偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第二章~

32.忠告

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 宿から出た僕は都市郊外の村を訪れた。
 そこでもやはり『謎の聖者』の噂で持ちきりだった。
 当初、村を訪れる予定はなかった。ただ、数日後に行われるという祭りに興味がでて足が向いてしまったのだ。旅の寄り道はつきものだしね!
 
 その祭りは少し変わっていた。
 
 男のみが参加できると言ったもの。
 要するにだった。
 
 なんでも男神に捧げる神聖な儀式があるとか何とか……。よく分からなかった。それというのも祭りで何をするのかが不明なのだ。分かっている事は、村にある森の神殿で祭りが開催されるという事。開催時刻は夕方からで、そこから一週間にわたってお祭りが続くらしい。因みに女性陣はその間、森に近づかないようにとの事だ。


 
 村には宿屋が数件あり、その中の一つに泊まることにした。
 夕食を終え、部屋に戻って一休みした後、祭りの詳細を聞こうと村の酒場へとやってきた。
 僕はまだ準成人だ。それでも国によって規制は違う。緩い処なら準成人なら酒を飲むことは出来る。この国はかなり緩い方だ。店内を見渡すとまだ時間が早いせいもあってか閑散としていた。
 
 カウンター席の奥に座っている中年の男に声を掛けた。
 
「すみません。ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」
 
 そう言うと男は顔を上げて僕を見た。すると途端に顔をしかめる。なんだろう? 首を傾げていると男が声を上げた。
 
「あんた余所者かい?」
 
「えっ……はい。北からやって来ました」
 
「旅行者ってことかい?」
 
「はい。この村で珍しいお祭りがあると聞いて来たのですが……」
 
 僕が言い終わる前に男の表情が変わる。
 
「お前さん、村の祭りに参加するつもりじゃなかろうな!?」
 
 突然、語気を強められて面食らう。えっと。なんかマズイ事を言ったのかな?? ただ単に質問をしただけなのに。物凄く警戒された。これは気のせいじゃない感じだ。

 んー、困ったなぁ。
 困った様子の僕の事など気にせず、男は続ける。
 
「……良いかい? 絶対にあの祭に参加してはいかんぞ! 特に女子供が参加することは許されん!」
 
 男は鬼気迫る形相でまくし立てる。怖いな。
 僕は思わず後退りしてしまった。それぐらい迫力があったのだ。
 
 でも――――

「それはどうしてですか?」

 気になるところだ。
 なにか危険ない事でもするんだろうか?だから参加する事を止められているとか?
 僕の言葉を聞いた男は苦々しい表情を浮かべて俯いた。

「兎に角、絶対に関わってはいかん!!」
 
 それだけを言うと、また元の仏頂面に戻る。
 これ以上は何も聞けそうもないかな?
 まあ祭りは二日後に開催されるからその時に分かるだろう。

「ご忠告ありがとうございます」

 僕は礼を言って店を出た。外に出るとすっかり暗くなっていた。昼と夜の温度差が激しい季節になったんだなと思う。宿に戻るとそのままベッドに入って寝てしまった。



 

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