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小学校卒業まで。
しおりを挟む1992年6月某日。
私、平 亜美(たいら あみ)は生まれた。
母親は23歳、父親は30歳で、お互い地方から関東に出てきて出会って結婚したらしい。
どこにでもいる普通の夫婦だと思う。
母親はパートをしていて、父親は会社員だった。
一人っ子だった私は保育園にいつも預けられていた。
お絵描きとかけっこが得意で保育園でもいつも中心にいた。
団地に住んでいて負けん気が強かった私は、よく団地の小学生達と殴り合いの喧嘩をしていた。
おしとやかになるようにとピアノを習わされた。
ピアノの先生はいつもピリピリしていて真面目に授業を受けない私を毛嫌いしていて、ピアノの授業の時間なのに
「あんたはこれでもしてなさい」
と、リコーダーを渡された。
その後ピアノ教室を辞めて、空手を1年間だけ習った。
最年少だったのでみんな優しくしてくれたし、体を動かすのは楽しかった。
もうすぐ小学生になるという時に違う団地に引っ越すことになって空手は辞め、保育園は変わった。
誰も知らない保育園。1人だけ色の違うピアニカ。
馴染めないまま小学生になった。
ここから私は少しずつおかしくなる。
親は実は数千万の借金があったのだ。
そして治安の悪い地域に引っ越したお金のない私たち家族はどんどん壊れ始める。
まず家の物が無くなった。
親戚に買ってもらった玩具や漫画も次の日にはすぐ無くなる。
親に売られていた。
私は小学生の時まで親戚からお年玉をもらっていたけど1円も使ったことがない。
親が使っていたからだ。
サンタも小学生に上がった頃には来なくなっていた。
なので自分が貧乏だと思い知るのは早かった。
そしてお母さんが壊れた。
育児と家事、そして朝から晩まで働き続けたお母さんは2人目を流産した。
精神病になり、私に当たり散らかす日々になった。
幻聴が聞こえるらしく、部屋の隅で大人しくしてても
「今、死ねって言ったよね?」
と真夏の押し入れに半日以上閉じ込められた。
喉が乾き、こっそり抜け出して冷蔵庫に行こうもんなら暴れまくる。
夜になり
「汚いからお風呂入って」
と言われ、お風呂の水を飲んだ。
お風呂はボロボロでいつも大きな蜘蛛が沢山いた。
お母さんは百合の花が好きだった。
お母さんの機嫌が良い日があった。
飾ってある私の家には似つかわしくない百合を
「ママ、綺麗なお花だね」
と子供ながらに機嫌を取りたくて話しかけた。
「なに?媚び売ってんの?」
お母さんの返答は冷たかった。
お父さんは寡黙な人だった。
子育てには口を出さないタイプだ。
壊れているお母さんのフォローでお父さんも必死なんだろう。
私のことは見てくれなくなった。
学校は本当に治安が悪く、小学校なのに校門には落書き、校庭にはバイク。
そして体罰とセクハラを繰り返す教師たち。
下校の時は万引きをしている子も少なくなかった。
そして小学生とは思えないような虐め。
裸の写真を撮られたり、使い古された雑巾を口に入れられてる子もいた。
元々明るい方で負けん気が強い私はカースト上位の女の子たちのグループにいた。
みんなのお母さんはとても若々しくて綺麗な人ばかりだった。
今思えばお水の子達だったのだと思う。
「亜美のお母さんってデブだしおばさん」
そう言われても否定できなかった。
精神病になったお母さんはぶくぶく太り、髪もボサボサ、人付き合いもしなかった。
女の子のグループの2人が男の子を巡って喧嘩をした。
心底どうでもよかったが、下校中にその片方の子が相手の子の家に落書きをすると言う。
グループ内で立場が低かった私は付いていくしかできなかった。
もちろん見ていただけだ。
だが後日その2人は仲直りし、落書きは私がしたことになっていた。
「おい、ちゃんと拭けよ」
女の子達に囲まれながら書いてもいない落書きを私はひたすら拭かされた。
そこからはぶかれるのは早かった。
すぐにクラスの子達に広まり、いつも一人でいた。
そんな中、同じ団地の女の子が一緒に帰ろうと言ってくれた。
その子はクラスでは地味な子だったけど気にかけてくれたことが嬉しかった。
喜んで一緒に帰ると団地にあるゴミステーションに高学年の男の子達がいた。
その子のお兄ちゃんとその仲間らしい。
私は今度はそこでいじめられるようになった。
「ここから飛び降りてみろよ」
「飛び降りるまで帰るなよ見てるからな」
団地の階段で強制された。
もちろん怪我をしたくないし怖いので降りれない。
全員帰ったあとも見られてると思い、怖くてその場にいた。
迎えに来たお母さんに遊んでばかりだと怒られた。
時間は23時とかだったと思う。
小学校低学年の私が、学校から帰った夕方からその時間まで帰らなかったのに、理由も聞かれなかった。
一人でいたのに。
23時になっていたのに。
でも私は気が強かった。
言い返すことは諦めたけど、絶対に泣かなかった。
いつかやり返してやる!くらいの気持ちで過ごしていた。
高学年になった。
お母さんは少し良くなっていた。
男性アイドルグループにハマったのだ。
追っかけをしていて充実しているようだった。
クラスも変わって新しいグループの友達もできた。
この地域の中学には行かせたくないと、お母さんが中学受験をすると伝えてきた。
お金は大丈夫なのかと聞くと心配しなくていいと。
塾に書道に英語を習わせてくれた。
私は勉強ができる方だった。
学校では何のテストでも90点以下は取った事がないし、苦では無かった。
書道も私のクラスの本に載る程度にはできた。
でも学校の勉強とはレベルが違った。
色んな検定も取ったし、毎日お弁当を持って夜まで塾にいても私は塾の中ではレベルが下だった。
でもそこそこレベルの高い塾だったのと家から遠かったのもあって違う学校の友達が沢山できて楽しかった。
絵が好きだから絵の学校に行きたいと言うと親は快く学園祭に連れてってくれた。
中学生の人達が書いた漫画はとてもキラキラしていて楽しそうだと思った。
私は学年の代表として先生からみんなに絵を教えるようにと言われたりしていた。
賞を取った時には表彰され、私が卒業するまで私の絵は校長室に飾られていた。
友達と遊ぶ時間は無くなったけど、いじめられもしないし、お母さんは明るくなったし、私はこのままでいいと思った。
だけど塾では完全に勉強についていけなくなり、怒鳴られる日々だった。
ストレスで私はお菓子を沢山食べるようになり、肥満児になった。
髪の毛も天然パーマでくるくる。
誘われても遊びに行けない。
そうして私はまたからかわれる日々になった。
給食が余ると私にみんながニヤニヤしながら持ってくる。
罰ゲームで話しかけられもした。
でも私は気にしなかった。
だって中学は別だから。
お昼ご飯の時間が嫌になり、一人で食べれるからという理由で放送委員会に入った。
曲を流して放送室で一人で食べるお昼ご飯はとても安心した時間だった。
そしてまた団地を引っ越した。
また転校するのは可哀想だと、1人で電車に乗って小学校に通った。
子供で危ないからという理由で私は携帯を持たされ、先生達からも学校では使わないという約束の元にそれは許可されていた。
だが面白くないと思った女の子達に携帯を奪われた。
先生が駆けつけてくれて助かったと思ったら私が見せびらかしていたと言われた。
先生も私のことが嫌いだったと思う。
一人で何されても平気な顔して我慢して、先生に話しかけられても子供らしくない私は可愛くなかったと思う。
「平、私立受験するからって自分が特別だと思ってるだろ?調子に乗るなよ」
先生は永遠に私を怒鳴ってきた。
永遠になのだ。
下校のチャイムが鳴っても帰してくれない。塾に遅れてしまう。
うんざりした私は先生を無視して下駄箱に向かった。
だが先生はずっと付いてくる。
汚い言葉を叫びながら。
私が走っても先生も走って門まで追っかけてくる。
なんの嫌がらせだよと呆れたけど先生の気が済むまで怒られてようと思った。
後にこの先生は精神を病んで退職する。
おかしかったのだろう。
だがおかしいのは家にもう一人いる。
私のお母さんだ。
塾に遅れたことで大激怒する。
先生と直接対決になるのだ。
心底どうでもよかった私はあまり覚えていないがお母さんが勝ったと思う。
おかしな人にはおかしな人をぶつけるのだ。
そんな私も初めて恋をする。
テレビの中のアイドルだ。
2つ歳上のジュニアアイドルに夢中だった。
塾で見れないのでビデオを予約して、時間がある時に見ていた。
かっこよくてキラキラしていて憧れだった。
アイドルにハマるのはお母さんの血なんだろう。
一切私と関わらなかったお父さんがそのアイドルのドラマを見ていた時に
「これ撮影現場近いぞ、見に行くか?」
と言ってくれた。
あれは私にとってとてもご褒美で嬉しかった。
お父さんと2人で出かけた初めての思い出だ。
撮影現場を見れるだけで嬉しかったのに、偶然にもその日撮影中だった。
初めてアイドルを目にして私は更にアイドルに夢中になった。
痩せたいと思いダイエットをする。
天然パーマの髪の毛も直したくて親にお願いしてストレートパーマをかけてもらった。
そして私は中学受験をする。
合格したら何とピアスを空けていいとお母さんが言うのだ。
前に学園祭に行った学校とは違うがここも絵の学校だと言う。
私は同じ塾の女の子と2人で合格する。
だけど嘘だった。
ここは絵の学校ではなく、幼稚園から大学までエスカレーターである、俗に言うお嬢様、おぼっちゃま学校だったのだ。
もちろんピアスも駄目だしほとんどの子が幼稚園から一緒。
親戚中からお金を借りて私を入学した貧乏な私はもちろんこの後とても苦労することになる。
そして私の性格が歪んだ中学時代へと行く。
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