偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第三章~

46.兄side

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 弟は可愛い。
 それは本当だ。

 サビオは俺の可愛い弟だった。

 俺よりも賢い。
 覚えも早い。
 記憶力も良い。

 可愛かった。
 なのに……。

 可愛い弟はいつの間にか劣等感を抱く存在になっていった。
 小さい頃のように仲良くしたい。
 ずっとそう思っていた。

 でも、できなかった。

 異例の速さで最高学府を卒業した弟は、そのまま王太子の側近になった。
 そうして俺は側近候補から外された。

 兄弟で側近になる事は贔屓に繋がると言われて。


『サビオ殿は優秀だから仕方がない』

『兄として弟に譲ってあげるべきだ』

『なに、サバス殿はいずれ父君の後を継いで宮廷魔術師になるのだから』

 そう周りから言われ続けた。
 俺とサビオでは将来性が違うのだと言われた気がした。

 意地の悪い連中の中には「魔力無しの弟に負けるなんて」と言う奴もいた。
 大人の中には「弟君は魔力がない可哀想な身の上だ」と言う者もいた。

 何だかんだ言ってサビオの方が優れているのだと、そう思っているような口ぶりだった。
 それが悔しかった。
 なんでだよ?
 俺だって必死に頑張っているんだ!
 周囲の言葉によってサビオに冷たい態度しか取れなくなっていった。
 そんな自分に嫌気がさしていた。
 弟の事が好きだった。
 仲直りがしたい。
 謝って許してもらいたい。
 だが、もう遅い。

 サビオはいなくなった。

 俺の弟じゃなかった。
『本物の弟』が家に入ってきた。
 俺達家族とよく似た容姿の本物。

 母上は『本物の弟』に夢中だ。

 天使のように愛らしい容姿。
 なのに何故か嫌悪を抱いてしまう。

 可愛らしい態度。
 婀娜っぽさを感じて気色悪い。

 笑顔を向けられるたびに嫌悪感が増していく。
『本物の弟』なのに。

 サビオのように可愛いと思えなかった。


 我慢できなくなって父上に言った。

アヴィド本物の弟を可愛く思えない」

 父上は一言、「そうか」と呟いただけだった。

 その後、俺は同盟国に留学することが決まった。


 俺の住む国、アンハルト王国の周辺には幾つかの小国が存在している。
 まぁ、アンハルト王国もその小国の一つだ。
 小国同士で同盟を組んでいる状態が長年続いている。なんでも大国に対抗するためだ。だからと言うか、同盟国の王族は互いに政略結婚を繰り返している。

 アンハルト王国は魔法が発展している国だ。
 その一点だけで同盟国の中でも優位に立っていると分家達が話していた。


 俺が留学する事に一族はかなり揉めたようだ。
 結局、父上の鶴の一言で収まったが。


「サバス、外の世界を知れ」

 そう言って送り出してくれた父上には感謝しかない。

 だから気付かなかった。
 父上が俺を留学させた真の目的を。


 

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