悪女と名高い聖女には従者の生首が良く似合う

千秋颯

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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

97-3.再会の約束

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「リヴィも、もうそろそろ来るんじゃないかな」

 友人の姿を探して辺りを見回しながらノアが言う。
 結局ノアの予想通り、クリスティーナ達と目的地が被っていたというオリヴィエ。彼の姿を思い浮かべながらクリスティーナは一つの疑問を口にした。

「彼はどんな人物なの」

 オーケアヌス魔法学院を休学しているノア達の友人であり、|神の賜物(ギフト)。クリスティーナ達はオリヴィエのことをその程度しか知らない。
 故に抱いた疑問を問いかけてみたのだが、それに対するノアの反応は肩を竦めるというものであった。

「ごめんよ。生憎、俺の口から語れることは少ないんだ。実際に接してみればわかるとしか言えない」
「そう」

 語れることが少ない。それは言葉通りそれ以上語る程のことがないとも取れるし、込み入った事情から話すことの出来ることが少ないとも取れる。

 だがクリスティーナは彼のこのやや遠回しな言葉選びは意味があっての選択なのではないかと感じた。恐らくは本人の口からでしか語られるべきでない何かがあるのだろう。

「ただ、そうだな。君と少し似ているかもしれない」
「私が短慮だとでも?」
「そういう意味じゃなくって……!」

 顎に手を当てて考えたノアの発言にクリスティーナは眉根を寄せる。
 予想外の方向へ履き違えた相手の解釈を慌てて否定しながらノアは首を横に振った。

「ほら、君もリヴィも発言に際して物怖じするタイプではないだろう。多少言葉が強くなろうともそれが正しいと思えば自身の選択を歪めることなく言語化する。だからきっと誤解されやすい」

 そういうところが似ているのだと彼は告げる。
 当事者であるクリスティーナとにはあまりピンと来ない話であったが、一方でリオはどこか納得したように頷いている。どうやらノアの指摘は的外れという訳ではないらしい。

「まあ確かに、君と違ってリヴィは馬鹿だ。だけどね――」

 ふわりと風が四人の横をすり抜ける。
 ノアは自身のローブを風にはためかせながら整った唇を動かした。
 そこから紡がれた言葉、そしてローブの下で彼が浮かべた表情にクリスティーナは目を丸くした。

 風が止んだ時、ノアは一度だけ優しい微笑みをクリスティーナへ向ける。
 緩く下げられる目尻と細められた瞳に目を奪われながらも彼の発言の意図を掘り下げようとクリスティーナは口を開く。
 しかし彼女の問いが言葉になるよりも先に地を踏みしめる音が一つ、クリスティーナの背後で鳴った。

「来たね」

 音の鳴る方へと先に振り向いたノアの視線を辿るように、クリスティーナもまた振り返る。

 彼女の後ろに立っていたのは薄汚れたローブに身を包んだ人影。
 それは四人の姿を捉えると被っていたフードを雑に振り解いた。
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