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中学時代①
しおりを挟むそして私は中学生になる。
だが私はここで気づく。
私はずば抜けてでは無いが、人より可愛かったのだ。
今までオシャレもせず天然パーマのボサボサで肥満児だった私は、痩せて髪の毛を整えて眉毛を整えただけで見違えた。
当時売り出し中だった女優さんに少しだけ似ていたのだ。
いわゆる流行り顔。
元々明るかった性格もあり、お嬢様、おぼっちゃま学校に中学から入った貧乏人の私でも学年の中心となった。
先輩達も連絡先を私に聞きに来た。
学年のカースト上位のサッカー部や野球部の男の子達も私を可愛い可愛いと言う。
私はもしかしてモテるのか…!?
と調子に乗った私は告白された同学年のサッカー部の男の子と付き合ってみるが、恋愛なんてアイドルにしかした事がない私はすぐ別れる事になる。
だけどその子のおかげでサッカー部の先輩に一目惚れすることになる。
まるでアイドルのようなルックスの男の子で、やはりモテモテのようだった。
そして私は肉食系だったみたいだ。
その先輩のクラスに休み時間押しかけたり、部活を見に行って「好きー!」と叫んだりしていた。
連絡先も聞いて毎日のようにアタックメールをした。
今考えればウザいと思う。
もちろん女の先輩達から反感を買った。
だけど治安の悪い小学校で育った私には些細な嫌がらせは通じなかった。
友達とテーマパークに行ったことがあった。
当時そこの2人で1つのハートになるストラップが流行っていた。
私は先輩に片割れのハートを渡そうとストラップを購入した。
本当に図々しいと思う。
だけど私はまだこの空気の読めなさを当時は気にしていなかった。
顔が悪くないこともあって成り立っていた行動だと思う。
先輩にストラップを渡した時はとてもダルそうにされてしまった。
でもその1週間後、中学の1~3年生合同のイベントがあった。
もちろん先輩を探して見つけるが、なんと先輩がカバンにハートの片割れを付けてくれていた。
アタックして半年以上たっていたので諦めかけていた私は天にも昇る気分だった。
「ちょ!先輩!それ!付けてくれてるんですか!?」
騒ぐ私に、後でメールするからと先輩は照れくさそうに行ってしまった。
その後、先輩からメールが来て、晴れて付き合うことになる。
こうして充実しているように見えた私にも悩みがあった。
成績はそこまで悪くは無かったが、やはり貧乏な家庭の私は先生達から良く思われてなかった。
生徒達からの支持で何かの代表になっても先生がそれを却下するのだ。
なので学園祭も体育祭も私は目立つことは無かった。
いつも中心はお金持ちの家の子供だった。
でもやはり一般家庭の子供もいるので、私は気づいたら一般家庭の子達とよくつるむようになっていた。
でも別に誰かをいじめたりはしていない。
違うグループの子達とも私は満遍なく接していたつもりだ。
だけどやっぱり価値観が違う。
大多数の子達は学校に来るだけなのに財布に何万円も入っているのだ。
私は良くて1000円といったとこだった。
なので一緒に放課後遊べないのだ。
それでも充実していたと思う。
ピアスは開けられなかったし、お金もないけど友達が沢山いた。
凄い豪邸に招待してもらったこともあった。
プレゼントに中学生らしくない高価な物ももらった。
せめて勉強はそこそこ頑張ろうと、学年トップの女の子に教えてもらったりもした。
だけどここから私の人生は変わる。
仲良くしている一般家庭の子の中に、お姉ちゃんもここの中学を出たという子がいた。
「ここってね、みんなお金持ってるでしょ。部活の時にお金盗めるんだよ。みんなやってるよ。お姉ちゃんもしてた。バレないよ」
私にとっては衝撃だった。
お金を盗む?それって犯罪では…と私はその子に断る。
「みんなしてるのに!つまんないね!」
私にガッカリしていた。
その子も学年の中心人物であった。
中学1年生なのに背も高くて大人びていて、私はその子に少し憧れていた。
でもこれで良かったんだ。
私はそう思っていた。
そしてあることが起きる。
親が仕事で夜いないからと夜ご飯代とたまには友達とカラオケでも行きなさいと5000円渡された。
私はとても嬉しかった。
これでいつも遊べない子とも遊べる!
そう思って色んな子にメールして放課後約束をする。
だけど部活が終わって教室に戻ると私の財布の中身が無いのだ。
小銭も。
何も無いのだ。
すぐに先生に言うが、貧乏な私が5000円も持ってる事に驚いたのだろうか。
先生は
「平の勘違いだろ?」
そう言って問題にしてくれなかった。
私は沢山の友達に断りを入れて謝り、夜ご飯は親が帰ってくる終電頃に食べることになった。
親はもちろん激怒して電話をしてくれるが、学校側は何もしてくれない。
むしろ貧乏な家を馬鹿にしているかのようだった。
次の日に一般家庭の子に事情を言うと
「ね?ほらみんなしてるでしょ?問題にならないでしょ?普通だよ。その5000円取っちゃおうよ」
と言われた。
本当にこんなことが当たり前にあるのかと思い知ったと同時に私の中の罪の意識が薄れてしまった。
「亜美はやらなくていいよ、見張っててくれればいい。」
そう言われてドキドキしながら教室のドアから廊下を見ていた。
「行こ!」
友達に手を引かれ放課後、その子の盗んだお金でカラオケやゲーセンに行った。
美味しい物も食べた。
こんなに簡単にやりたかったことが叶うのかと思った。
この時点で同罪なのに私は盗んでないからと言い聞かせていた。
それからは一般家庭の他の女の子数人と同じことを2回くらいした。
みんなは毎日しているらしい。
こんなに大人数の子達が毎日やってたのかと驚いた。
どこかでビビっていた私は見張りだけを、2回くらいして後は適当に断っていた。
だけどそれは崩れる。
放課後、先生に呼ばれた。
部屋には私だけいた。
「何で呼ばれたか分かってるよね?」
頭が混乱した。
でもすぐに盗んだことだと気づいた。
「…してません」
私は問いただされても嘘を言った。
ため息をついた先生が一旦部屋を出ていき、数分後に戻ってきた。
「みんなもう白状してるよ」
ああ、みんなバレたのか…
もう無理だと思った私は
「はい…やりました。」
と小さく呟いた。
先生は続ける。
「みんなを脅迫して見張りにさせていたそうね?あなた分かる?100万円近いのよ?」
100万円!?!?!?!?
何のことか頭が混乱した。
私が覚えているのは合わせても1万円にも満たないのだ。
金額の問題では無いけど話が合わないのだ。
ましてや見張りをしていたのは私だ。
だがこれは通じなかった。
みんなでバレた時は1番貧乏な私のせいにしようと話していたのだ。
みんなは入学してから今までのほぼ毎日していた窃盗を数回見張った私のせいにしたのだ。
私はみんなと仲が良かった。
そんな嘘つく訳が無いと思った。
「今日はもう帰りなさい。話は親御さんに後日聞きます。これから自宅待機してなさい」
そう言うと私は帰らされた。
友達にメールをしたが返事は来ない。
家に電話をかける。
「うちの子に二度と関わらないで」
全員の親に言われた。
私だけが悪かったのか、みんな私のせいにしたのか。
そう思うと言葉も出なかった。
私の親はもちろん驚いていたが
「亜美はそんな子じゃない」
と言ってくれた。
まさか庇ってもらえると思わなかった。
怒鳴り散らされると思っていた。
親だけが私を信じてくれた。
付き合っていた男の先輩にもしばらく学校に行けなくなったとメールしたが、向こうはおぼっちゃま。
「貧乏人キモすぎ」
そんなことが送られてきてあっけなく終わった。
私の味方は親以外いなかったのだ。
数日して両親と学校に行くことになった。
2人とも見たことないスーツを着て、似合ってなかったのを覚えている。
沢山の偉い先生達がいて、私が窃盗の主犯格であったこと、みんなを脅迫していたことを話された。
「違うって言ってんだろ!!!!」
私は叫んでしまった。
先生達は私を無視する。
お母さんが言う。
「でも亜美は最初に窃盗されてるんですよ…?亜美から始めたことだとは思えません」
被せるように先生が言う。
「お母さん。盗まれたから盗んでいいんですか?亜美さんは5000円。でも盗んだ額は何倍ですか?」
お母さんが涙目になりながら
「亜美は見張りを数回しただけで主犯格ではありません」
と訴えるが先生達は意味深に言う。
「他の親御さん達は理解がありましたけどねぇ?」
私は大人の汚さをここで見た。
お父さんは覚悟してたのだろう。
カバンから茶封筒を取り出して先生に渡した。
「これで穏便に済まないでしょうか…」
さすがに中学生だ。
これが現金だということは嫌でもわかった。
中身は見てないけれどお父さんの中では必死な金額だろう。
でもその茶封筒の厚さを確認して先生達は笑い出す。
「お引取ください。亜美さんには退学して頂きます」
涙が止まらなかった。
お父さんの小さく見える背中、お母さんの悔し涙。
ごめんなさい、ごめんなさい。
借金まで作って入学させてくれたのにごめんなさい。
一瞬で全ての物が消えた。
後に聞いた話だけど退学は私一人だけだったらしい。
見せしめというやつだ。
他の親は学校に多額の寄付金を入れたと聞いた。
桁が違ったのだろう。
大人になってからインスタを見つけたが当時の共犯者達はみんな大学までエスカレーターで行っていた。
私もあそこにいれたら人生変わっていただろうか?
でもこれは僻みだ。
自業自得。
私が犯罪を犯したことに変わりは無いのだ。
でも思春期真っ盛りな私は受け入れることができなかった。
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「こんな時期に私立から転入なんて何か問題が無いと有り得ないでしょう?この子は問題児ですよ。そういう目をしてます」
お母さんは黙っていた。
ああ、そうか。
私は問題児なのか。
そして私の中の何かが壊れた。
ずっと親の言うこと聞いてきた。
いじめられても我慢してきた。
騙されても言い返せもしなかった。
そんな弱い自分が嫌になった。
私が強く見せるために不良になることに時間はかからなかった。
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