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~第四章~
75.サバスside ~オレフ王国の学生1~
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「皆様、オレフ王国の者が、大変失礼を致しました。ご不快に思われた方もいらっしゃるでしょう。皆様にもご迷惑をかけました事、心よりお詫び申し上げます」
そう言って周囲へのフォローを忘れない。随分できた少女だ。
恐らくオレフ王国出身者だろう。にも拘わらず自国の王女……庶子とはいえ王女だ。それに対してあの物言い。言動から察するに王族関係者だろうか?お目付け役とは言い難い。この立ち居振る舞いに気品高さ。知らない者が見たら彼女が王女だと勘違いするな。それだけアノ王女は王族らしからぬ振る舞いが目立つ。エヴァンからの話しを聞いていなければ俄かには信じられなかっただろう。もっとも一年で王族の所作を身に付けろという方が酷かもしれないが。
なんとも言えない空気は一人の少女によって払拭された。
馬鹿な王族を持つと苦労するのは臣下なのだとつくづく思った。
アノ王女を魔力があるからといって王族にしたオレフ王国はアホだ。だが、アホな国だと他の者達と一緒になって嘲笑することはできなかった。俺も、俺の国はそれ以上のやらかしをした愚かな国だからな。
謝罪した少女が少しだけ気になった。
「公爵令嬢だって」
「何の話しだ?」
「前にお姫様を追い帰した子。あの子、オレフ王国の公爵令嬢だよ」
「そうか」
「今の王家よりもずっと血統正しい公爵令嬢。成績も優秀だ」
「そのようだな」
「あれ?驚かないの?」
「王族関係者だとは思ってた」
「あ~~~~……そっか。まあ、普通の貴族じゃ無理だもんね。庶子とはいえ王女にあの態度は」
エヴァンの言葉に聞き耳を立てていた他の生徒達も納得したように頷いていた。
公爵令嬢の叱責が聞いたのか、それとも他に興味がなかったのか、その日を境にデイジー・オレフに追いかけまわされる事はなくなった。
ただし、飽く迄も『追いかけまわされる』事はなくなっただけで、相変わらずデイジー・オレフは俺に絡んでくる。授業が同じという場合は致し方ないと諦める他なかった。この学校は一部を除いて選択授業制だ。
彼女と同じ授業というのは比較的少ない。
それがせめてもの救いだった。
そう言って周囲へのフォローを忘れない。随分できた少女だ。
恐らくオレフ王国出身者だろう。にも拘わらず自国の王女……庶子とはいえ王女だ。それに対してあの物言い。言動から察するに王族関係者だろうか?お目付け役とは言い難い。この立ち居振る舞いに気品高さ。知らない者が見たら彼女が王女だと勘違いするな。それだけアノ王女は王族らしからぬ振る舞いが目立つ。エヴァンからの話しを聞いていなければ俄かには信じられなかっただろう。もっとも一年で王族の所作を身に付けろという方が酷かもしれないが。
なんとも言えない空気は一人の少女によって払拭された。
馬鹿な王族を持つと苦労するのは臣下なのだとつくづく思った。
アノ王女を魔力があるからといって王族にしたオレフ王国はアホだ。だが、アホな国だと他の者達と一緒になって嘲笑することはできなかった。俺も、俺の国はそれ以上のやらかしをした愚かな国だからな。
謝罪した少女が少しだけ気になった。
「公爵令嬢だって」
「何の話しだ?」
「前にお姫様を追い帰した子。あの子、オレフ王国の公爵令嬢だよ」
「そうか」
「今の王家よりもずっと血統正しい公爵令嬢。成績も優秀だ」
「そのようだな」
「あれ?驚かないの?」
「王族関係者だとは思ってた」
「あ~~~~……そっか。まあ、普通の貴族じゃ無理だもんね。庶子とはいえ王女にあの態度は」
エヴァンの言葉に聞き耳を立てていた他の生徒達も納得したように頷いていた。
公爵令嬢の叱責が聞いたのか、それとも他に興味がなかったのか、その日を境にデイジー・オレフに追いかけまわされる事はなくなった。
ただし、飽く迄も『追いかけまわされる』事はなくなっただけで、相変わらずデイジー・オレフは俺に絡んでくる。授業が同じという場合は致し方ないと諦める他なかった。この学校は一部を除いて選択授業制だ。
彼女と同じ授業というのは比較的少ない。
それがせめてもの救いだった。
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