る。
まだ矢はつがえない。
自分はアマジスとは違う。確実に追い詰めたい。
イレイルが敵の――エンの姿を認めたのはスレムと参加していたゴミ拾いの奉仕活動のときだった。
なにやらスレムたちと揉めていたのを発見したが、何事もなく収まったため、気になってあとをつけていたのだ。
あのアギ族の少女に気づかれそうになったため、ターゲットをニクネーヴィンに移して尾行を継続していたら、思わぬ発見があった。
どうやら彼らは、わいせつ教団として各地でよこしまな活動を行っているらしい。
「おかしいのは、ナタロン神父様だ」
イレイルがニクネーヴィンのことを報告したら、ナタロン神父は放っておけと言い、一方的に話を切った。
よもや、裏でわいせつ教団とつながっているということはあるまいか。
スレムはそれに関与しているのかいないのか、白か黒か不明瞭だったため、声をかけずに独断で屋敷までやってきてしまった。
「ただの異端じゃないか。庇い立てするなんて、神への冒涜じゃないのか」
手にしている弓の法具が、ほのかに光っている。
数ある法具の中でも、弓の法具を十全に扱えるものは少ない。
ほかの法具と比べて高い練度が必要だった。
それでいて、攻撃力がずば抜けて高いわけではない。だが、使いこなせば強い。
相手を近づけずに、一方的に、しかも集団をまとめて蹂躙することも可能だ。
イレイルは戦闘経験はそれほど多いわけではないが、弓の法具を使いこなしていることに高いプライドを持っていた。
矢の軌道を変化させて複数の矢を同時に着弾させ、こちらの人数を多いと敵に錯覚させる技術もそうだ。
矢の操作と命中精度には、並々ならない自信がある。
目的の達成が困難であればあるほど、集中力が増していく。
仕留められる。
常人の数倍はある自分の超人的な視力と、軌道を変える矢を射ることができる弓の法具なら。
だが、その仕留める方法をどうしたものか。
「…………!」
ターゲットが移動した。
窓際に近づいてきたのだ。
だが近づいてきたのは四隅の一角。壁と見えない盾で四方からの矢を防ぐつもりだ。
「ずいぶん防御を固めるなぁ。あれじゃあ防げはしても、僕への攻撃はできないんじゃないか」
だがダッタがいないのが気になる。
面倒だ。自分が攻撃できる場所まで、あぶり出すしかない。
「よし、作戦変更。火矢を放って、家を燃やそう。たまらず外に飛び出したところを狙って倒す」
自分の居場所も知られてしまうかもしれないが、リスクはつきものだ。
アマジスが好きそうな方法なのが少し癪だが。
「僕だって、安全な後方から援護射撃するだけの、ただのお助け役に甘んじるつもりはない。異端者はすべて、僕の手で捕まえてやる」
いずれは隊の指揮を任せられるようになりたい。そのためには手柄が必要だ。
松明を作り、布切れを巻いた鏃を油で湿らせたものを複数作り、火を点ける。
矢をつがえる。エンたちのいる部屋に向かって、狙いを絞る。
「ねえ」
いきなり背後で声がして――
「――!」
イレイルは慌ててつがえた矢を声のする方へ向けた。
「ちょっと邪魔だよ」
金糸の刺繍をあしらった白いケープをかぶった、金髪の美少年だった。
年齢は十八歳前後ほどだろうか。
自分とそれほど違わないように見える。
整った顔が、不機嫌そうに歪んでいる。
「だ、誰だ」
「どいてくれる?」
問いかけるも、話にならない。
「彼に――ミナナゴの眷属のところへあいさつに行けない」
なにかよくわからないことを言われたあと――
「うあっ!?」
持っていた矢がばらばらになって手から離れた。
慌てて矢筒に入っている矢を取りながらうろたえる。
「なっ、なにが起こっ――!?」
金髪の少年の背中。
そこから、昆虫の節のように伸びた細い剣が六本見えた。
それが意思を持っているかのように動きながら、まっすぐイレイルへ襲いかかる。
「ぐっ!」
防御する間も術もなく手足を串刺しにされて、イレイルはその場に転がる。
「こんなものあぶないよ」
少年は一緒に転がった松明を足で踏みつけて鎮火すると、
「次邪魔したら殺すからね。まあ、そのままでもそのうち死ぬけど」
イレイルに無邪気な笑顔を向けた。
「…………!」
地面に転がりながら、屋敷へ向かう少年を何もできずに眺めやる。
背中の剣には神聖文字など刻まれていない。
だがその背中は、法具のように光っている。
なんだこれは。こんな法具もあるのか? ゲセフェン合金が使われているようには見えないが。
混乱していると、少年の背中から生えていた剣が崩れて消えた。
「ミナナゴの信徒は久しぶりだ。どんなプロヴィデンスを持っているんだろう?」
少年は弾む口調でつぶやくと、跳躍した。
まるで飛躍の法具を使うアマジスのように高く、力強く飛び上がった。
跳躍した少年はそのまま屋敷三階の、エンたちのいる部屋の方へ突っ込むと、再び背中に細い剣を生やして、窓や壁を破壊しながら侵入する。
部屋の中も途中で暗くなり、異端の者たちは窓から離れるように避難している。
「うーん、対応が早いな」
やや小高い場所にある家と家の間にある茂みへ潜みながら、イレイルは一人うなった。
「冷静なやつが指示を出しているのかな? やはり敵は馬鹿じゃない。異端に手を貸す見えない盾の使い手。あいつを倒すのが先だ」
様子を見る。
まだ矢はつがえない。
自分はアマジスとは違う。確実に追い詰めたい。
イレイルが敵の――エンの姿を認めたのはスレムと参加していたゴミ拾いの奉仕活動のときだった。
なにやらスレムたちと揉めていたのを発見したが、何事もなく収まったため、気になってあとをつけていたのだ。
あのアギ族の少女に気づかれそうになったため、ターゲットをニクネーヴィンに移して尾行を継続していたら、思わぬ発見があった。
どうやら彼らは、わいせつ教団として各地でよこしまな活動を行っているらしい。
「おかしいのは、ナタロン神父様だ」
イレイルがニクネーヴィンのことを報告したら、ナタロン神父は放っておけと言い、一方的に話を切った。
よもや、裏でわいせつ教団とつながっているということはあるまいか。
スレムはそれに関与しているのかいないのか、白か黒か不明瞭だったため、声をかけずに独断で屋敷までやってきてしまった。
「ただの異端じゃないか。庇い立てするなんて、神への冒涜じゃないのか」
手にしている弓の法具が、ほのかに光っている。
数ある法具の中でも、弓の法具を十全に扱えるものは少ない。
ほかの法具と比べて高い練度が必要だった。
それでいて、攻撃力がずば抜けて高いわけではない。だが、使いこなせば強い。
相手を近づけずに、一方的に、しかも集団をまとめて蹂躙することも可能だ。
イレイルは戦闘経験はそれほど多いわけではないが、弓の法具を使いこなしていることに高いプライドを持っていた。
矢の軌道を変化させて複数の矢を同時に着弾させ、こちらの人数を多いと敵に錯覚させる技術もそうだ。
矢の操作と命中精度には、並々ならない自信がある。
目的の達成が困難であればあるほど、集中力が増していく。
仕留められる。
常人の数倍はある自分の超人的な視力と、軌道を変える矢を射ることができる弓の法具なら。
だが、その仕留める方法をどうしたものか。
「…………!」
ターゲットが移動した。
窓際に近づいてきたのだ。
だが近づいてきたのは四隅の一角。壁と見えない盾で四方からの矢を防ぐつもりだ。
「ずいぶん防御を固めるなぁ。あれじゃあ防げはしても、僕への攻撃はできないんじゃないか」
だがダッタがいないのが気になる。
面倒だ。自分が攻撃できる場所まで、あぶり出すしかない。
「よし、作戦変更。火矢を放って、家を燃やそう。たまらず外に飛び出したところを狙って倒す」
自分の居場所も知られてしまうかもしれないが、リスクはつきものだ。
アマジスが好きそうな方法なのが少し癪だが。
「僕だって、安全な後方から援護射撃するだけの、ただのお助け役に甘んじるつもりはない。異端者はすべて、僕の手で捕まえてやる」
いずれは隊の指揮を任せられるようになりたい。そのためには手柄が必要だ。
松明を作り、布切れを巻いた鏃を油で湿らせたものを複数作り、火を点ける。
矢をつがえる。エンたちのいる部屋に向かって、狙いを絞る。
「ねえ」
いきなり背後で声がして――
「――!」
イレイルは慌ててつがえた矢を声のする方へ向けた。
「ちょっと邪魔だよ」
金糸の刺繍をあしらった白いケープをかぶった、金髪の美少年だった。
年齢は十八歳前後ほどだろうか。
自分とそれほど違わないように見える。
整った顔が、不機嫌そうに歪んでいる。
「だ、誰だ」
「どいてくれる?」
問いかけるも、話にならない。
「彼に――ミナナゴの眷属のところへあいさつに行けない」
なにかよくわからないことを言われたあと――
「うあっ!?」
持っていた矢がばらばらになって手から離れた。
慌てて矢筒に入っている矢を取りながらうろたえる。
「なっ、なにが起こっ――!?」
金髪の少年の背中。
そこから、昆虫の節のように伸びた細い剣が六本見えた。
それが意思を持っているかのように動きながら、まっすぐイレイルへ襲いかかる。
「ぐっ!」
防御する間も術もなく手足を串刺しにされて、イレイルはその場に転がる。
「こんなものあぶないよ」
少年は一緒に転がった松明を足で踏みつけて鎮火すると、
「次邪魔したら殺すからね。まあ、そのままでもそのうち死ぬけど」
イレイルに無邪気な笑顔を向けた。
「…………!」
地面に転がりながら、屋敷へ向かう少年を何もできずに眺めやる。
背中の剣には神聖文字など刻まれていない。
だがその背中は、法具のように光っている。
なんだこれは。こんな法具もあるのか? ゲセフェン合金が使われているようには見えないが。
混乱していると、少年の背中から生えていた剣が崩れて消えた。
「ミナナゴの信徒は久しぶりだ。どんなプロヴィデンスを持っているんだろう?」
少年は弾む口調でつぶやくと、跳躍した。
まるで飛躍の法具を使うアマジスのように高く、力強く飛び上がった。
跳躍した少年はそのまま屋敷三階の、エンたちのいる部屋の方へ突っ込むと、再び背中に細い剣を生やして、窓や壁を破壊しながら侵入する。
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