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第四話 気になる相手と新しい侍女
しおりを挟む「今日は1日お休みになっていて下さいね!」
「わかったわかった。大人しく寝てるわよ」
ネアに軽くポカポカと叩かれ、大人しくベッドに入った。
「失礼します、姫殿下」
「どうぞ」
さっきの小瓶の鑑定が出来たようだ。
「調べた所、大丈夫みたいです。」
「じゃあ使わせてもらうわ。苦労をかけたわね」
「とんでもございません。ゆっくりとお休みになられて下さいね」
「ええ。」
…あ、どうやって使うのか聞くの忘れてた。
とりあえず、開けてみるか。
瓶の蓋を緩めるだけで、すごくいい香りがした。
うっとりとした気分になって、どんどん眠たくなってくる。
…あ、意識途切れた。
小鳥のさえずりで目を覚ました。
「んん……」
ベッドからおりて、ふわぁと小さくあくびをした。
……よく寝た。
「おはようございます、スノーリリー様。」
「ネア!おはよう」
「昨晩はよくお休みになられたようですね。」
「ええ。とってもいい気分。今度先生に会ったらお礼を言わなくてね」
「はい。」
「今日の予定を教えてくれる?」
「かしこまりました。
午前は申請された書類に目を通していただき、判子をお願い致します。
午後からなのですが……、なにやら王都で騒ぎがあったようなのです。そのことについて公爵からお話があるとのことです。」
「……騒ぎ?」
「詳しくは聞けませんでしたが、違法薬物が出回っているとの情報が…」
「わかったわ。午後の件については早急に対処しなくてはならない様ね。着替えるから準備をお願い。」
「かしこまりました。」
ドレスを着て、髪をセットしてもらい、外に出た。
執務室に向かうには庭園を通るんだよね。
「……なによその目!!」
庭園に、パンっという音が響いた。
まるで、人をぶった様な音だった。
「……何事?」
角を曲がった所から聞こえてきたよね…?
早歩きで角を曲がった。
……うぅわ、ホント、なんで問題事にはこのヒロインが関わってんだろ…。
角を曲がって見た光景は、スカーレットが侍女の頬を叩いて、その侍女が地面に膝をついている所だった。
……暴力反対。止めるか。
「何事かしら、スカーレット」
「お、お姉様!ご機嫌麗しゅう…」
こちらに気がついたスカーレットが急いで礼をして来た。
膝をついていた侍女も、立ち上がって礼をしようとしていたが、立たなくてもいいと、手で制した。
「大丈夫?」
膝をつく侍女の頬に触れた。
……うわ、かっわいい。青い瞳に、茶髪のツインテール。
本当にお人形さんみたいだ…。思わず、見とれてしまっていた。
この子…確か第二王女宮の侍女の、シャルド・ヴィター……って子よね。一個下の16歳。
一応自分の宮と第二王女宮の侍女の名前は覚えた。
「……第一王女殿下?」
じーっとシャルドの顔を見ていると、不安そうにシャルドがこちらを見ていた。
「…あっ、ごめんなさいね。あまりにも可愛い子だったから見とれてしまったようね。
立てる?シャルド・ヴィター。」
と、手を差し出した。
「な、何で名前…」
「覚えたのよ。」
差し出された手に、シャルドが手を乗せた。
その小さく白い手を、グイッと引っ張った。
「ぶ、無礼者!次期女王陛下のお手を掴むなど…!」
どうやらスカーレットは無視されたことが気に入らなかったらしいな。
つーかその女王の座を狙ってるお前が言うなっての。
「あら、差し出したのにその手を取らぬ方が無礼ではなくて?スカーレット。なんのために差し伸べたと思っているのかしら」
「そ、それは……」
「しかも、何?今の行動……。王族であれば何をしても許されると思っているのなら、あなたの王籍剥奪も考えなければなりません」
「は!?それだけで……?」
「それだけで、よ。王族は国を、国民を導くための存在よ。その王族であるあなたが、虐げてどうするの。」
「だ、だけどお姉様にそんな権利……!!」
「申し出れば通る申請だと思うわよ。」
声のトーンを下げた。
「う…、申しわけありません。」
……やっと引いたか。この頑固者め。
「……ごめんなさいネア。ちょっと公務に遅れてもいいかしら?今日の分はきっちり終わらせるから。」
「承知いたしました。主の仰せのままに。」
「いらっしゃい。」
シャルドの手を引いて、執務室まで来た。
「……これでよしっ」
腫れた頬を、ネアに手当してもらった。
「あ、ありがとう……」
「いえいえ!」
「あの、王女殿下…。先程はありがとうございました。」
「いいえ。それより、いつも暴力をふるわれるの?」
「……大変申し上げにくいのですが、はい。」
…シャルド・ヴィター。えらく落ち着いた子ね。
いや、落ち着きというよりかは……、冷めきった目をしているだけ?
「……愚妹が迷惑をかけました。ごめんなさい」
と、頭をさげた。
「お、王族が簡単に頭を下げないで下さい!」
「まぁしっかりした子だこと。強制はしないけど私の侍女になるつもりはない?」
「えっ」
「王女宮で働いてるってことは、有能ってことだもの。どう?」
「……図々しいことを申すようですが、私の家族を守っていただけるなら、ご好意に甘えさせていただきます。」
「家族?」
「はい。……私には妹が2人おりまして、両親は亡くなっていて、私がかせいでいるのですが……、スカーレット様は、逆らえば人質に妹達をとる、と口癖のように言っておりまして……」
「……なるほどね。いいわ。その妹2人はこちらで面倒を見ましょう」
「そ、そんなっ!たかが侍女の家族をですか!?」
「私には周りの信用ってものがあまりない。今、味方をつけるなら、対価が必要でしょう?
いいのよ。それであなたが私に真に仕えてくれるなら、それであなたが、少しでも息苦しい思いをしなくて良いのなら。」
そう言うと、シャルドは弾かれたように顔を上げた。
そして、膝を折った。
「私、シャルド・ヴィターは、第一王女、スノーリリー・ベル・フィオンシーナ様に一生の忠誠を、ここに誓います。私は体術も使えますので、必ずお役にたちましょう。」
……体術まで使えるとは、本当に有能だな。
今は対価を支払ってでも、見方を作らなくちゃ。
「さぁ、顔を上げてシャルド。」
顔を上げたシャルドの胸に、赤いリボンをつけた。
「今日からよろしくね。妹達のことはすぐにでも対処させます。」
「ありがとう……ございます。」
「あの子は私の専属侍女のネアよ。
専属侍女の先輩だから、色々教えてもらってね。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ!」
「さ、仕事しなくっちゃね。」
こうして私は新しい侍女を迎え入れたのだった。
「午後からは先生がいらっしゃるそうですよ」
「先生?」
「王宮専属医のコルゼ先生ですよ。」
「…そうなの」
「王宮専属医の先生って、どんな方なのですか?」
と、シャルドが尋ねた。
「…うーん、変な人、かな」
「変……ですか」
と言うのに、ふっと頬を緩ませた。
「だって私の事女の子扱いするのよ?変でしょ」
「…スノーリリー様、楽しそうですね」
「え?」
「その先生のこと、気になっておられるのですか?」
「え……?」
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