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本編
12.伯爵令嬢視点3
しおりを挟むエバ・キュリー男爵令嬢が「自作自演の虐め」をしていた事は有名でした。あからさま過ぎたので一部の馬鹿以外はバレバレだったのよね。その一部に元婚約者がいるのが情けない。
だけど、最初はそうでなかった。その事を知る者は少ないでしょう。
最初は私物。
ある日を境に、男爵令嬢の教科書やペンケースなどの小物がなくなるという被害が発生していた。
次にトイレに閉じ込められて出られなくなっていた。
なんでも個室のドアが開かなくなってしまったらしいわ。
犯人は下位貴族の誰かでしょう。
もしかすると集団で計画的にやったのかもしれないわ。
学業を疎かにしながら男漁りを勤しむ彼女に対する警告でしょうね。
彼女が親しく話しかけていた中には高位貴族が多いものの下位貴族もゼロではなかった。誰かの婚約者だったのかもしれない。
白昼堂々と婚約者のいる相手に手を出そうとする彼女の神経が理解できない。
当時は私も注意した事があるわ。
本人が「私は元平民だからなにも分からないの」と強調していたから三歳の子供でも理解できるように優しく諭した。
それでも「酷い」「虐める」のオンパレード。果ては一部の男子生徒に文句を言われる始末。相手にするにも馬鹿らしくて忠告するのを早々に諦めたわ。
だから彼女がフランソワーズ様を犯人だと思った、いいえ、犯人に仕立て上げた理由が分からない。友人たちは王太子殿下狙いだと言っていたけれど……果たして本当にそうだったのかしら?
まるで誰か別に人間の意志が働いているかのような奇妙な現象。彼女の背後に誰かいるのかと思ったけれどそんな人物はいなかった。だからこそ不気味さが増す。
エバ・キュリー男爵令嬢と親しかった者達は、学園祭の後に実家で説教を受け再教育を受ける羽目になった。全員が跡取りから外された。モンティーヌ公爵家を敵に回したも同然の息子をそのまま跡継ぎにすれば家が潰される事を危惧したのでしょう。正しい判断だわ。
今回の件で王太子殿下は王位継承権を失い王籍剥奪となった。本来であれば幽閉の処置を取らされるはず。本人がまだ未成年の学生ということで情状酌量の余地ありとされたそうだ。
王太子殿下の側近達は、高位貴族の嫡男であった。
彼らも無傷ではいられない。
跡取りの資格を失い、生涯を領地で過ごす事が決定した。
主君の間違いを正せなかった。逆に誤った道を肯定し、共に進んだことに能力だけでなく忠誠心まで疑われた結果だろう。
栄達は約束されていたというのに。
実家で飼い殺し。
それならば、まだいい方かもしれない。
領地に戻り暫くして不慮の事故や急な病で亡くなる可能性だって捨てきれないのだから。
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