偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第一章~

4.保護

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 着の身着のままの状態で隣国に放り出された。
 僕を捨てていったのは王国騎士団だ。

 隣国の国境警備隊たちがあまりの光景に唖然としていた。
 それはそうだろう。
 貴族の恰好をした十二歳の少年が縄で縛りあげられた状態だ。しかも叩きつけられるように放置されたんだ。隣国側の国境警備をしていた兵士さんたちも何事かと目を丸くしていた。明らかに異常な光景に言葉がない状態だった。そりゃそうなる。
 我に返った国境警備隊の兵士が慌てて助けにきてくれた。本当にありがたい。僕はそのまま彼らに保護された。


 
「坊や、一体何があったんだい?詳細を話せるかい?」

 僕はこれまでのことを全て話した。
 するとムチャクチャ憐れんでくれた。
 一応、事実確認をしなければならないということで、僕は彼らの詰所で暫く過ごすことになった。そりゃそうだ。幾ら子供だからって聞いた内容を全て鵜呑みにはできない。隣国で何があったのか、僕の言うことが本当なのか嘘なのか見極める必要がある。
 数日経ってからようやく僕の言葉が真実だと証明された。

「サビオ君、君はまだ十二歳だ。しかし来年になれば準成人の年齢でもある。その場合は孤児院にいくか、それともギルドに加入するかの二択になる。どうするね?」

 正直言って困ってしまった。
 僕の場合はどちらかというと前者に近い感じだ。孤児院に行っても馴染める気がしない。それにギルドに入るにも冒険者になれるとは到底思えない。だって僕だよ?魔法すら使えないんだよ?絶対に無理だと思う。思案していると国境警備隊の兵士の一人がギルドの事を詳しく教えてくれた。

「ギルドは誰でも加入できるし、冒険者にならなくてもいい。事務職もある。商人になりたい場合は商業ギルドがあるし、サビオ君なら薬師や錬成師なんかもいいんじゃないかな」

 なるほど。そういう道もあるのか。
 
「ちなみにギルドに所属する者にはランク付けされる。最低がFランク、最高がSSSランクだ。これは国からの依頼を請け負うことが多いからこのランクになっている」

 更に話を聞けば魔法が使えない冒険者の方が多かった。

「魔力持ちは国や神殿で働いている者が圧倒的に多い。それでも見習いの神官や魔術師などは経験と実績を得るためになる者もいる。ただ、この場合は大抵が短期間だ。それも本業との兼業が多いな。修行の一環としているせいだろう」

 納得のいく答えだった。
 確かに経験と実績は大事だ。
 それに勝る物はない。
 いざという時に動けないと意味がないから。

 意外だったのは「剣士」が圧倒的に多い事だった。

「剣と魔道具さえあれば戦える。素人でも剣士を目指すなら研修を受ける事ができるので人気は高いよ」

「研修ですか?」

「ああ、何にしても攻撃できる人材は有難い。なんだかんだ言っても冒険者は戦いがメインだから。研修期間は個人が自由に決められる。一ヶ月の短期間のコースもあれば二年間のコースもある。まぁ、一番多いのは半年から一年のコースになる。サビオ君は剣術を習っていたようだし、冒険者でもやっていけるんじゃないか?」
 
「僕の場合は専ら護身用です」
 
「それでも訓練を受けているのといないとでは全く違う」

「それはそうですが……」

「まぁ、候補の一つとして気楽に考えておけばいい。後から剣士として登録しても良いしね。とりあえずは王都にあるギルド本部に行くといい。そこで登録すれば何処の国でも活動ができる」

 自由に動き回れるのは魅力的だ。
 それに今の僕には金がない。
 とりあえずギルドに所属して住み込みで働くのが現実的だった。

 国境警備隊は何かと僕に便宜を図ってくれた。
 子供だという事と、身の上話に同情してくれたからだろう。
 そのお陰で僕は無事に無事にギルド所属となった。



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