【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子

文字の大きさ
106 / 112

106.宰相(元公爵)side

しおりを挟む
「今度はE地区か……」

「宰相閣下、如何致しましょう?」

「残っている部隊を向かわせるしかない」

「宜しいのですか?」

「他に手立てはない以上は致し方ない。援軍の要請はどうだ?」

「そ、それが……」

「無理か。まぁ、そうだろうな。反乱軍に参加していない貴族は日和見主義ばかりだ。負けると分かっているところに援軍など出さないか」

「閣下……」

 私の言葉に、部下たちは悲壮感を漂わせている。
 問いかけた部下など必死に唇を噛んでいる程だ。
 どうやら私に「援軍はくる」「希望はまだある」と言って欲しかったようだ。だがな、そんな現実逃避などはできん。

「エンリケ王はどうだ」

「は、陛下は床についたままです」

「まだ夢の中か」

「はい」

 私も部下の事は言えない。
 その言葉を否定して欲しかった。

 騎士団が暴徒側に付いた事を知り、また援軍を要請する手紙の返事すらない状況では如何に楽観的な王でも理解せざるを得なかった。貴族に見捨てられたのだと。失った腕が痛むといい、現実を受け入れる事ができずにそのまま夢の世界に逃避してしまわれた。

 どこまで醜態を晒せば気が済むのか。

 反乱軍に殺される前に暴徒共の手にかかって死ぬ可能性が高い。
 それをバカ王も理解したのだろう。
 まだ完全に夢の世界の住人になってはいないが時間の問題だ。


 王宮からの脱出を考えなければならない。
 秘密通路を知るのは今や私だけだ。
 恐らくだが、エンリケ王は知らない。いや、知っていても今の状態では逃げられない。ここは私だけでも生き延びなければ。
 私だけなら妻や子供達は受け入れてくれるだろう。
 ミゲルに以上は妻と共に支えてやればいい。孫ができれば次期公爵として私が自ら教育してもいい。今まで出来なかった家族の団欒を再現できるはずだ。



「ここは今や陸の孤島だ」

 
 暴徒たちに囲まれた王宮。
 残った部下たちは揃いも揃って何の役にも立たない木偶の坊ときている。
 この国はもう終わりだ。








 
 王宮の秘密通路を歩いている。
 ここを通った人間はそういないだろうと場違いなことを思いながら。深夜の今なら私が脱出したことに気付く者はいないだろう。すまないとは思っている。だが、彼らと違って私にはがいる身だ。

 
「がはっ……?!」

 後ろから強烈な痛みが襲う。
 なんだ?!
 何が起こった!!?

 衝撃はそれだけではなかった。悶絶する私を布で目を隠し、縄で括りつけられた。文句を言おうと口を開くとそのまま猿轡を噛ませてきたのだ。
 
 なんたる屈辱!! 
 許さんぞ!! 
 ただで済むと思うな!!!
 私を誰と思っている!私はこの国の宰相なのだぞ!!!

 
 怒りと屈辱に満ち溢れながらも私の身体は何者かの手によってズルズル引きずられて行った。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...