偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第四章~

76.サバスside ~オレフ王国の学生2~

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「はぁ」

「随分とお疲れだね、サバス」

「疲れた。なんだ?あの王女は……」

「よっぽど気に入られたみたいだね。お姫様、諦める気配なしだ」

「いいかげん諦めて欲しい。そして、早く自分の国へ帰ってくれ」

「それができたら苦労しないよ~」

「あの王女、本当に何しに学校に来ているんだ?」

「魔術師になるためじゃない?」

「アレでか?」

「本人はアレでも努力してるんだよ」

「……教師が気の毒だな」

「それは言わないお約束ってもんだよ。あ、噂をすれば……お姫様……の取り巻きだ。珍しい。お姫様と別行動かな?」

 教室の窓に視線を向ければ、王女といつも行動を共にしている数名の男子生徒が歩いているのが見えた。意外だ。いつも一緒に行動しているとばかり思っていたが……。選択科目が違うのかもしれない。ぞろぞろと引き連れているから目立つ事この上ない。

 王女が居ないと普通に見える。

 やはり男達の中で女子一人というのは思っていた以上に悪目立ちするのか。

 それにしても……。


「あいつらも俺を睨みつけてくる位なら王女を何とかするべきだろうに……」

「言えないんじゃない?一応、王女様だし。それに彼等ってお姫様の護衛でもあるしね」

「それにしては人数が多すぎないか?」

「自発的にお姫様を護衛している人もいそうだよね。いや、絶対にいる」

「はぁ……何でもいいが疲れる」

 俺は彼等が教室を通り過ぎ姿が見えなくなった事を確認すると、再び溜息をついた。
 彼等は俺の存在に気付かなかった。気付いていたらまた違っただろう。殺気を含んだ視線。気付かないわけがなかった。

 エヴァン曰く「嫉妬の視線」との事だが、あれがそんな可愛らしいものか?

「サバスは苦労人だね」

「うるさい」

「あははは!」

 俺の様子を楽しんでいるエヴァンは、笑い声を上げる。
 一度きちんとコイツには文句を言った方がいい気がしてきた。

 人の不幸の何が楽しいのやら。
 理解に苦しむ。
 もっとも、コイツのことだ。
 迷惑を被っているのが俺でなくとも笑っていただろう。
 例えそれが自分自身だったとしても……。

 コイツも厄介な性質だ。
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