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66.宰相side

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 頭の痛い問題が起きた。
 王太子夫妻が王女殿下を王立学園にさせると言い出してきた。


 
「クソが……」

「下品だぞ」

「上品に話し合っている場合か? 王女殿下に何を学ばせる気だ?」

「学ぶというよりも、結婚相手を探しに行かせる気なんだろう」

「本気か?」

「王太子妃はそのつもりだろう」

 それが本当なら馬鹿げた話だ。
 私や他の者達の呆れと嘆きを知らぬかのように王女殿下は編入してしまった。


 数日後、王太子夫妻に怒鳴り込まれた。


「どういうことだ、宰相!」
 
「今度は何でしょう」

「リリアナのクラスには下位貴族しかいないのよ! 何でよ! 何で高位貴族が一人もいないのよ!」

 ヒステリックに喚く王太子妃の声が頭に響く。
 もう少しボリュームを押さえる事はできないのか。

「王女殿下がだと判断されただけです」

 私の言葉に王太子妃は涙目になった。

「わ、私の実家が男爵だから? だからリリアナを差別するのね! 酷いわ!!」

 わっ、と泣き出した王太子妃は役者だ。事情を知らない者が見たら「悲劇の女性」としか思われないだろう。

「宰相、リリアナは王族だ!それがどうして下位貴族クラスになるんだ!!」

 ……学園の資料を読まなかったのだろうか?
 もう相手にするのが疲れてきた。

「学園では高位貴族と下位貴族とで学ぶ建物が別になっています。それと同時に、入学テストを受けて各個人に見合ったクラスに入ります」

「「え!?」」

 驚愕に満ちた王太子夫妻の表情から察した。知らなかった、という事が。学園の資料を二人揃って読んでないとは……。

「な、何故だ!私達の時はそんなものはなかったぞ!?」

「はい。殿下の時は皆が同じ学舎でした。身分や成績にかかわらず、より多くの者達と交流できるようにという学園側の教育方針でした。しかし、十数年前にによるのせいで多くの悲劇が起こりました。それ故に、学園も大きくをしたようです。元々、高位貴族と下位貴族とでは素養からして違います。貴族としての心構えや考え方、各自の学ぶレベルの高さ、その有りようまでも……。勿論、やり過ぎではないかという意見もありましたが『に秩序を乱されないための措置』だと関係者に言われると『その通り』としか答えられません」

 自覚があるのだろう。
 マクシミリアン殿下は俯きがちになった。王太子妃は……納得していない顔だ。

「それならリリアナはどうなるの!? 王族よ!」

「……編入試験の結果としか言いようがありません。王族としての立ち居振る舞い、資質、覚悟、教養、ありとあらゆる面において下位貴族側と判断されたのでしょう。編入にあたりお伝えしたと思いますが『王族の試験は高位貴族よりも厳しい目で見られますので覚悟して望んでください』と」

「そんな!何のためにリリアナを編入させたと思っているのよ!」

「学友と勉学に励むためでは? 編入時の面接ではそのように発言なさっていたと聞き及んでおります」

「~~~~……っ」

 蒼白の王太子と睨みつけてくる王太子妃。
 ここまで真逆の反応を見せる夫婦も珍しい。
 


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