13 / 85
本編
13.商人の息子視点1
「男爵家の娘と……ですか?」
「そうだ」
「え……と。もしや借金のカタとして嫁に貰うということですか?」
そう聞いてしまった。
今思えば非常に失礼な考えだろう。
だが、実際のところ没落貴族が羽振りのいい商人と結婚するケースは少なからずある。貴族の娘を娶り、娘との間に出来た子供を貴族の当主に据えるというやり口だってあった。
正直、金で爵位を買うよりも元々ある貴族家を引き継いだ方が何かと実入りがいい。
現にうちの家は王都有数の商家だ。
貧乏貴族の娘が平民に嫁ぐなら理由は「金」だと考えるのが普通だろう。
「いや、男爵家は金持ちだ。うちの家より遥かに資産はある」
「は?」
金があるのに平民に嫁ぐ貴族令嬢ってなんだ?意味ないだろ?それ……。
顔に出ていたのだろう。
父さんは面白そうに笑うばかりだ。
「金があっても平民の嫁ぐ貴族もいるという事だ」
「それ本当に貴族令嬢ですか?」
「はっ!お前、意外に鋭いな!」
どうやら訳アリの令嬢っぽい。
これは金使いが荒いか色魔か、どちらにしても碌なもんじゃない。
「お前は本当に分かり易いな。心配するな。訳アリでもお前が想像しているような令嬢じゃない」
「じゃあ、なに?」
「元平民の男爵令嬢だからだ」
「え?」
「早い話が、庶子の娘だ。母親が男爵の愛人でな。正妻が亡くなってこの度目出度く後妻に収まったんだ。男爵の方は娘を政略の道具にするつもりはないらしくてな。さりとて十代半ばまで一般庶民でいた娘が貴族社会に馴染むとも思えなかったらしい」
「十代半ば……それはまた……」
一桁代ならまだしも十代を超えたらそりゃあ無理ってもんだ。
貴族の中じゃ、一番下の爵位だけが、それでも貴族だ。貴族同士の付き合いってものがある。それを今からやれって言われても「できません」というしかないだろう。
「無理に貴族社会で生きるよりも平民として生きた方が娘にとっては幸せだと思ったそうだ。娘と年齢が近い裕福で真面目な平民男を探してお前を見初めたという訳だ。おめでとう、ジャン」
父親に見初められたって嬉しくない。
胡乱な目で父さんを見るが全く意に介していない。
既に男爵家とは交渉済みらしい。
結婚は決定事項という訳だ。
婚約が決まった。
ただ、とうの本人には内緒のままで。
「は?!」
「だからな、エバ嬢に婚約の話をするのは学園卒業後になると言っているんだ」
「なんで?」
本人が知らない婚約って何だ、と思った。
だってそうだろう?
両親と男爵家の話じゃ、卒業と同時に結婚するんだぞ?
「いいじゃないの」
「母さん」
「相手のお嬢さんはまだ十五歳なのよ。まだまだ夢見るお年頃じゃない。なのにその若さで結婚相手が居るなんて知ったらショックでしょう?」
酷い。
実の母親とは思えないセリフだ。
「俺も父さんに勝手に決められた結婚にショックだよ」
「あら、貴男は良いじゃない。若くて可愛いお嫁さんを貰えるんだから」
遠回しにオッサン扱いされてる?
俺はまだ二十五歳だ!
若者だ!!
「言っておくけどジャン、貴男は若いつもりかもしれないけれど、十五歳の少女からしたら二十五歳なんて立派なオジサンよ」
「ぐはっ!!」
胸を押さえて俺はその場にうずくまった。
母の言葉が胸に響く。
ヒデェ……。
結局、肝心のお嬢様には内密で事は進んだ。
あなたにおすすめの小説
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
私は善意に殺された・完結
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路
藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。
この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。
「聖女がいなくても平気だ」
そう言い切った王子と人々は、
彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、
やがて思い知ることになる。
――これは、聖女を追い出した国の末路を、
静かに見届けた者の記録。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄は喜んで
nanahi
恋愛
「お前はもう美しくない。婚約破棄だ」
他の女を愛するあなたは私にそう言い放った。あなたの国を守るため、聖なる力を搾り取られ、みじめに痩せ細った私に。
え!いいんですか?喜んで私は去ります。子爵令嬢さん、厄災の件、あとはよろしく。