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第16話ジョアン2
しおりを挟む「父上!どういうことですか!」
「何だ騒々しいな。お前は幾つになっても落ち着かない」
「これが落ち着いていられますか!何故、爵位をフアナの息子に渡さなければならないのですか!?」
「陛下が亡くなったからだ」
なんだそれは!
陛下が亡くなったから何だというんだ。
「横暴です!」
「代わりに新国王陛下がお前に爵位を与えてくださる」
「子爵位じゃないですか!」
「破格だろう。前国王陛下の子供を我が子として登録してくれたお礼だそうだ」
「なら、せめて伯爵位にすべきだ!」
何故、子爵なんだ。
実の子でもないのに「我が子」としたんだ。伯爵位ぐらい貰わないと割にあわない!
「図々しい事を抜かすな」
「ち、父上?」
「たかだか書類上の父親にそんな権利はない。これで、陛下の子を実子として愛しんで育てたらな兎も角、お前は何もしていないだろう」
「ですが!」
「それ以上、アホな事を言うようなら私から爵位の話はなかった事にしてもらうぞ」
「……」
「どうなんだ」
「子爵位で構いません」
「なら、これにサインしろ」
そう言って、父上は一枚の紙を取り出した。
離縁状だった。
「これは一体……」
「見て分からんか? 離縁状だ」
「それは分かりますが……何故、今になって……」
「今だから、だ。お前は黙ってサインすればいい。フアナと離縁すれば、お前が囲い込んでいる愛人と正式に結婚ができるのだぞ。長年の望みだったろう?」
その通りだ。
ずっとベアトリスを妻にしたかった。
その後、私は新国王から子爵位と小さな領地を頂いた。
ベアトリスは愛人から妻になった。
彼女と結婚の約束をした日から十五年が経っていたが、漸く約束を叶える事が出来たのだ。
新たにアウストラリス侯爵となった書類上の息子は『公爵位』を与えられていた。
私がそれを知ったのは随分後の事だったのは言うまでもない。
国王の子供を庶子にしない為に必要だった父親役。それが不要になったからこその処遇だと気づいたのはフアナの娘が一国の王子と婚約したと聞いた時だった。
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