悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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本編

13.商人の息子視点1


「男爵家の娘と……ですか?」

「そうだ」

「え……と。もしや借金のカタとして嫁に貰うということですか?」

 そう聞いてしまった。
 今思えば非常に失礼な考えだろう。
 だが、実際のところ没落貴族が羽振りのいい商人と結婚するケースは少なからずある。貴族の娘を娶り、娘との間に出来た子供を貴族の当主に据えるというやり口だってあった。

 正直、金で爵位を買うよりも元々ある貴族家を引き継いだ方が何かと実入りがいい。

 現にうちの家は王都有数の商家だ。
 貧乏貴族の娘が平民に嫁ぐなら理由は「金」だと考えるのが普通だろう。

「いや、男爵家は金持ちだ。うちの家より遥かに資産はある」

「は?」

 金があるのに平民に嫁ぐ貴族令嬢ってなんだ?意味ないだろ?それ……。
 顔に出ていたのだろう。
 父さんは面白そうに笑うばかりだ。

「金があっても平民の嫁ぐ貴族もいるという事だ」

「それ本当に貴族令嬢ですか?」

「はっ!お前、意外に鋭いな!」

 どうやら訳アリの令嬢っぽい。
 これは金使いが荒いか色魔か、どちらにしても碌なもんじゃない。

「お前は本当に分かり易いな。心配するな。訳アリでもお前が想像しているような令嬢じゃない」

「じゃあ、なに?」

「元平民の男爵令嬢だからだ」

「え?」

「早い話が、庶子の娘だ。母親が男爵の愛人でな。正妻が亡くなってこの度目出度く後妻に収まったんだ。男爵の方は娘を政略の道具にするつもりはないらしくてな。さりとて十代半ばまで一般庶民でいた娘が貴族社会に馴染むとも思えなかったらしい」

「十代半ば……それはまた……」

 一桁代ならまだしも十代を超えたらそりゃあ無理ってもんだ。
 貴族の中じゃ、一番下の爵位だけが、それでも貴族だ。貴族同士の付き合いってものがある。それを今からやれって言われても「できません」というしかないだろう。

「無理に貴族社会で生きるよりも平民として生きた方が娘にとっては幸せだと思ったそうだ。娘と年齢が近い裕福で真面目な平民男を探してお前を見初めたという訳だ。おめでとう、ジャン」

 父親に見初められたって嬉しくない。
 胡乱な目で父さんを見るが全く意に介していない。
 既に男爵家とは交渉済みらしい。
 結婚は決定事項という訳だ。





 
 婚約が決まった。
 ただ、とうの本人には内緒のままで。

「は?!」

「だからな、エバ嬢に婚約の話をするのは学園卒業後になると言っているんだ」

「なんで?」

 本人が知らない婚約って何だ、と思った。
 だってそうだろう?
 両親と男爵家の話じゃ、卒業と同時に結婚するんだぞ?

「いいじゃないの」

「母さん」

「相手のお嬢さんはまだ十五歳なのよ。まだまだ夢見るお年頃じゃない。なのにその若さで結婚相手が居るなんて知ったらショックでしょう?」

 酷い。
 実の母親とは思えないセリフだ。

「俺も父さんに勝手に決められた結婚にショックだよ」

「あら、貴男は良いじゃない。若くて可愛いお嫁さんを貰えるんだから」

 遠回しにオッサン扱いされてる?
 俺はまだ二十五歳だ!
 若者だ!!

「言っておくけどジャン、貴男は若いつもりかもしれないけれど、十五歳の少女からしたら二十五歳なんて立派なオジサンよ」

「ぐはっ!!」

 胸を押さえて俺はその場にうずくまった。
 母の言葉が胸に響く。
 ヒデェ……。


 結局、肝心のお嬢様には内密で事は進んだ。

 
 


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